藤原喜明×鈴木みのる対談…猪木のために死ねなくなった漢たちの鎮魂歌

藤原喜明と鈴木みのる

アントニオ猪木をはじめ数多くのレジェンドが登場し、闘魂を語り継ぐインタビュー集『玉袋筋太郎の闘魂伝承座談会』の発売を記念し、藤原喜明と鈴木みのるにインタビューを実施。名だたる師匠たちとの思い出とから現代のプロレス観まで、思いのままに語り尽くした師弟対談をお届け。

師匠のために

鈴木みのる お久しぶりです、藤原さん。お土産に“スポーツドリンク”持ってきました(と言ってワインをわたす)。

藤原喜明 おー、ありがとう。これでまた練習に身が入るな(笑)。

鈴木みのる (カール・)ゴッチさんもよくワイン飲んでましたもんね。

藤原喜明 飲んでたな。また話が長くてな。レスリングの話と練習方法の話ばっかり。

鈴木みのる ボクは今、海外で試合をすることが多いんですけど、「おまえはカール・ゴッチに習ったことがあるのか?」って言われることが多いですよ。昔は、日本ではゴッチさんは“プロレスの神様”だったけど、アメリカではそんなに名前が出なかったじゃないですか。でも、いまはアメリカのプロレス界でも伝説の人になってるんで。

藤原喜明 やっと時代が追いついたか。

鈴木みのる で、藤原さんもそういう存在になってるんですよ。「おまえ、本当にフジワラと練習したのか? フジワラは生きてんのか?」って言われますよ(笑)。

藤原喜明 勝手に殺すんじゃねえよ!(笑)。

――先日、藤原さんは『猪木のためなら死ねる!』(宝島社)っていう本を出しましたよね。

鈴木みのる 本当に死ねるんですか?

藤原喜明 いや、「死ねると思ってたけど死ねなくなった」ってことを書いてるんだよ。俺は20代までは「この人を守るために俺が盾になる」って気持ちで、猪木さんの鞄持ち(付き人)をやってたんだけど、30歳ぐらいの時、猪木さんに言ったんだ。「すいません。もう猪木さんのために死ねなくなりました」ってね。そしたらニヤ~っと笑って「コレ(小指)か?」言ってな。

鈴木みのる すぐわかったんだ(笑)。

藤原喜明 あの人もコレ関係ではいろいろあったから、なんかわかるんだろうな(笑)。

――それも含めて師弟愛ですね。で、今回は猪木-藤原の師弟関係を受けて、藤原-鈴木の師弟対談として行わせていただきたいんですけど。

藤原喜明 コイツが俺の師匠かい?

――逆ですよ!(笑)。猪木-藤原-鈴木という系譜で。

鈴木みのる 猪木さんが聞いたら、「鈴木? そんなヤツ知らねえ」って言われるかもしれないけど(笑)。

強さへの反感

――鈴木さんはもともと猪木さんに憧れて新日本に入りしたわけですけど、入門前は藤原さんのことをどう思ってたんですか?

鈴木みのる もともと俺は中学3年から、横浜のスカイジムってところで練習させてもらってたんだけど、藤原さんも新日本に入る前にそこにいたっていうことをジムの金子(武雄)会長から聞かされてたんで。

――新日本入門前からスカイジムの大先輩っていう認識だったんですね。

鈴木みのる だから新日本に入って、最初に藤原さんに挨拶したとき、「おまえかぁ。会長が言ってたのは」みたいに言われたから。

藤原喜明 金子会長から「ウチから鈴木ってヤツが行くからよ、面倒見てやってくれ」って言われてさ、「うわ、面倒くせぇな」と思ったんだ。

鈴木みのる ハハハハ! やっぱ「面倒くせぇな」と思ってたんだ。新弟子の頃、藤原さんに「こんなちんちくりん」ってよく言われたけど(笑)。

藤原喜明 それはしょうがねぇだろ。あの頃の新日本で、鈴木より小さいのなんて(獣神サンダー・)ライガーくらいしかいなかったんじゃねえか?

