田村潔司、孤高の天才が語るヤマヨシとの宿命
新生Uの過酷な練習
――そもそもの話で言うと、山本さんはリングスに入る前に新生UWFの新弟子(練習生)で、田村さんの後輩だったんですよね?
田村潔司 そうそう。新生Uは入門しても辞めちゃった新弟子はたくさんいるんだけど、ヤマヨシのことはすごくよく憶えてるよ。
――田村さんは第1回入門テスト合格者ですけど、山本さんは第3回ですか?
田村潔司 いや、どうだったろう? 第3回は確かカッキー(垣原賢人)と冨宅(飛駈)だったような気がするんだけど。
――そうでしたね。第2回は誰もデビューできなくて。
田村潔司 そうだね。第2回が海老名(保)と堀口(和郎)で、第3回がカッキーと冨宅だから、山本は第4回か5回なんじゃないかな。
――当時の印象はどうでした?
田村潔司 最初は「柔道をやってた体の大きい奴」っていうくらいかな。新弟子が5人くらい入ってきて、辞めちゃう子は記憶にないんだけど、山本はなんか記憶に残ってた。練習も頑張ってたからね。結局、練習中に大怪我して辞めるかたちになったんだけど。怪我がなかったら残っていたと思う。
――練習中にアゴを折られちゃったんですよね。
田村潔司 アゴだね。俺、その瞬間を見てるのよ。先輩に平手で殴られて、息が上がってて口が開いてたからか折れちゃった。事故といえば事故だけど、殴る蹴るは当たり前っていう時代だからね。
――今では絶対に考えられない世界ですよね。道場の中は娑婆ではなかったという。
田村潔司 それで大怪我しようが何しようが、退院したら、完治してなくても痛くても同じ練習をやらなきゃいけない。「できないんだったらもう帰れ」「やるんだったらリングに入れ」ってその二択しかないから。ケガで現実的に練習ができないから辞めるという選択をするしかない。根性あってやる気があっても辞めざるをえない。山本もその一人だから。