乃木坂46、3期生の絆「今が一番の思い出」過去から現在そして未来へ
乃木坂46に吹き込んだ“ひとつの風”。あの日、私たちが感じた風速12m/sの強風は、今となっては一瞬のそよ風に過ぎなかった。
2016年9月4日、乃木坂46に3期生が誕生
合格者は最終審査に残った12人全員だった。新たに導入されたSHOWROOM審査によって、オーディション期間から既にファンを獲得していた彼女たち。初速度がついた状態が功を奏し、爆発的な人気を集める幸先の良いスタートを切った。
3期生の結成からもうすぐ6年。私はこの結成6周年を3期生にとっての節目だと感じている。本来であれば5年…10年…などを節目と捉えるが、なぜ6周年を節目だと感じたのか。それは彼女たちが歩んできたこれまでの活動と楽曲が深く関係している。
日本武道館で開催された3期生お見立て会。自己紹介の声は震え、事前に用意してきた特技はおぼつかない。スポーツテストで運動神経が試され、先輩の必殺技を恥ずかしそうに披露。ステージに立つ彼女たちは普通の少女でしかなかった。しかし、その後のミニライブで会場の雰囲気が一変する。『命は美しい』『裸足でSummer』『ガールズルール』をフルサイズで完璧にこなす姿は、私が知っている乃木坂46だった。加入からわずか3カ月という短い期間で3曲を体に叩き込む。すごいとしか言いようがない。
翌年2月には舞台『3人のプリンシパル』が開幕。久保史緒里をはじめ、アイドルとは思えない本格的な演技力に私たちは圧倒される日々だった。また、同年に開催された三期生単独ライブでは、持ち曲が『三番目の風』1曲だけだったにもかかわらず(千秋楽で『思い出ファースト』を初披露)、高いパフォーマンス力とバラエティーに富んだライブ構成でファンを魅了。乃木坂46に「3期生」という“ブランド”を生み出し、期別で活動することへの価値を高めた。
結成後すぐに選抜とアンダーに分かれた1期生。同じく、正規メンバーと研究生でボーダーを引かれた2期生。離れることで強く結ばれる同期の絆もあれば、3期生の場合は近くにいたからこそ強く結ばれる絆だった。12人全員が同じスタートラインに立ち、この横並びで始まった最初の活動期間こそが、今の彼女たちを作り上げたと言ってもいいだろう。同期である大園桃子の卒業を5年間も先延ばしにできたのは、お互いが近くにいたことで理解し合えた3期生の絆なのかもしれない。
お見立て会の自己紹介で彼女たちが掲げた夢を覚えているだろうか? かわいいだけじゃ終わらないことを宣言した岩本蓮加は、座長を務めたアンダーライブ2019で、かっこいい乃木坂46を印象づける最高のパフォーマンスを見せてくれた。
コンプレックスの高身長を武器に変えたかった梅澤美波は、誰もが認めるスタイルの良さとビジュアルで、ファッション誌の専属モデルに就任。憧れの白石麻衣を追いかけて乃木坂46に加入した彼女だが、今は梅澤自身が憧れの対象となって同世代の女性から多くの支持を得ている。
ライブで『渋谷ブルース』を弾くことが夢だと語った向井葉月は、この曲でギターを担当していた先輩がグループを卒業すると、即戦力としてその役割を受け継いだ。
幼い頃から憧れていたというセーラームーン。その決めゼリフを披露した山下美月には、ミュージカルで月野うさぎ役を演じる未来が待っていた。
乃木坂46のオールナイトニッポンで、30枚目シングルに収録の3期生楽曲『僕が手を叩く方へ』が初解禁されると、この曲のセンターに立つ久保史緒里は「3期もこんな曲を歌えるようになったんだ」と、過去を振り返る感慨深い言葉を口にした。3期生楽曲は現在9曲にまで増え(3期生だけで編成されたユニットを含めると11曲)、彼女たちの歴史は3期生楽曲と共にあることが分かる。人が成長すれば、それに合わせて楽曲も成長していくのだ。
『僕が手を叩く方へ』は3期生の過去と現在を描いていると言っていいだろう。身をもって感じた先輩との実力の差。相次ぐメンバーの卒業。後輩という新たな出会い。その全てが一人一人にグループを背負っていく「責任感」を芽生えさせた。手の鳴る方へと導かれるがまま進んでいた彼女たちが、今度は自らが手を叩いて周りを導き始める。今まで手を鳴らしてきた1期生・2期生はそっと手を止め、音が響き渡るように静寂をつくって3期生を見守った。