Creepy Nuts・R-指定「Rの異常な愛情」、DABOの革命前夜(完結編)
――さっきまで自分は特大御稲荷を夜風にさらしてたという(笑)。
R-指定 そこです(笑)。〈未体験ゾーン飛びたつボイジャー〉の昇天する感じを宇宙船に例えるのもいいですね。かと思ったら〈しっかり捕まってな デンジャーデンジャー/ノーヘル原チャ オレが運転者〉と、現実に戻るという(笑)。
―― ハーレーじゃなくて50ccバイクなんだ(笑)。
R-指定 その庶民感も大事で、DABOさんのラップって重厚なリリシズムと一般人的な軽口が同居してるんですよね。『WREP』の企画で日本のラッパーを『アベンジャーズ』に当てはめようって遊びをしたんですけど、俺はDABOさんをスパイダーマンに当てはめたんです。スパイダーマンって、軽口も弱音も冗談も言いながら敵と戦うじゃないですか。
――ティーンエイジャーとしての悩みも抱える、人間くさいヒーローだよね。
R-指定 DABOさんは高度なラップとライミング、テクニックの中に、しょうもないワードや展開をつけてくるんですけど、それこそが日常生活にラップがある感じだと思うんですよね。当時のインタビューでも「もともとクリエイティブなことをやってるっていう意識はあんまりない。秘伝のタレを塗れば、それは俺のものになるんだ」って話してて。
――「御大層なことをやってるんです」と自分を高みに置かないと。
R-指定 ワードのチョイス、連想、ライム……それをすごく自然なものとして、息吸って吐いてしゃべる、ぐらいの感じで捉えてて。キャラクターとしてはUSのラッパーに近づけたかも知れないけど、その実であるラップ自体はすごくナチュラルなんですよね。
――スキルの高度さと、「モテまくってる」「金持ってる」「俺はスゴイ」みたいなラージさを併せ持ちつつ、その表現自体はすごく普段着というか。
R-指定 極端に言えば駄話の延長で面白いラップをするっていう。その感じが当時のDABOさんが考えるラップにおける粋さだったんでしょうね。そこらへんの街のあんちゃんが自分の言語を獲得して、アートにまで昇華させるという、「ヒップホップならではのラフでタフなかっこよさ」が、DABOさんの肝かなって。