鈴木みのる それが今のプロレス界だと、俺が中の上くらいの大きさなんですけど(笑)。

藤原喜明 今は全体的に小さくなったからな。昔はレスラーといえば怪物だったもんな。

鈴木みのる 周りの先輩から「おまえなんかデビューできない」って毎日言われましたよ。ある時、藤原さんとスパーリングをやらせてもらえるようになってから、坂口(征二)さんに「おまえ、ちっちゃいから飛び技の練習しろ」って言われて。プランチャの練習をさせられたんです。

――格闘技志向なのに無理やりルチャの練習を。

鈴木みのる 言われたから仕方なく練習したけど、すぐ嫌になって、「すみません。僕もうできません。強くなるための練習がしたいです」って言ったら怒られて、スクワット500回やらされました(笑)。

藤原喜明 飛ぶ練習なんて、強くなることとなんの関係もないからな。でも、今のヤツなんてそんな練習ばかりだろ。入場するときにロープを飛び越える練習やって、足首を痛めたヤツまでいたからな。LEONAだよ。

鈴木みのる ハハハハハハ!(笑)。

――ドラゴンリングイン失敗ですね(笑)。

藤原喜明 お父さんとはだいぶ違うよな。

鈴木みのる 昭和新日流の練習が受け継がれなかった(笑)。

藤原喜明 そんなの練習でもなんでもねぇよ。くだらねぇ。

――鈴木さんが新日本の若手時代、藤原さんはUWFで「敵」なわけじゃないですか。でも、稽古つけてもらうのは大丈夫だったんですか?

鈴木みのる もともと先輩の船木(誠勝)さんが藤原さんに練習つけてもらってたんで、俺もそこに入りたいなとずっと思ってたから、ある時、「僕も一緒にやらせてもらえないですか?」って船木さんに言ったら、「俺に言うなよ、藤原さんに言えよ」って言われて。で、藤原さんに「練習お願いします!」って言ったら、「来い!」って言われて、めちゃくちゃ極められた憶えがあります。

――でも、船木さんやライガーさん以外の先輩からは、よく思われなかったんじゃないですか?

鈴木みのる いろんな人に言われましたよ。「藤原に付いても良いことなんかないぞ」って。「プロレス教わるなら長州にしろ」とか「藤波(辰爾)の方がいいぞ」とか、散々言われましたね。

――関節技なんか身に付けてもしょうがないぞ、と。

鈴木みのる でも、なんでそう言ってくるか、だんだんわかってきましたね。要はビビって煙たいんですよ。先輩が偉そうにしようとしてるのに、強さを身に付けて歯向かう後輩が増えたら困るっていう(笑)。

――でも、若手の頃「藤原んとこなんか行っても良いことねぇぞ」って言われてた人が、今や世界各国で活躍しているわけですもんね。

藤原喜明 だから基本さえしっかりしてりゃ、どこでも食っていけるってことだよ。

藤原喜明プロフィール

藤原喜明=ふじわら よしあき|1949年4月27日生まれ、岩手県出身。1972年に新日本プロレスに入門、藤波辰巳戦でデビュー。カール・ゴッチ氏に師事してレスリング技術を学ぶ。1984にUWFに移籍。新日本復帰、第二次UWF参加を経て、1991年3月プロフェッショナルレスリング藤原組を旗揚げ。その実力ぶりから「関節技の鬼」として知られる。現在は俳優業やイラストレーターとしても活動。

鈴木みのるプロフィール

鈴木みのる=すずき みのる|1968年6月17日生まれ、神奈川県出身。1987
年に新日本プロレスに入門、飯塚孝之戦でデビュー。新生UWF、プロフェッショナルレスリング藤原組を経て、93年9月に船木誠勝らとパンクラスを旗揚げ。2003年からは新日本のリングに参戦、その後も様々な団体の試合に参加し、現在に至るまでプロレスラーとして奮闘し続けている。

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