2023-09-29 19:00

=LOVE、6年間の模索と躍進…やっと見つけた“王道”アイドルの信念

「BUBKA11月号」に登場している=LOVE(齋藤樹愛羅、佐々木舞香、野口衣織、大谷映美里)
「BUBKA11月号」に登場している=LOVE(齋藤樹愛羅、佐々木舞香、野口衣織、大谷映美里)
撮影/オノツトム
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指原莉乃をプロデューサーに起用し、2017年4月に誕生したアイドルグループ「=LOVE」。今では女性ファンからの厚い支持を集め、メディアへの露出も増え、“イコラブらしさ”を確立しつつある彼女たち。“王道”と形容されることも多く、結成当初は、「自分らしさとは」「アイドルとは何か」を模索していた。個人としてもグループとしても度重なる転換点を乗り越えることで、結束を固くし、信頼関係を築いていった。そして、この6年間で掴んだアイドルとしての自信を胸に、10月に立つさいたまスーパアリーナの舞台。“全員主役”の10人の物語は、さらなる上昇曲線を描きながら、また新たな展開へと動き出す。

初の武道館――1つ目の転換点

「絶対に泣かない」

リーダーの山本杏奈はこう誓って、日本武道館のステージに立っていた。2023年3月2日のことだ。

山本がそう心に決めていたのには理由がある。遡ること2年前、2021年1月16日、=LOVEは初めて日本武道館のステージに立った。それはコロナ禍真っ只中。外出するにはマスクが必需品で、イベントの開催すら是非が問われていたが、客を1席間隔に入れること、歓声を上げないことなどを条件に開催自体はアリになっていた時期だった。そんな状況で=LOVEは九段下の憧れの地に立っていた。

山本杏奈「キャパは半分でした。それでも私はすごく感動しました。その日はリハーサルから泣きすぎてしまって。指原さんの言葉を少しでも聞いたら、自然に涙が出てくるような状態でした。なぜだろう、情緒がおかしくなっていました。それくらいすごい場所に立っていると思いました。メンバーもみんな泣いていましたね。ただ、メンバーが泣き止んでも、私だけはまだ泣いていました。スタッフさんやメンバーと話したら、また泣く。その繰り返しでした」

山本がそう語るのには理由があった。

山本杏奈「あの日は、12人で立てるのは最後だって、みんなわかっていたんです。リハでも泣いていたし、終演後も泣いていました。それは納得できるステージにならなかった悔しさもあったし、指原さんがかけてくれる言葉の優しさもありました。いろんな感情がぐちゃぐちゃになっていました。映像で見返してもらえばわかりますけど、あの日の私、目が腫れているんです。それも後悔の原因のひとつでした。その時に次の武道館では絶対に泣かないぞって決めたんです」

佐々木舞香「私、一度だけ他のアーティストさんのライブを観に行ったことがありました。2階の端の席だったんですけど、どこからでも観やすくて、いい会場だなと思いました。印象に残っているのは、(諸橋)沙夏のソロ曲『My Voice Is For You』。ペンライトが全面緑で、すっごい感動しちゃって。自分の出番がすぐなのに、大号泣しちゃって大変でした」

野口衣織「初めての武道館は半分のキャパで、コールも送れない。なので、クラップで皆さんが盛り上げてくださいました。1曲目が『=LOVE』だったんですけど、その時点で大泣きです(笑)。嬉しくて、感動しました。私、楽曲に感情移入して泣くことはあるんです。でも、その状況に感動して泣くのは初めてでした。(髙松)瞳の煽りがまた、いいんですよ。泣きそうな声をしていたんです。瞳が泣くなんて、ものすごく珍しいことだったから、『瞳ぃ~!』って(笑)」

初の武道館から2年と2カ月で、=LOVEは急速に自信を身につけていた。大舞台に堂々と立てた。10月18、19日にはさいたまスーパーアリーナに進出する。アリーナクラスを埋められるグループになれた理由は何だったのか。その理由を探す旅に出ることにしよう。

汗を流して、がむしゃらに

指原莉乃がアイドルグループを結成する。そんなニュースが駆け巡ったのは2017年1月28日のことだった。当時、指原はまだHKT48のメンバーだった。そのために開催するオーディションは「代々木アニメーション学院presents 指原莉乃プロデュース声優アイドルオーディション」と銘打たれた。

4月、最終審査が行われ、12名が合格し、=LOVE(イコールラブ)と命名された。

8月、TOKYO IDOL FESTIVAL2017に出演。世界最大のアイドルフェスが初パフォーマンスの場となった。この時点での平均年齢は15.4歳。その場でソニーミュージックからのメジャーデビューが発表され、9月にはデビューシングル『=LOVE』が発売された。かなり恵まれたスタートと言ってよい。

しかし、大きな仕事ばかりこなしてきたわけではなく、デパートの屋上でイベントもやったし、キャパ200人の会場でライブもしてきた。当時を振り返る。

佐々木舞香「結成当初は、ルンルンでした(笑)。指原さんにプロデュースしてもらえるし、『これからの人生キラキラだ』みたいな。10代で狭い世界で生きてきたから無敵の時期でした。自分が一番すごいんだぞって。オーディションに受かるとそういう気持ちになるんです。でも、世界がどんどん広くなっていくと、その自信はなくなっていくんですけど」

大場花菜「合格したときは、これから頑張るぞという強い気持ちでいました。でも、周りを見渡せば、なんでもできる子たちばかりで。見た目もかわいいし、歌もダンスもお芝居もできる。『どういうことだよ!』と思って(笑)。それに比べて、自分は可もなく不可もない真ん中。やる気だけは人一倍あったけど、才能がなかったんです。個性とはなんぞやと模索する日々が始まりました」

大谷映美里「初期は辛いことが多かったです。合宿もそう、登山もそう。しかも、いつもカメラが回っています。いまはその環境に慣れましたが、最初は少し大変でした」

音嶋莉沙「最初の年はとにかく全力でした。憧れていたアイドルに自分がなれて、MV撮影のリップシーンとか『こういうのやりたかったんだ!』ということをやらせていただいて、純粋に楽しみたいという気持ちが溢れていました。だから、最初の合宿も辛くなかったんです。あっ、赤岳だけはキツかったです(笑)」

瀧脇笙古「赤岳の登山は、今でもメンバー間で語り継がれるくらいの企画でした。でも、私は楽しんじゃうタイプなので、楽しかった思い出として残っています。今度は富士山に登りたいと思っていたくらいです」

メンバーの語る合宿とは、振り付け師の牧野アンナ氏を招いて、デビュー曲『=LOVE』の振り入れをした時のものである。この際、12人はダンスとは何か、ステージに上がるための心構えなどを徹底的に叩き込まれている。

また、赤岳とは、『ネ申テレビ』の企画で行われた登山のこと。長野県と山梨県の境にある八ヶ岳連峰の最高峰で、山頂の高度は2899mである。

このように初期の=LOVEは、恵まれた状況にはあったものの、何でもこなしていた。筆者も当時行っていた定期公演に何度か足を運んだが、持ち歌が足りないため、AKB48グループの曲を借りて披露していたし、そこに集まるのは男性客が中心だった。

声優アイドルという個性が与えられてスタートを切った=LOVEだったが、ばっと見て他のアイドルグループと明らかに違うと認識できる色はまだついていなかった。

――まだまだ続くインタビュー、撮り下ろしアザーカットは発売中の「BUBKA11月号」で!

取材・文/犬飼華

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