石破茂氏『異論正論』理解して、説明する、その努力だけはしていかなきゃいけない
ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第46回は、『異論正論』の著者である政治家・石破茂氏が登場。政界きっての政策通が語る、積極的に取材に応じる理由、ライバル・安倍晋三との政策の相違、保守の本質――。問題を先送りにする日本人よ。極論にとらわれることなく、異論、正論に耳を傾けよ。
そんなことまでやる
――BUBKAに登場していただけるとは……。実は、以前にも某女性誌で家電特集を組んだ際、ダメ元で石破さんにオファーしたところOKをいただいたことがありました。最新の掃除機とともに笑顔で写真に収まる石破さんの姿が印象的だったのですが、なぜ政治とは距離がありそうなオファーを受け入れるのでしょうか?
石破茂 私が言っていることって、結構ややこしいことが多いんですよね。憲法改正のあるべき姿、防衛予算は2%という数字を目標にするのはナンセンスである――とかね。なんじゃそりゃみたいな話なわけで、ただでさえ政治家の話というのは、あまり聞く耳を持っていただけない。ですが、人というのは、「あいつなんだかアイドル好きらしい」とか、「鉄道オタクの中でも乗り鉄で呑み鉄らしい」、あるいは「プラモデルが好きみたいよ」、「実はクラシック音楽にも造詣が深い」など、いろんな嗜好、好みを持っているわけですよね。アイドルが好きな人なら、きっとこの雑誌(BUBKA)を読むのでしょう。みんながみんなそうではないだろうけど、共通する好きなものがある者同士というのは、なんとなくシンパシーを感じる確率が高い。そうすると、なんだか難しいことを言っていても、「あいつの言うことは聞いてみてもいいかもね」という“聞く耳”を持ってもらいやすくなる。さまざまな出演オファーや取材依頼がありますが、断ることでその可能性を狭めてしまうのは、もったいないと思っているんですね。
――とは言え、YouTubeの企画にも積極的に出演されるなど、そのレンジの広さに驚かされます。秘書の皆さんから止められるということはないのでしょうか?
石破茂 「そこまでやります?」と言われることはときどきありますね。この取材の後に、『プライムニュース』(BSフジ)に出演し、日台関係についてお話をするのですが、「また話をする機会はあるのだから台湾から戻ってきた早々に出演しなくてもいいのではないか」などスタッフはスタッフでいろいろと考えている。でも、できるだけ受けようと思ってるんです。例えば、ラーメン文化振興議員連盟の会長も務めているので、ラーメンに関する取材もたくさんいただく。地元・鳥取県で行われた『円形劇場くらよしフィギュアミュージアム』の完成式典に出席した際、(『ドラゴンボール』に登場する)魔人ブウのコスプレをさせられてイベントに参加したので、フィギュア系というのかなんというのか、以後、そういった取材も来るようになった(笑)。それぞれの好みがつながっていくことで、「なんかあいつは私と接点があるかも」――、そういう可能性は大事にしたいんですよね。
――打席に立つからこそ可能性が生まれると。
石破茂 意外と反応があったのが、猫。一時期よく取材を受けましたね。都市伝説でも何でもないんですけど、私がテレビに出ると猫が異様に反応するらしい。私の声が聞こえると、猫が興奮して画面に近づき、過剰に反応するという現象が、あちらこちらで見られた――。
――同時多発ネコ……。
石破茂 それで、テレビ局が暇を持て余したのか、これは一体何なんだということで検証番組を作った。声紋の専門家が分析したところ、「声質や話すスピードが、猫にジャストフィットしておるらしい」とわかった(笑)。その影響もあって、一時期は猫の雑誌に呼ばれましたね。
――猫の雑誌に登場するとなると……政治はもちろん、難しい話がしづらいと思うのですが、そこは割り切っているものなのでしょうか?
石破茂 猫のときは猫の話だけ。ラーメンのときはラーメンの話だけ。ですが、たとえばラーメンでいえば、日本には全国に1718市町村がある。ラーメン屋が1軒もない市町村というのは、実に珍しい。むしろ、和歌山ラーメン、喜多方ラーメンという具合にご当地ラーメンなるものが存在し、町の味、店の味が根付いている。地産地消とか、地域の食材を使って個性を出そうという試みも多い。よくあちこちで言うんだけど、ラーメンを作る際の材料の自給率って13%なんですね。小麦は全部輸入、お醤油を作る大豆もほとんど輸入、豚肉は国産だけど、飼料は外国産です。結局、国産はネギともやしだけになる。ところが、天ぷらそばになると20%に上がる。
――そば粉は国産が多い?
石破茂 そう。そして、カレーライスになるとお米が国産なので40%まで上がるんです。こういう話をしていると、難しい話を敬遠していた人の中から、「ほうほう自給率とはそういうことか」と興味を抱いてくれる人が出てくる。それを入り口に、次は、「自給率と自給力は何が違うか」といった話を聞いてもらえるように訴えかけていく。最初からそのまま政治論を語るより、聞いてもらいやすいんですよね。
――映画『シン・ゴジラ』の感想も、国防に造詣の深い石破さんならではの見解で、とても興味深かったです(笑)。
石破茂 ゴジラの襲来に対してなぜ自衛隊に防衛出動が下令されるのか、どうにも理解が出来ませんでした――というものですね。いくらゴジラが圧倒的な破壊力を有していても、あくまで天変地異的な現象なわけです。防衛出動は「国または国に準ずる組織による我が国に対する急迫不正の武力攻撃」に対応するためのものですから、害獣駆除として災害派遣で対処するのが法的には妥当なはず。「災害派遣では武器の使用しか出来ない」というのが映画における主な反論の論拠のようでしたが、武器の使用だから破壊力が劣る、というわけではないんです。それも不満なら「警察力をもってしては対応困難な場合」に適用される「治安出動」という手もあります。
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