本橋信宏×鈴木エイト、僕“たち”とジャニーズ…35年の時を超えた「サブカルの逆襲」
連日メディアでの報道が後を絶たない「ジャニーズ問題」。その問題の原点には、35年前のベストセラー『光GENJIへ』のゴーストライターであることを明らかにした本橋信宏氏の存在があった。今回は、9月7日の記者会見にも出席したジャーナリスト・鈴木エイト氏を迎え、長らくタブーとされてきた一連の真実に関する考えを語ってもらった。
外圧に負けた
――この度、本橋さんは著書『僕とジャニーズ』を出されましたが、35年前に出版された北公次さんの告発本『光GENJIへ』のゴーストライターだったと告白されていますね。
本橋信宏 ゴーストの仁義として今までしゃべらなかったし、聞かれたとしても「構成とプロデュースです」と言ってきました。今回のジャニーズ問題の口火を切ったのはイギリスのBBCテレビなんだけれど、その窓口になったのは平本淳也(元ジャニーズJr.、ジャニーズ性加害問題被 害者の会代表)なんですよ。
鈴木エイト はい。本に書かれていましたよね。
本橋信宏 ヨーロッパって児童虐待は最悪のことと考えられているんです。
鈴木エイト チャイルド・アビューズですね。
本橋信宏 そうそう。で、ジャニー喜多川が50年以上にわたって逮捕されずにいて、メディアにも大して取り上げられないのは信じられない、というのがBBCの見解でした。私もBBCに当時の状況を説明したんですけど、LGBTQの概念はあの本を出した1988年当時にはなかったから。BBCはちゃんと取材してましたよ。日本って外圧に弱い国だけど、今回もその外圧に負けた印象はありますね。1974年に田中角栄内閣が吹っ飛んだ時と似ていますよ。マスコミは角栄の金脈を知っていたけど、書かなかった。でも、月刊『文藝春秋』で立花隆さんが書いた。その記事が外国人記者クラブの席で炎上したんです。外国人記者は忖度がないから。で、日本の新聞も書かざるを得なくなった。今回の一件はその流れと重なりました。で、若いネット民は、『光GENJIへ』という本が出ていたことを今回、初めて知ることになったんです。「公ちゃん(北公次)が言いたくないことを言わされている」とかデマが流れるのを放っていくと、歴史が捻じ曲げられてしまうと思い、舞台裏を知る自分が名乗り出ることにしたんです。この話にはおまけがあって、ビデオの方は見ました?
鈴木エイト はい。衝撃でした。
本橋信宏 『光GENJIへ』の本が出た翌年に発売したビデオ版があるんです。それは私が太田春泥という名義で監督をしたんですけど、いま地上波で流されているやつですね。
鈴木エイト 被害者の会の証言と35年前のその映像の証言がつながりますよね。
本橋信宏 そう。35年前と同じことを被害者が言っていた。そのビデオを地上波のテレビや大新聞がかしこまって借りに来るわけ。これは「サブカルの逆襲」「サブカルの勝利」ですよ。だから痛快ではありますよね。素人パワーっていうのかな。北公次がしゃべってるシーンは、私の事務所で撮影したんですよ。山手線の音とか救急車の音とか、それが絶妙なSEになっている。撮影したカメラマンはターザン八木(AV監督・村西とおる率いるダイヤモンド映像の名物スタッフ)なんだけど、ズームインもないし、カット割りもしない。ただ延々と回してるだけ。でも加工しなかったことが裁判資料として完璧なんです。
鈴木エイト 編集が入っていないことで。
本橋信宏 そう。編集してないから証拠として優秀なんです。北公次はさすが元スターだけあって、カメラが回ると人が変わるんです。普通はカメラを向けて長い時間話すと、ふと視線を外すものだけど、それがない。台本もないのに、ずっとカメラ目線で話す。さすが元スターでした。公ちゃんは普段は口下手で、あんなにしゃべらないのに。
鈴木エイト あの映像は今日の問題に直結しますよね。それにしても、インパクトがすごかったです。さらに、本橋さんがその映像にも関わっているのを知って、驚きました。クリスタル映像(後のダイヤモンド映像)にはお世話になっていたので(笑)。『光GENJIへ』も、読んでいたので。当時、僕は20歳くらいでしたけど、芸能活動を微妙にやっていた時期で。
本橋信宏 バンドですよね。
鈴木エイト いや、その前です。僕はアイドル系かは微妙ですが歌とダンスをグループでやっていた時代があるんです。まあ、それは途中で辞めたんですけど、その当時、藤島ジュリー景子さんとも会ったこともあって。
本橋信宏 なんと! スクープですよ(笑)。
