2022-12-05 18:00

「ばってん少女隊」クリエイティブディレクター杉本陽里子氏が語るアイドルソング

ディレクター/プロデューサー杉本陽里子氏
ディレクター/プロデューサー杉本陽里子氏

楽曲派という言葉が死語になる前に伝えることがある!ということで始まった当連載。今回は、アイドルグループ「ばってん少女隊」のクリエイティブディレクターを務める杉本陽里子が登場。サウンド、MV、キャスティングなど、全てにおいてアイドルの枠にとらわれない試みを続ける彼女。ばってん少女隊の最新アルバム『九祭』を紐解きながら、アイドルソングに対する新機軸を語ってもらった。

はじまりはスカコア

――ばってん少女隊の『九祭』はメジャーを離れてから2作目のアルバムになるわけですが、初期のスカ路線からどのような経緯で現在の音楽性に変わっていったのでしょうか。

杉本陽里子 当初はビクターとスターダストさんと話していくなかで、スカコアのアイドルはいないよね、ということだったり、当時のマネージャーさんがそっちの音楽を大好きだったりしたんです。その後、別の方がマネージャーになられたということだったり、時代的にもBiSHさんとかももクロさんとか、ロックなサウンドで女の子が頑張って歌うというのが当たり前にあって、いいものがたくさん出たなと感じていたというのもありました。

――近年はかなり多いですよね。

杉本陽里子 そんななかで、ばっしょーの子たちはステージでは元気にやっているんですけど、決してパワフルなタイプではないんですね。品があるというか、博多美人じゃないですけど、奥ゆかしさがあって、でも芯は強いという。彼女たちのそういう美しさを音楽に昇華できないかなと常々思っていたんです。ロック系で2枚アルバムを作ったあと、3枚目の時に別のディレクターさんも入ってきて、一緒に作っていったんですね。彼がアイドルソングの職業作家さんと繋がりが深い方なので、『ふぁん』はそういう曲も多くなりました。それはそれでいいものを作れたと思っているんですけど、ばってん少女隊じゃなくてもできることかもしれないなというのがありまして。

――なるほど。

杉本陽里子 メンバーの年齢も徐々に上がっていくなかで、個性がもっと生きるような音楽ってなんだろうなと考えた時に、デビュー当時から曲を作っていただいている渡邊忍さんと話し合ったんです。ばっしょーは『おっしょい!』という曲でデビューして、それは山笠の掛け声の「おっしょい」からとっているんですけど、それが祭りのクライマックスに向かうにつれて「おいさ」に変わっていくんですね。そのストーリーでやれないかなというのはずっと温めていたネタなんです。そのネタと、忍さんも「アイドルだから元気!」みたいな雰囲気ではなく、本人たちに合った曲が作りたいということで、いただいたのが『OiSa』でした。それで180度変わりましたね。クリエイターから見て、ばってん少女隊に合う歌はこれなんだという気づきをいただいて。

――このアプローチもありなんだと。

杉本陽里子 あの曲は声もエフェクティヴなんですけど、本人たちのキャラクターや美しさも出ていて。オケに生声をぶつけるという音像ではなく、リアリティがちょっとないような「声の儚さ」というのが音のひとつのコンセプトとしてできあがりました。それに合うサウンドで作るとなると、自ずと今イケてるクリエイターさんと言いますか、サブスクでたくさん聴かれているような音楽がマッチしていくね、ということで。もちろんPerfumeさんがやってきたことも見ていたので、それに連なる新しい形をばってんで提案できるかもしれないな、という思いもありました。

――ただ良い曲を作るのではなく、メンバーが歌う必然性をより求めた時に『OiSa』がハマり、そこが出発点になっていったと。

杉本陽里子 渡邊忍さんはばっしょープロジェクトで重要な役割を担っていただいているんですけど、ロックをずっとやってこられている彼がそれに気づいて、デジタルなサウンドを作ったというのがすごく衝撃で。この方向転換にすごくワクワクしました。そう来るなら次はこういう方向だよね、と燃えたところもあります。

様式美を壊す

――こうした劇的な変化に対する内外のリアクションはどうだったのでしょうか?

