“ばってん少女隊”の最新AL『九祭』を紐解く――ケンモチヒデフミの“ただのご当地ソング”では終わらない音作り
佐賀→トルコ→イギリス→タイの周遊旅行
――僕は歌メロが本当にすごいなと思っていて。Aメロやサビで同じ音符が続きまくるという。
杉本 最初、ケンモチさんがバグったのかと思いました(笑)。
――『One Note Samba』ばりですよね。あれはどうしてできたんですか?
ケンモチ 歌も打楽器みたいにするのが面白いなと。サビが“ててて てて てて てって”というリズムで作っていて、そのリズムでいきたいと思ってたんですけど、あまりにもリズミカルすぎて、途中で歌詞がハマらなくなっちゃって。それでああいうオノマトペみたいなものを連呼する歌詞に最終的に行き着いたという。
杉本 歌録のときはめちゃくちゃ苦労しました。もちろんエディットはしているんですけど、むしろエディットする面白さがあって。
ケンモチ それでああいうパーカッシヴな曲になりました。前半の方はラップの延長線上で作って、それにちょっとメロディがついたくらいな感じでしたね。
――ドロップらしきものがあって、サビ終わりの“探しに行こう”の後の方がむしろ本番になってますよね。そこはダンスしてほしいという感じで?
ケンモチ そうですね。ダンスミュージックの楽しいところというか。『YOIMIYA』とはまったく違う感じの、ドロップで沈むのではなくて、ドロップで上がる方を表現として入れてみたという感じです。
杉本 間奏がサビというか、そこに向かっていってる感じがありますよね。
ケンモチ 間奏に入ってからの「もう一回いきますよ!」みたいなのがあって、耳も目も補完されて間が持つというか(笑)。
杉本 ダンスが入ったことで、あの曲のおかしさがデフォルメされたかなと。気球の動きから、最終的にはサビでムエタイになっている(笑)。イギリスを経由してタイにも行ってるので、すごいんですよ。
ケンモチ アイドルさんによっては歌のない部分はどうしようもないのでドロップを作らないでくださいっていうオーダーもよくあって。逆に杉本さんやみなさんは、それを許容していただいているというか。
杉本 むしろ、ほしいという(笑)。『YOIMIYA』の時もありましたね。“よーい みや”という(クラップを)お願いするパートがあるんですけど、あそこはあえて空白にしていて。外郎売とか、和のラップを入れられないかなとか色々考えたんですけど、音だけで聴いてみてもかっこいいから、何かダンスで見せられるんじゃないかと思ったんです。振り付けのair:manさんとの取り組みもあって、そこが、ライブに来ているみなさんで柏手を打ってお願いするようなパートになったという。そういう遊びもできたんです。
――振り付けは、曲を作る側の方はどのくらい想定されるんですか?
ケンモチ 想定はあまりしてないかもしれないですね。逆に言ったら、作り終わったあとは、僕もどんな振り付けがつくのか、どんなミュージックビデオが作られるのかを楽しみに待っている感じなんです。色んなクリエイターさんのイメージとかノリが組み合わさっていってひとつの作品になるから、音楽もそのなかの一部でしかなくて。発想の飛躍みたいなものは自分ひとりじゃ絶対できないので、どんどん積み上がっていくのを楽しんでる感じですね。
杉本 振り付けありきの曲だと、隙間を作っておいた方がいいんじゃないかなというのは『九祭』で学んだことですよね。