2023-08-04 20:10

田村潔司「解析UWF」第11回…Uの復権を信じ進む若き戦士たちの覚悟

2000年5月1日東京ドーム、『PRIDE GP 2000世界最強決定トーナメント決勝戦』での桜庭和志vsホイス・グレイシー
2000年5月1日東京ドーム、『PRIDE GP 2000世界最強決定トーナメント決勝戦』での桜庭和志vsホイス・グレイシー
写真提供=平工幸雄
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1990年代、グレイシー一族の台頭により崖っぷちに追い込まれたUインター。そんな状況で、田村を含めUの復権を信じ進む若き戦士たちの覚悟は並ならぬものがあった。ヘンゾ戦で田村が『UWFのテーマ』で入場したことは、そんな一時代の象徴だろう。リング内外で繰り広げた熱き戦いは、格闘家が紡ぐ言葉として今なお語り継がれるのだ。

先日、ダウンタウンの松本人志さんらがMCを務めるテレビ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)で、キックボクサーの立嶋篤史選手が特集された。

立嶋選手は1990年代に、その鬼気迫るような闘いぶりと独特のオーラでカリスマ的な人気を誇ったキックボクサー。51歳になったいまも過酷な減量をしながら現役選手として闘い続け、今年の4月16日の試合でキックボクシング100戦目を迎えた大ベテランでもある。

立嶋選手はMCの松本人志さんと旧知の間柄とはいえ、月曜夜9時というプライムタイムの人気番組で1時間特集されるというのは、あらためてすごいと思うし、立嶋選手の生きざまはそれだけ今も人を惹きつけるものがあるのだと思う。

ボクも若い頃から立嶋選手とは親しい間柄で、一緒に食事をして格闘技の話やくだらない馬鹿話をしたり、お互いの試合を観に行ったり、立嶋選手にセコンドについてもらったこともある。

彼と出会ったのはUWFインターナショナル(Uインター)の初期だから、ボクが21歳くらいの時。当時、Uインターはスタンディングバウトという名称でキックボクシングマッチを行っており、そのセコンドやキック関係者として来ていたのが立嶋選手だった。最初に会ったのは1991年だったと思うから、立嶋選手がブレイクしてキックボクシング界の顔として大活躍するちょっと前くらい。その頃、立嶋選手はUインターの試合会場だけでなく年末の忘年会や慰安旅行的なものにも来ていて、年齢が近いこともあって、そこからよく話をするようになったのだ。

そして立嶋選手の試合を実際に観に行ったり、間近で接するようになってから、彼のキックボクシングに対するストイックであまりにも真っ直ぐな姿勢に当時ボクはすごく影響を受けた。

若い頃の立嶋選手は、とにかく言ってみればバカ真面目でクソ真面目。格闘技は結果がすべてだから、その結果を得るために努力するのはあたりまえだけれど、勝つために何をやらなきゃいけないかを考えて、その“やるべきこと”をすべてにおいて最優先していた。周りから見たらストイックすぎるし、融通が効かなすぎるように見えただろう。でも、ひとつのことを極めるために、自分でぶれない芯を持って夢中で練習する姿勢は素晴らしいと思うし、キックボクシングとUWFのプロレスリングという競技こそ違えど、ボクには共感する部分が多々あった。

ボクは「赤いパンツの頑固者」なんていう呼び名で呼ばれたりするように、自分が考える格闘技に対するこだわりが強い方だと思っているけど、立嶋選手の頑固さにはとても敵わない。プロのキックボクサーだから人気商売でありながら、インタビューを受けても無愛想だし、取材者に迎合するようなこともない。そうすると、勝っているときは持ち上げられても、負けた時はボロクソに書かれ、ゴミのように捨てられるリスクがある。それでも立嶋選手はまったく自分の考え方を譲らなかった。

おそらく彼の中でも葛藤はあったと思う。インタビュアーやカメラマンにいい顔することもできただろうし、そうすればメディアを味方につけることができる。でも、そういった考えをグッと押さえて、キックボクシングの世界でトップを目指すことだけを優先して周りをシャットアウトし、信念を貫くことで己を磨いていたんじゃないかと思う。

痩せ我慢や無理もしていただろうけど、そうして溜め込んだものをすべてリングにぶつけていた。だからこそ立嶋選手の試合は、勝っても負けても惹きつけられた。

取材・文=堀江ガンツ

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田村潔司=たむら・きよし|1969年12月17日生まれ、岡山県出身。1988年に第2次UWFに入団。翌年の鈴木実(現・みのる)戦でデビュー。その後UWFインターナショナルに移籍し、95年にはK-1のリングに上がり、パトリック・スミスと対戦。96年にはリングスに移籍し、02年にはPRIDEに参戦するなど、総合格闘技で活躍した「孤高の天才」。現在は新団体GLEATのエクゼクティブディレクターを務めている。

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