杉本陽里子 前作の『ふぁん』のリードをどうするかという会議があって、『OiSa』しかないんじゃないかって話をしたんですけど、もちろん「え?」という反応はみなさんからありました。ほかにいい曲があるなかで、この奇抜な方向でいくんですか、という(笑)。メンバーの歌割りも瀬田さくらちゃんの分量が多くて、均等じゃないんですね。全員に歌っていただいて、瀬田さんの声が音楽を届ける柱になるということでこの形になったんですけど、それも画期的で。挑戦としては面白いなと。

――結果、『OiSa』は広く聴かれる曲になりました。ある程度できていた型を変えるのは勇気がいることだと思うんです。それこそ偏りのある歌割りに対する反応も様々あるでしょうし、ライブでどうやるかを考えないといけなかったりもしますし。『九祭』は、アルバム全体でガラリとシフトチェンジしたことが本当にすごいと思いました。

杉本陽里子 もちろん私だけの采配じゃなくて、テクノロジーやマーケティングに長けているチームの人たちとやれているんですけど、そこからのフィードバックもありました。アイドルとしての差別化を考えた時にも、九州のアイデンティティと、お祭りというコンテンツは海外の人から見たらクールで憧れがあるものなので、そのお祭りの世界観のなかにいるということをブレずにやれたら勝てるんじゃないかと。メンバーも吸収が早い子たちなので、『OiSa』の時に、真顔でやってもこんなに反応がもらえるんだと気づいて、いいパフォーマンスをしてくれるようになりました。今回、難しい曲もいっぱいあったと思うんですけど、しっかりやりこなしてくれたかなと思いました。

――インタビューの続きは発売中の「BUBKA1月号」で!

取材・文/南波一海

杉本陽里子=すぎもと・よりこ|2005年ビクターエンタテインメント入社。A&Rや制作ディレクターとしてサカナクション、木村カエラ、レキシ、家入レオ、他多数のアーティストを担当。2019年にクリエイティブプロダクション株式会社ondoを設立。メジャーインディーズを問わず音楽やビジュアルの制作、プロデュースを担当している。また、音楽とカルチャーMIXのパーティー「CULPOOL」(カルプール)も主催。

ばってん少女隊|スターダストプロモーション所属、九州を拠点に活動する6人組アイドルグループ。4th ALBUM『九祭』が現在発売中。

九祭
Amazonで購入

BUBKA(ブブカ) コラムパック 2023年1月号 [雑誌] Kindle版
Amazonで購入

「BUBKA1月号」コラムパック

Amazon Kindle

楽天Kobo

Apple Books

紀伊國屋Kinoppy

BOOK☆WALKER

honto

セブンネットショッピング

DMM

ebookjapan

ブックパス

Reader Store

COCORO BOOKS

コミックシーモア

ブックライブ

dブック

ヨドバシ.com

その他、電子書籍サイトにて配信!

BUBKA (ブブカ) 2023年 1月号
Amazonで購入

Twitterでシェア

関連記事

BUBKA RANKING11:30更新

  1. 「僕が見たかった青空」今井優希、ギャルマインド のすゝめ
  2. 宮戸優光「前田さんとの関係が、第三者の焚きつけのようなかたちで壊されてしまったのは、悲しいことですよ」【UWF】
  3. 【BUBKA2月号】栗栖正伸、イス大王が語る遅咲きヒールとしての苦節50年
  4. 乃木坂46林瑠奈さんの飛躍の根底にある“2つの強み”
  5. R-指定(Creepy Nuts)が語るスチャダラパーの時代
  6. 【昇天】ドラゴンズ万歳! 金丸獲得だけじゃない「満点超え」ドラフトの理由とは? 青味噌のみそみそダイアリー #4
  7. 吉田豪「What’s 豪ing on」Vol.9 坂本慎太郎、ブレイクしたくない 好きな人に届いているいまがベスト
  8. 【追悼】酸欠少女さユりが私たちに残したもの
  9. 吉田豪新連載「what’s 豪ing on」Vol.2 向井秀徳
  10. 吉田豪「What’s 豪ing on」Vol.10 岸田繁、すべての音は泥団子イズムに通ず
  1. 日向坂46 松田好花が深夜に自爆!オードリー若林との記念写真がピンボケに終わるも「カメラのカネムラ」のおかげで無事解決
  2. 日向坂46小坂菜緒『EX大衆』リニューアル号表紙を飾る
  3. 日向坂46 松田好花がオードリー若林との夢の共演の「裏側」河田陽菜と埼玉でネタ探しするほど追い詰められた一週間
  4. 「松田もだって36……」オードリー若林の年齢イジりに日向坂46松田好花「おばさんイジりは良くない」と大激怒!?
  5. 乃木坂46の37thシングル『歩道橋』センターは、4期生の遠藤さくら!音源の配信も決定!
  6. 日向坂46の松田好花が撮るメンバー写真が有能すぎる!“カメラガチ勢”の金村美玖との撮り合いが白熱化⁉
  7. 日向坂46×ラジオ…収録現場に密着『BRODY8月号』表紙&特集解禁
  8. 菅井友香、祝!運転免許取得「一人旅にも挑戦してみたい」キッチンカーへの憧れも
  9. 日向坂46と二人三脚で歩んできたオードリー若林「自分の目利きが間違っていた」と、松田好花をガチ分析
  10. 齋藤飛鳥曰く「覚悟が決まると最強」!23歳になった乃木坂46のエース・遠藤さくらが放つ“あざとさ”と“か弱さ”と“輝かしさ”!