鈴木エイト 19、20歳なので、87年くらいですね。彼女がファッションビルの名誉館長をやっていた時期に、僕はそこで働いていて。そのビルを拠点にグループを結成する流れになったんです。そのグループはジャニーズとは関係がなかったんですが、当時の芸能界のことを元ジャニーズの人からいろいろと聞いてきました。「男性アイドルは全部潰されてきたんだよ」って。竹本孝之、沖田浩之とかですよね。当時の業界の人からそんな愚痴を聞かされました。その後、『光GENJIへ』を読んでいて、こういうことかと思っていました。
本橋信宏 エイトさんも続けていたら、被害者の会に入っていたかもしれない。
鈴木エイト 当時、ジャニーズJr.の人たちとも交流はありました。中村繁之さんはものすごく好印象でしたよ。そのビルによく遊びに来ていたんですよ。すごく気さくで、いい子でした。その話は置いといて、5年前にTOKIOの山口達也が書類送検された時、『サンデーLIVE』で東山紀之さんが「父親のような存在で信頼していた人に猥褻な行為をされたショックは計り知れない」という発言をしていて、意味深だなと思って。で、ちょうどその時、ジャニー喜多川が「私自身はすべての所属タレントの親」という発言をしていて。僕は当時のツイッターで、「東京高裁が認定したジャニー喜多川の所属タレントへの同性愛行為を彷彿とさせる意味深発言」ってつぶやいているんです。
本橋信宏 エイトさんが?
鈴木エイト そうです。僕は「同性愛行為」と書いてしまった。ここは「性加害」って書くべきですよね。それは自分の甘さだったと思います。
本橋信宏 性加害という認識と用語は今回からですよ。
鈴木エイト そういう情報を20歳から知っていた自分であっても、性加害の認識がなかったんですよね。これが犯罪だという認識に至らなかったんです。
本橋信宏 当時はみんな「同性愛」で考えが止まっていましたよね。
鈴木エイト 数年前からグルーミング罪を刑法に入れるべきだという議論がされていて、実際に制定されていますよね。
――今年7月、刑法が改正されて、「16歳未満にわいせつ目的を隠して、お金を渡したり、拒まれたのに何度も会うことを要求したりする行為」が処罰の対象になりました。
本橋信宏 もちろん遡って適用されないにしても、現在の考え方ではアウトですから。
鈴木エイト ジャニー喜多川は小学生にまで手を付けていたわけじゃないですか。
本橋信宏 そうですね。北公次はそういう小学生からも相談を受けていたんですよね。『光GENJIへ』が出たとき、北公次は売名だとか金目当てだとか言われたけど、普通の感性の持ち主なら、性加害を目撃したら、素通りはできないでしょう。だから告白したわけです。
鈴木エイト 東山さんが非難されているのも、「帰った方がいいよ」と言わなかったからですよね。
本橋信宏 公ちゃんは見て見ぬふりができなかったわけだ。それにしても、エイトさんってバンドの前はアイドルをやろうとしていたんだ。
鈴木エイト 一緒にバンドをやろうと思っていた友人が歌とダンス系のグループに入っちゃったので、僕も仕方なく入ったんですけど、踊るのが本当に嫌で(笑)。まあ、デビューすらしていませんから何もなかったんですけど、芸能プロダクションの人と食事をしていると、そういう愚痴はよく聞かされました。
本橋信宏 確かに、男性アイドルは出てきにくい空気はあったね。
鈴木エイト 今でも歌番組にジャニーズ枠がありますから。何も変わっていなかったんです。つまり、そういうパワーバランスが芸能界でまかり通ってきたことが問題なんだと思います。
取材・文/犬飼華
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本橋信宏|1956年埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。作家。執筆内容はノンフィクション・小説・エッセイ・評論。『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版/新潮文庫)が原作となり、Netflixから世界190か国に配信され、大ヒットとなる。近著に『歌舞伎町アンダーグラウンド』(駒草出版)、『出禁の男 テリー伊藤伝』(イースト・プレス)、『新・AV時代 全裸監督後の世界』(文春文庫)など。
鈴木エイト|1968年滋賀県生まれ。ジャーナリスト、作家。『やや日刊カルト新聞』主筆。「旧統一教会」問題を長年にわたって追い続け、『サンデー・ジャポン』をはじめとするTVメディアなどにもたびたび出演。主な著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)、『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書)など。
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