プチ鹿島「ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実」0か100の時代にどこまで“探検”できるか
ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第52回は、『ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実』の著者・プチ鹿島氏が登場。所詮はヤラセ――。そう冷笑された『川口浩探検隊』を、本当にその一言で片づけていいのか? ヤラセという密林に分け入っていく中で、著者は何を見つけたのか!?
何がリアルか?
――テレビ朝日系列で放送されていた水曜スペシャル『川口浩探検隊』(’78年~’86年)の虚実に迫った本書。なぜ、このテーマを選ぼうと?
プチ鹿島 ’14年に、同じく双葉社から『教養としてのプロレス』という新書を出させてもらいました。プロレスって半信半疑の面白さや、フェイクの中にリアルが潜んでいる……そうした“行間”を、いかに楽しめるかっていうことがポイントだと思っているんですね。子どもの頃の僕が、そのプロレスと同じくらい熱を上げていたのが、『川口浩探検隊』でした。
――たしかに、その二つは虚々実々というか、鹿島さんが指摘するところの“行間”をいかに読み解くかが問われます。
プチ鹿島 当時の僕は、水曜の『川口浩探検隊』、金曜の『ワールドプロレスリング』を中心に回っていたといってもいいくらい。ところが、世の中の評価は、自分が思っているものとは違った。大人は冷笑するし、ませている同級生は鼻で笑うというか。その姿に、僕は子どもながらに、結構傷ついたんですよ。特に、’84年に嘉門達夫(現・嘉門タツオ)さんが『川口浩探検隊』を茶化した『ゆけ!ゆけ!川口浩!!』を発売して以降は、完全にネタ化された感がありました。以降は、僕も割り切って放送を見るという感じだったのですが、本当にピラニアに噛まれていたりするわけですよね。全部を「ヤラセ」と言ってしまうのはどうなんだろうと。僕は、芸能や政治のスキャンダルをはじめ、“嘘だと思われている中の本当”を探すの大好きなのですが、その原点ってやっぱり『川口浩探検隊』で学んだと思っている。世間がネタ化すればするほど、過小評価されている部分があるのではないかなと。それで、『川口浩探検隊』を掘り下げてみようと思ったんですね。
――言うなれば、『教養としてのプロレス』と地続きでつながっている本でもあると。
プチ鹿島 80年代って、猪木さんが衰えてきてUWFがブームになっていく。猪木・馬場のプロレスから、よりガチなプロレス……総合格闘技の黎明期が始まる。一方、テレビも似たような歩みがあって、『川口浩探検隊』終了後、そのスタッフの残党がTBS『ギミア・ぶれいく』(’89年~’92年)内で「徳川埋蔵金」プロジェクトを開始します。この本の取材でわかったことですが、「埋蔵金はガチだった」と証言しているわけです。そして、その延長線上に『THEプレゼンター』(’92年~’96年)という番組があったのですが、ガチ志向が強すぎて撮れ高が少なく、あまり盛り上がらずに終わってしまう。世の中がどんどんガチに寄っていくという雰囲気は、実は同時並列的にいろいろな業界で起きていたのではないかと思うんですよ。それこそ政治の世界でも、田中(角栄)派が割れて竹下(登)派が隆盛するも、一転して新党ブームに向かっていくわけで、いろんなものがファンタジーからリアルな戦いへと変わっていく。
――本書の面白さは、まさにその点にもあると思っていて、単に『川口浩探検隊』の昔話や懐古主義に帰着しない。読み進めていくと、「徳川埋蔵金」や「ロス疑惑」にもつながっていく。時代の変遷にともにない、テレビの虚実がどのように移り変わっていくのかがわかります。
プチ鹿島 取材を進めていくと、新しい発見の連続でした。それこそ「徳川埋蔵金」じゃないけど、掘っていくと新しい穴が見つかる。「何だこれ?」って、ドキドキしましたよね(笑)。「昭和の時代はすごかった」みたいな懐古主義にはしたくなくて、ここがあるから今がある――、どっちを過剰評価するというわけではなくて、前後の流れをきちんと見ないとわからないものがあると思うんです。
――しかも、『川口浩探検隊』のベールに隠されていたヒミツまで覗ける(笑)。本書を読むと、海外ロケに四苦八苦するスタッフたちの過酷さもわかります。
プチ鹿島 そうなんですよ。みんなは冷笑しているけど、リアルにジャングルに行っているわけで、そこはきちんと考えようよって。絶対に危険な目にも遭っているわけじゃないですか。放送では、ワンカットのシーンでヘビが落ちてきたりするわけですが、その絵作りをするために、AD(隊員)が本当に危ない毒蛇は除去していたりする。元隊員たちの証言を聞くと完全に冒険なんですよ。何が嘘で何が本当かわからない。その面白さですよね。たとえば、NHKだったら少数民族を追うドキュメント番組として成立するわけじゃないですか。三日三晩歩いて、目的地に行く様子を撮影するだけでドキュメントになる。でも、『川口浩探検隊』がそれをやったらコンテンツとして成立しない。だから、探検隊はお金を渡して、現地人と交渉して、“謎の原始猿人バーゴン”を連れてくる。
――ははははは! まさかバーゴンが、自分から「滝つぼに飛び込もうか?」とか交渉し、オプション料をせびっていたとは思いませんでした。
プチ鹿島 その仕掛け人が、『川口浩探検隊』シリーズのプロデューサーだった加藤秀之さん。この方は、のちに架空発注を繰り返し、経費を水増ししていたとしてテレビ朝日を懲戒解雇される。元隊員の話を聞くと、とにかくこの加藤さんが豪快で、“ザ・テレビマン”のような人物だったから、「加藤さん今は何をしているんだろう」「加藤さんに会いに行きたい」という気持ちが募っていった。加藤さんを、“謎の原始猿人バーゴン”や“双頭の巨大怪蛇ゴーグ”に見立てながら、僕らが探検隊となって加藤さんを目指す――そういった見せ方、読ませ方ができたらという思いはありましたよね。
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取材·文=我妻弘崇
プチ鹿島=ぷちかしま|1970年生まれ。長野県出身。時事ネタと見立てを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。TBSラジオ『東京ポッド許可局』出演ほか、『教養としてのプロレス』(双葉文庫)、『芸人式 新聞の読み方』(幻冬舎文庫)などの著書がある。
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