“座長”乃木坂46 冨里奈央「37枚目アンダーライブ、行くぞーー!」に込めた決意
1月28~30日、千葉・幕張メッセイベントホールで乃木坂46のアンダーライブが開催された。
昨年末発売の『BRODY』で冨里奈央を取材した。そこでは聞きにくいことも聞かなければならなかった。選抜落ちの件だ。それについて質問しなければ、欠陥商品になる。
乃木坂46の37枚目のシングル『歩道橋』。選抜メンバーに冨里の名前はなかった。彼女の名前があったのはアンダー。アンダー楽曲『それまでの猶予』をセンターとして歌うことになった。
取材での冨里は答えにくいことにもしっかり答えてくれた。取材時点でアンダーのセンターに立つことはまだわからなかったため、それ以外のことを聞いた。すると、彼女は「自分は普通だ」と答えた。
乃木坂46には、とんでもない才能の持ち主がゴロゴロいる。スタイル、歌唱力、表現力……。乃木坂46のメンバーになったら、誰でも感じることかもしれない。一度は周囲の能力におののいた。しかし、今では深く悩まなくなったという。そのきっかけとなったのは、『考えないようにする』をもらってからだった。一昨年の夏のことだ。
そんな冨里がアンダーライブの座長を務めるという。どんな考えで臨むのか。それはブログを読むことよりも、本番を観ればいい。答えはステージにある。そう思い、アンダラ最終日の幕張メッセへと向かった。
1曲目のイントロ、冨里は煽りを任されていた。「37枚目アンダーライブ、行くぞーー!」と、普段は聞かれない声量で叫んだ。自分の殻を破らなければ座長は務まらない。その叫びには彼女の意気込みがすべてパッケージされていた。
特に忘れられない楽曲がある。終盤の『日常』だ。この日はいろんなメンバーがセンターに立って歌ったが、この曲は冨里がセンターだった。彼女は一段ギアを上げたように見えた。感情を込めて、広い会場の隅々にまで届けとばかりに体を動かした。パフォーマンスとはそういうものだ。その時の感情を込めれば、伝わるのだ。その証拠に、『日常』を歌い終わると会場からは拍手が起きた。他のメンバーも心と体をフルに動かした。
『日常』は、普段の自分から脱皮することを願う主人公の曲だ。もしかしたら冨里の心情に寄り添ってくれる楽曲なのかもしれない。そういえば、いつかのブログにも書いてあった。「今シングル 自分にとっても大きく変わる時だと思ってる」と。そんな感情をぶつけているように見えた。
「過去の私は、人に自分のことを話したり、考えていること、悩んでいることを話すと、その人に弱みを握られてしまうんじゃないかなとか、悲しい考えをしていました。でも、乃木坂46に加入して、私は変わりました。今回、アンダーライブの座長という立場でプレッシャーとか責任とか、そういうもので押し潰されそうになった時に、いつも誰かがそばに必ずいてくれて、背中をさすって、『大丈夫だよ。何かあったら助けてあげるからね』って声をかけてくれました。みんなと目を合わせて踊っている時、いっぱいちょっかいかけて、倍返しされて、『もう!』って言ってる時間とか、そういうものがすごく楽しくて、心から幸せだなと思いました。アイドルって楽しいことばかりじゃなくて、悲しいこととか逃げ出したくなることもあるんですけど、こうして3日間、12人全員で走り切ることができて、そして何より毎日みんなの優しさに触れて、成長できたことがすごく嬉しいです。大好きなメンバー、そして大切なファンの皆さん、そして、いつも支えてくださって、このライブを一緒に作り上げてくださったスタッフの皆さん。本当にありがとうございました(拍手)。私はアイドルになってよかったです(拍手)。3日間楽しくて、心から幸せだなって思いました(拍手)。ありがとうございます」
涙声で次の曲を紹介した。『考えないようにする』だった。自身のセンター曲である。余計なことを考えず、ただアイドル道を歩いて行けばいい。そんな顔をしていた。
ステージから去る冨里は、肩の力が抜けた、実にいい表情をしていた。また表紙にしたくなった。
取材・文=犬飼華
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