スタン・ハンセン「『ラリアット』がプロレス技として辞書に載ったりしたら、こんなに光栄なことはないね」
――ウエスタン・ラリアットという名称にしたのは大正解でしたね。日本で「洗濯紐」じゃ、全然力強いイメージじゃないので(笑)。ハンセンさんがラリアットにいくとき、左腕のサポーターをズラすアクションをしますけど、あれを始めたきっかけはなんだったんですか?
ハンセン ラリアットを使い始めた当初は、1試合で何発も出すことがあったんだけど、途中から一撃必殺のフィニッシュにするため、1 試合に一度、相手を仕留めるときだけ使うように変えたんだ。あのサポーターはフットボール時代に付けていたものと同じなんだけど、そこから観客に対して「さあ、これが決まったら終わりだぞ」と予告アピールをするために、やるようになったんだよ。
――あれは素晴らしいアクションですね。ハンセンさんがサポーターをズラすたび、毎回「うわ~、ラリアットがくるぞ!」って、ハラハラしましたもん。
ハンセン あれが決まれば終わり。でも、避けられたら相手にもチャンスが生まれるということで、試合の重要な場面を知らせる意味でも必要だったんだ。
――ラリアットの使い手はそれこそ何百人もいるのに、やっぱりハンセンさんのウエスタン・ラリアットは特別に見えるんですけど、自分にしかないコツみたいなものはあるんですか?
ハンセン 他の選手がどうやっているかは分からないけど、自分は腕を相手の喉にぶつけるというより、体重を乗せて、身体ごと当たっていくようにしているね。
――要はタックルと同じようにぶつかっていくと。
ハンセン 例えば、ボクシングのパンチだって、腕だけの力で殴るのと、踏み込んでウェイトを乗せて殴るのとでは破壊力が全然違ってくるだろう? それに近いものがあるんじゃないかな。
――体重135キロのハンセンさんが、全体重を乗せてぶつかっていくからこそ、ウエスタン・ラリアットは特別なわけですね。ちなみに、ハンセンさんが認めるラリアットの使い手って誰かいますか?
ハンセン まあ、私が認めるとかどうとかは言えないけど(苦笑)。コバシ(小橋建太)やチョーシュー(長州力)は、ファンにインパクトを与えているんじゃないかな。ただ、これはラリアットがどうとかではなくて、レスラーにとって大事なのは、ファンにインパクトを与える、自分の代名詞となるようなフィニッシュホールドを持つということなんだ。例えば、ファンクスだったらスピニング・トーホールド、マードックならブレーンバスター、ジャンボならバックドロップというような感じでね。技を開発して、それを使いすぎないように大事にしながら、最高のタイミングでそれを繰り出す。どんな技を使うかよりも、そこが大事なんだよ。