映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』公開記念 熊切和嘉監督インタビュー、スクリーンに映し出された日向坂46四期生の可能性
日向坂46四期生の全員が出演する映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』が10月25日より全国公開された。修学旅行で東京を訪れた個性豊かな女子高生たちの、それぞれの思いが交わり交錯する群像劇。作品の指揮を執った熊切和嘉監督が四期生と共に過ごした日々を振り返り、それぞれのメンバーに秘められた演者としての可能性を語った。
人を隠すなら池袋
――熊切監督は、以前から青春映画を撮りたいと思っていたそうですが。
熊切監督 ここ5年くらい、自分の中でその思いがありました。年をとって、逆立ちしたってあの頃には戻れないと最近強く実感するようになって。だからこそ映画の中でその感覚を掴みたいと言いますか……。そういった意味でも、今回はありがたい機会をいただきました。
――日向坂46四期生のことは事前に知っていたんですか?
熊切監督 事前にプロデューサーと脚本家が各メンバーにインタビューして、日向坂46に入る前のエピソードを聞いてもらって。夜な夜なその映像を観て、キャラクターを掴みました。
――事前インタビューで聞いたエピソードをどのように脚本に反映しましたか?
熊切監督 脚本の福田(晶平)さんがエピソードを落とし込んで書いてくれた初稿を、組み合わせを変えながら、11人にいろんな役のセリフを読んでもらって配役を決めたんです。そのうえで、さらにメンバーに寄せた設定にしました。例えば、山下葉留花さんが演じる門林萌絵のキャラをもっと立たせようと、鳩のシーンを加えたり。
――過去に同じような進め方をしたことはありましたか?
熊切監督 なかったですね。ワークショップで映画を撮ったことがあって、それに近いかもしれません。その時は何度もリハーサルをして作り上げたお芝居を路上で演じてもらい、それを撮影するという形式でした。
――路上で撮影できる時間は限られていたと思います。
熊切監督 彼女たちはライブで普段から舞台に立っているので瞬発力と集中力があるんです。「このシーンは一回しか撮れない」という時は、バシッと決めてくれました。下北沢での撮影のとき、時間と場所の制約で一発しかカメラが回せない時があって、緊張感もすごかったと思うんですけど、その時は本当にワンテイクずつ完璧に演じてくれて。すごい集中力でした。
――そういった撮影だとトラブルも多かったのでは?
熊切監督 正直、たくさんありました(笑)。人が多い東京を舞台に撮影していたので、いろんな人の協力を求めたり、時には謝ることもありました。そういう経験を経て僕もハートが強くなりましたね(笑)。逆に、池袋みたいな人が多い場所はみんな無関心というか、人混みに紛れて普通に撮影できました。
――木を隠すなら森の中といいますか。
熊切監督 でも、浅草では「正源司陽子だ!」という声が飛んできましたけど、聞こえないふりをして撮影を続けましたね(笑)。
ショートカット誕生
――四期生と対面した際、最初にどんなことを話しましたか?
熊切監督 「芝居なんだけどお芝居をしない」というか、「素直な気持ちをその場においてほしい」といったことを話したと思います。
――作品の冒頭は、正源司陽子さん演じる池園優里香のモノローグから始まります。
熊切監督 あのモノローグは現場でも録ったんですけど、編集後に録り直したんです。やっぱり、成長した池園が過去を思い返しながら話すような感じにしたいと思って。
――正源司さんが演じる池園は主役でありながら、ひとりで東京を走って班員の物語に少しずつ関わるという、いわゆる「狂言回し」でもあります。
熊切監督 正源司さんは少年っぽいところが魅力ですよね。ジブリ映画に出てきそうな、あとはじゃりン子チエみたいな、昭和のアニメの主人公っぽくも見えるとスタッフとは話していました。まさか令和のアイドルであのような貴重なキャラクターがいるとは思いませんでした。
――熊切監督と正源司さんで、池園の性格を一つひとつ確認しながら理解を深めていったそうですが。
熊切監督 リハの最初に正源司さんがまっすぐな目で「この役が浮いてるような気がして、掴めないんです」と言うので、「浮いてもいいんじゃないかな」と話して、アドバイスしました。次のリハでは迷いが消えたようなスッキリした顔でお芝居していたから、何かを掴んだのかなと思います。それ以降、ずっと天真爛漫でおしゃべりな池園になってました。
取材・文/大貫真之介
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