“ばってん少女隊”の最新AL『九祭』を紐解く――ケンモチヒデフミの“ただのご当地ソング”では終わらない音作り
絶妙な遊び心
――『さがしもの』の歌詞についてですが、佐賀と探し物を引っかけている時点で面白くて。
杉本 天才的なダジャレで(笑)。
ケンモチ いつもダジャレみたいなところからしか発想できないので(笑)。気球の魅力をネットで調べたんですよ。そうしたら、気球に乗って、上に行った時に広がっている景色を見ると、自分自身との対話ができると。「世の中こんなに広いのに、おれはなんて小さなことで悩んでたんだろう」とか「将来こういうふうになりたい」って夢を膨らませたりとか。このサイトの言っていることはめちゃくちゃいいなと……受け売りなんですけど(笑)。
――気球に乗るとそこまで変わるんですね。
ケンモチ 佐賀県の“さが”と、気球に乗って“さが”し物を見つけるという話にしようと思って、バルーンフェスティバルと佐賀と探し物をかけていったんですね。
杉本 「整いました」ですよ。私のバラバラの思考がケンモチさんによって1曲にまとまって。
ケンモチ 各地の魅力と言葉を結び付けたり、メッセージ性を込めるのは難しいですよね。僕のなかではこれはハマったなというパターンの曲になりました。
――『九祭』って、ご当地ソング集になりかねないコンセプトじゃないですか。ただ名物や名所の紹介していくみたいな。そこにひねりが3つくらい加わって、ああいう形になっているのがよくて。『さがしもの』だったら、あのくらいの年齢の方が自分のアイデンティティを探すということも合っていると思うし、そういった内面と密接に結びつきつつも佐賀の曲でもあるという。なかなかできないことですよね。
杉本 ばってんのスタッフさんと話している時に、自分のなかから出てきた考え方があって。ご当地とかおみやげものとかって40~50年アップデートされない、鉄壁のフォーマットになってると思うんですけど、そうじゃない新しいヒット商品を考える時ってこうなんだろうなって。そういうつもりで各県、挑ませていただいたんです。
ケンモチ 杉本さんはプランナーとして超一級の腕を持っているので。
杉本 いやいや、すぐにボツになるのばかりで。「何言ってんの?」みたいな(笑)。佐賀のお仕事もやりたいんですけどね。
――ばってん少女隊だからこそトライできることはあったりしますか?
ケンモチ 渡邊忍さんが作られた『OiSa』と『わた恋』の、日本のお祭り文化とか古くからある文化を、ファンタジックに、幽玄的に描いているのが面白いなと思っていて。ほかのアイドルさんでは見られない雰囲気のミュージックビデオとか、楽曲とか、歌詞の使い方で、これだったら僕も新しいことをチャレンジできるんじゃないかなという印象を受けました。現実に存在しないかのような、日本の自然の美しさとか神社の神秘な感じとか。楽曲も、みんなで盛り上がろうぜって感じの曲じゃなくて、ちょっと引いている。この世界観が、ばってん少女隊さんとハマっていて。そのタイミングで僕も携わらせていただいたので、チャレンジすることができたのかなと思います。
――きっと杉本さんがディレクターだからというのもありますよね。
ケンモチ そうですね。完全に自由に作ってくださいと言われると逆にちょっと困っちゃう。作家としての生き方が染み付いちゃってるので、なんかお題くださいみたいな(笑)。制約をいただいた方がやりやすいというのがあるので。面白い設定をいつも与えていただいています。
杉本 ケンモチさんに頼むんだったら面白いお題を用意しないと、という気持ちではあります(笑)。ちなみにケンモチさんは『九祭』全体はどんな印象でしたか?
ケンモチ どの曲もそうなんですけど、ライブでもう一段、二段と化ける気がしていて。ほかのアイドルさんにはないような曲なんだけど、現場で見たらちゃんと盛り上がり要素とかお客さんの熱量もあって。面白いアルバムだし、コンセプトだなと思いました。
――ケンモチさんのコメントでライブBlu-ray『御祭sawagi~踊れ心騒げ~』への導線が見えました(笑)。
杉本 ありがとうございます……言わせてしまった(笑)。音楽が面白いので、ライブでいくらでもアレンジできると思うんです。何回やっても楽しみが見出せる楽曲だと思うし、もっと広がるんじゃないかなと思っています。『さがしもの2』もいけるんじゃないかな?
ケンモチ 一回じゃ見つからなかった(笑)。
杉本 『ランボー』みたいに続けるもの面白くないですか? サブタイトルをつけたりして。話しながらまた思いついてしまいました(笑)。
ケンモチヒデフミプロフィール
1981年生まれ。水曜日のカンパネラのメンバーとして活動しながら、xiangyu、femme fatal、戦慄かなの、平井堅、iri、など、幅広いアーティストに楽曲提供を行う。
『九祭クリエイターズファイル』の第1回(ゲスト:渡邊忍)、第2回(ゲスト:ケンモチヒデフミ)が、「ばってん少女隊公式YouTubeチャンネル」にて絶賛公開中!
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