すべての球団は消耗品である「#14 1979年の広岡ヤクルト編」byプロ野球死亡遊戯
勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。ファンは、そして僕たちはいい時も悪いときもそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。
「まぁそうムキになって質問されても困るんですけどね。興奮しないで、抑えて、抑えて」
あの頃、江川卓は、日本最大級の悪役だった。1978年から79年にかけて、球界は「空白の1日」騒動で揺れていたのだ。「抑えて、抑えて。まあ、ボクの話も聞いてください」なんて親方をなだめている内に自身が興奮して「なんだ、バカ野郎!」と部屋を飛び出した元横綱・双羽黒こと北尾光司……とは違い、江川は憎らしいほど冷静だった。
78年ドラフト会議前日に巨人が、江川と選手契約を結んだと一方的に発表するなり球界は大混乱に陥った。当初は江川すらも大人たちの駆け引きに巻き込まれた被害者という雰囲気だったが、その物怖じしない太々しい言動と、巨人のエース小林繁がキャプイン前日に江川と交換で阪神へ移籍する衝撃の結末で、怪物投手は稀代のヒールとして憎まれることとなる。当時、前代未聞のお騒がせヤングマン江川とどう向き合うべきか、というのは球界関係者に突き付けられた踏み絵だった。
巨人の長嶋茂雄監督は、「6月1日からの阪神3連戦(後楽園)には江川君を投げさせ、小林君と対戦させます」なんてぶち上げ、「週刊ベースボール誌上で2人の対談をしませんか」とアントニオ猪木ばりにスキャンダルを興行に結びつけない奴は経営者として失格的なショーマンぶりを発揮。対照的に、「江川? あんなのアマチュアに毛が生えたようなもの。そんな投手にプロの一軍の打者が抑えられて負けたらプロの恥、即プロを解散したほうがいい」と挑発的な発言を残したのが当時ヤクルトスワローズ監督の広岡達朗である。
そう、90歳を超えた今も週刊ベースボールで連載を持ち、「巨人は原辰徳監督が若手好きで、新人に毛の生えたような投手を使いたがる。あれで勝とうというのはナンセンスだ」とか「まさに“欲張り野球”。(原監督は)もういい加減、辞めるべきだ」なんて令和も変わらず古巣巨人に対してブチギレ続けている球界の白髪鬼だ。
広岡は76年途中にヤクルト監督に就任すると、77年には球団初の2位と躍進。そして、巨人コンプレックスを解消しようとライバルと同じく海外へ飛び、ユマキャンプを敢行して臨んだ78年には、チーム創立29年目で初の日本一へと導いた。万年Bクラスのズンドコチームを率いて、禁酒・禁煙・禁麻雀を打ち出し、選手の食事にまで気を配るロジカルでクールな青年指揮官。厳しさの一方で優勝すると、「わたしの采配がよかったからではない。選手が自分の力を確認し、努力したからだ」と部下たちを褒めてみせた。
海軍の技術将校だった父を持ち、自著のタイトルはど真ん中の『私の海軍式野球』。『週刊ポスト』で「今の選手は植木や。誰かに水をまいて貰い、温室のなかで見てくれの良さだけを楽しむ植木の野球や。ワシは雑草の力強さと生命力が好きや。ボロボロになって、お前もういらんからやめえ言われるまで、口が裂けてもワシの口から、やめるいう言葉は出さん!」なんて若者達に吠えながらも自分はフグの食いすぎで痛風に悩まされる元近鉄のビッグワンこと鈴木啓示のド根性野球とは一線を画す、ビジネスライクな“管理野球”。
その目新しさは世のおじさんたちやサラリーマン受けもよく、『サンデー毎日』の「79′ 日本の実力者たち」特集では、“46歳の元海軍軍人の末っ子らしい指揮官スピリット”と謎の絶賛をされている。
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中溝康隆=なかみぞ やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!
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