西武ライオンズの清原和博を知ってるか?【第3回】

PL学園の主砲として甲子園を沸かせた清原和博。1985年の運命のドラフトによって盟友桑田真澄は巨人に入団、憧れのチームに裏切られ忸怩たる思いを抱えながらも、18歳の清原は西武ライオンズ入りを決断。彼はここで野球キャリアの中でも最も華々しい活躍をすることになる。そんな彼がひとりの野球人として輝いていた西武ライオンズ時代約10年間を描いた『キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー』(7月21日発売/白夜書房)よりお届けする。

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1985年①
甲子園を沸かせたヒーローの希望進路

初恋のあの美少女を、数十年ぶりにSNSで見かけたらドカベン香川みたいなおばさんになっていた。

あれっ? そんなはずはない。焦って実家の卒業アルバムをめくったら、俺も彼女も地方都市の垢抜けないガキだった。過去とは美化された嘘である。誰にでも似たような経験はあるだろう。時間の経過とともに記憶の中で過去はねつ造され、自分の都合のいい思い出にすり替わっちまう。いつの間にか、実際とは違う歴史が事実として語り継がれることだってある。そう、あのKKドラフトのように、だ。

おニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」とファミコンソフト『スーパーマリオブラザーズ』に俺含む日本のキッズたちが夢中になっていた1985(昭和60)年11月20日、プロ野球ドラフト会議が行われた。注目はもちろん夏の甲子園を制覇したPL学園の“KKコンビ”、清原和博と桑田真澄だ。子どもの頃から死にたいくらいに憧れた巨人入りを熱望する清原、すでに早稲田大学進学を表明していた桑田。当時の巨人・王貞治監督が持つ868号の世界記録を破るのは、甲子園歴代最多の13本塁打を放ったキヨマーしかいない。マスコミやファンはそう盛り上がった。果たして「巨人・清原」は誕生するのか? だが、蓋を開けてみたら憧れのチームは、なんと進学表明の桑田を単独1位指名する。6球団が1位入札した清原は、最終的に西武が交渉権を獲得。翼の折れたエンジェル。巨人と親友に裏切られた18歳のキヨマーは、会見場で悔し涙を滲ませた。

この流れは当時社会的事件として扱われたので、野球ファン以外にも知ってる人は多いと思う。雑誌『現代』85年12月号のグラビアを飾るのは、のちに昭和最後の総理大臣となる竹下登、幹事長の椅子を狙う安倍晋太郎外務大臣(安倍晋三の父親)、そして「絶頂期の王貞治の風格がある」と紹介される清原和博だ。代名詞は史上最高の契約金と予想される「一億円の少年」。ちなみにこの年の12月に「仮面舞踏会」でレコードデビューしたのが、少年隊である。

さて、それぞれのシャイな言い訳も聞こう。2013年発売の『西武と巨人のドラフト10年戦争』(宝島社)の中では、当時の西武球団代表を務めた坂井保之氏の証言が掲載されている。獅子の寝業師・根本陸夫管理部長がドラフト直前に「西武は1位桑田でいく」と記者にブラフを流して、1位は清原、2位もしくはドラフト外で桑田というKKコンビ両獲りを狙う巨人サイドを揺さぶる。あんたらドラフト外なんかで獲れると思うなよ的な西武の牽制は効いた。結果、巨人は間違いなく複数球団の抽選になる清原ではなく、早大進学説のため競合せず、甲子園通算20勝で限りなく即戦力に近い桑田を確実に獲りにいくわけだ。まあどちらにせよ、大人たちの駆け引きの中で裏切られ傷ついた純粋なキヨマーという印象は変わらない。

だが、あのドラフトから40年近くが経過した令和の夏、1985年当時の週刊誌やスポーツ新聞を片っ端から確認して驚いた。語り継がれているストーリーと事実があまりにも違っていたからである。もはや斉藤由貴とビッグバン・ベイダーの体重くらい違う。1億円のスーパーヒーロー清原和博が告白『ボク、巨人が大好きや』(『週刊現代』85年9月21日号)では、「ボク、実は巨人ファンなんです。なぜかは、ようわからんけど、とにかく大好きなんやね」と憧れを隠さない一方で、インタビュアーに巨人に入りたいか聞かれると「たしかにファンだけど、仕事とファンであることは別問題じゃないスか、やっぱり」なんてクレバーに返す。そして、ライバルであり盟友を「(厳しい練習にも)桑田だけは絶対にへこたれん。3年間で一度もないんです。だから、桑田をものすごく尊敬している。あいつは日本一のピッチャーやね」と絶賛、さらに幼少期にトンボでも蚊でも目の前を飛んでいる虫をパッと素手でつかめる驚異的な動体視力エピソードをご機嫌に披露している。

これだけ読むと、巨人ファンであるものの他球団もOKというスタンスだ。しかも、セ・リーグ某球団スカウトの「清原が巨人ファン? そういうことは全然気にしていない。高校生の90パーセント以上が巨人ファンですから(笑)」という呑気なコメントが続き、キヨマー特有の豪快さと大らかさもあり、まさかドラフトで涙を流すような雰囲気は微塵もない。行きたいのは巨人、それがダメなら巨人と対戦できる同じセ・リーグ球団。家族もいる地元・岸和田に近い阪神ならなおよし。はっきりと公言はしないものの人気のないパ・リーグはできれば避けたい……これは別に清原だけではなく、当時はアマチュア選手のほとんどが似たようなスタンスだった。

…つづく

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