神取忍×玉袋筋太郎「極強」ヒールの流儀

書籍『玉袋筋太郎の極悪全女列伝』の発売を記念して、玉袋筋太郎と神取忍の対談を開催。還暦を迎えてなお、勢いのままに活躍を続ける神取が『極悪女王』のその後を振り返り、血気とスリルに包まれた一時代の熱狂を語りました。
極悪に次ぐ極悪
――今回は、玉さんの著書『玉袋筋太郎の全女極悪列伝』発売と、『神取忍還暦祭』(東京ドームシティホール)の開催を記念して、お二人の対談を組ませていただきました。
玉袋筋太郎 いや~、神取さんが還暦ですか。
神取忍 そう、もうすぐ還暦ですよ。早いね。
玉袋筋太郎 僕は今、57歳なんですけど、還暦を迎える心境ってどんなもんですか?
神取忍 なんか、周りに言われて「あっ、還暦なんだ」って気づくって感じ。自分としては弱ってないし、ずっとそのままの状態で還暦まで来ちゃった感じだから(笑)。
玉袋筋太郎 たしかに、見た目からして変わらないもんな~。
神取忍 体も頑丈なのよ。これまでいろいろケガもあったけど、致命的なケガがないから。これは親に感謝だね。
玉袋筋太郎 それで『還暦祭』では、赤いちゃんちゃんこならぬ、赤い柔道着を着ちゃったりするんですかね?(笑) もう柔道は別にいいのか。
神取忍 みんな柔道のイメージがあるのかもしれないけど、柔道は中3から始めて21歳までだから、6年しかやってないのよ。
玉袋筋太郎 ええっ!? たった6年? それで全日本体重別選手権3連覇、世界選手権3位まで行ったんだ。
神取忍 行けちゃったんだよね。大学にも実業団にも入らず、練習は町道場だったんだけど。
玉袋筋太郎 天才だよ。柔道は6年で、プロレスはもう何年?
神取忍 1986年デビューだから、何年だろう?
玉袋筋太郎 えっと、38年か。すげえ!
――そして最初のLLPWを立ち上げてから、もう32年ですよね。
玉袋筋太郎 32年もずっと団体背負ってるわけですか。偉いな~。
神取忍 偉いでしょ? けっこう真面目なんだよ、私(笑)。
玉袋筋太郎 神取さんがやってきた38年の間、女子プロレス業界の浮き沈みもいろいろあったと思いますけど。最近、Netflixの『極悪女王』がきっかけで、また世間的に女子プロレスが注目されてるじゃないですか。神取さんはあのドラマはご覧になったんですか?
神取忍 観たんだけど、ちょっと自分とは時代と団体が違うから、「ふーん」みたいな。
玉袋筋太郎 でも、『極悪女王』の最後のほうで、神取さんのことも出てきたじゃないですか。
神取忍 実際の登場人物としては出てこないんだけど、雑誌とか新聞の記事で「ヤバい奴が出てきた」みたいな感じのシーンでね(笑)。
玉袋筋太郎 あれが良かったんだよな。あの作品は、ダンプ(松本)さんとクラッシュ(・ギャルズ)の青春物語なんだけど、彼女たちが大スターになってハッピーエンドじゃなくて。別のところから神取忍っていうのが出てくるところに、俺らプロレスファンは深みを感じるんですよ。あそこで神取さんを扱わなかったら、そこまで深みは出なかったと思う。
神取忍 嬉しいこと言ってくれますね。
玉袋筋太郎 いや、本当ですよ。また『極悪女王』はジャッキー(佐藤)さんの人生っていうのも良くて。ダンプさんもクラッシュもみんな憧れてたジャッキーさんが、クラッシュ人気全盛期に新団体ジャパン女子プロレスで復帰したと思ったら、柔道から来た神取忍にやられてしまうという衝撃ね。そこで長与千種さんが神取さんと闘おうとしたり。
神取忍 「引き抜きか」なんて騒がれてね(笑)。
玉袋筋太郎 あん時の神取vsジャッキーっていうのは、『あしたのジョー』で言うと、矢吹丈をあれだけ苦しめたカーロス・リベラが、アメリカに戻ったらホセ・メンドーサにKOされて再起不能にさせられたような、それぐらいの衝撃があったからさ。
――新たな強大な敵が別の世界で現れた感じですよね。
玉袋筋太郎 そう。全女という世界がすべてだと思っていたら、その外にはもっとヤバい奴がいたっていうね。そこにプロレスの奥深さが出たよ。
神取忍 たぶん、団体がふたつになったことで、プロレスの世界が広がったんだろうね。
玉袋筋太郎 神取さんの場合は、女子プロレスに憧れて入ってきたんじゃないわけでしょ?
神取忍 そうじゃなかったね。だから良かったんだと思う。
玉袋筋太郎 最初から異質だったもん。
――デビュー前から「ダンプは片手で10秒で倒せる」とか言ってましたもんね(笑)。
神取忍 それでいきなりヒール扱いだから(笑)。
玉袋筋太郎 “極悪女王”より、もっと悪いヒールじゃねえかって(笑)。でも、ドラマの中でも「本物が出てきた」っていう雰囲気が出てたよね。それまではベビーフェイスに対するヒールだったのが、全女全体を敵に回す外敵が現れたっていうかさ。
――そんな神取さんが、結局いちばん長く女子プロレスをやってるっていうのも不思議ですよね(笑)。
玉袋筋太郎 そうなんだよ。誰よりも女子プロレスが好きだったんじゃねえかって(笑)。
神取忍 本当はそうなのよ(笑)。
玉袋筋太郎 武藤敬司も引退したことだし、「プロレスLOVE」を名乗ったほうがいい(笑)。
文・構成=堀江ガンツ
神取忍プロフィール
神取忍=かんどり しのぶ|1964年11月3日、神奈川県生まれ。15歳で柔道を始め、全日本選手権3連覇、世界選手権3位などの実績を持つ。1986年にジャパン女子プロレスに入団し、同年8月17日、ジャッキー佐藤戦でデビュー。その後フリーを経て、風間ルミらとともにLLPWを設立。現在もプロレスラーとして活躍し、LLPW-Xの代表取締役も務めている。
玉袋筋太郎プロフィール
玉袋筋太郎=たまぶくろ すじたろう|1967年6月22日、東京都生まれ。高校卒業後、ビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と「浅草キッド」を結成。テレビ、ラジオなどのメディアや著書の執筆など幅広く活躍中。スナックをこよなく愛し、社団法人全日本スナック連盟会長も務める。

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