乃木坂46ドームツアー考察”2年連続座長”のエース・井上和の涙から感じた「乃木坂46らしさ」とは?
9月2日(月)~4日(水)の3日間、乃木坂46は明治神宮野球場で「真夏の全国ツアー2024」の東京公演を開催した。今年、グループは5年ぶりのドームツアーを敢行。大阪と愛知の4公演を終え、ツアーファイナルとなる東京公演で、1年ぶりにグループの聖地に帰ってきた。
昨年のツアーから、3期生が一番上となった新体制で全国を回り、ツアーファイナルの明治神宮野球場ではグループ初の4日間公演を成し遂げた。キャプテン・梅澤美波の「私たちが乃木坂46です」という一言は、新たな乃木坂46として、先輩たちが積み上げきた伝統を受け継ぎ、歴史を紡いでいく覚悟を示していた。
新体制となり2回目となる「真夏の全国ツアー」。東京公演の最終日である4日(水)には、初披露の楽曲がセットリストに組み込まれ、ファンを驚かせた。そんな3日目を終えて、筆者が気になった点をピックアップしながら乃木坂46の夏を振り返っていく。
昨年の全国ツアーと同様に、5期生・井上和が座長を務めた今年のツアーのテーマは「プリンセス」。お城をモチーフとした舞台セットや、メンバーが自ら考案した「○○プリンセス」で紹介する演出、どの期が「真の乃木坂プリンセス」なのかを決める「プリンセスバトル」が行われ、毎回、5期生の“生意気末っ子プリンセス”小川彩の毒舌に注目が集まっていた。大阪と名古屋で行われた「プリンセスバトル」の結果は引き分けだったが、神宮の3日間は梅澤の「引き分けなし!」の一言で決着をつけることに。初日が5期生、2日目は4期生、最終日には3期生がプリンセスに輝いた。
『OVERTURE』がライブの開幕を告げると、最新曲の『チートデイ』から東京公演の3日目がスタート。センターの井上は「ドン!」と、『乃木坂工事中』の番組冒頭でMCのバナナマン・設楽統が繰り出す一言で登場した。ライブ開始前には、会場で「設楽コール」が起きており、井上の「ドン!」は会場に足を運んだ「公式お兄ちゃん」を意識したものだった。
『チートデイ』に続いて、『太陽ノック』や『裸足でSummer』、『君に叱られた』、『ジコチューで行こう!』などの、ライブ定番曲で会場のボルテージを高めていく。
ここでは、『裸足でSummer』でセンターを務めた、4期生・遠藤さくらの“煽り”に注目したい。以前から、パフォーマンス面に関しては文句なしの評判だった彼女。尊敬する1期生・齋藤飛鳥の支えのもと、身につけたダンススキルや表現力は、センター曲の『ごめんねFingers crossed』などで存分に発揮されてきた。そんな彼女のファンへの“煽り”が、今回のツアーを通して変化したように感じた。これまでは「盛り上がっていますか?」と、問いかけるような口調だったが、今年は齋藤の「お前ら準備できてんのか?」のような強気な口調で声量も十分。会場全体に声出しを促し、最後に「神宮行くぞー!」と叫ぶ場面では、普段の細く途切れそうな声とは違い、力強く最後まで言い切っており、彼女の成長を見せつけられた。
その後は梅澤の挨拶を挟み、期別楽曲コーナーに突入。この時点では「かわいいプリンセスちゃんたちを紹介します」と、優しい雰囲気の梅澤なのだが、「プリンセスバトル」が開戦すると、後輩が「いい意味で圧を感じる」という梅澤に変貌する。寸劇の際にテンションを瞬時に切り替える梅澤が、ツアーを通しての細かな見所だった。
3日目の期別楽曲コーナーは、5期生が『17分間』、4期生は『I see…』、3期生は『三番目の風』を披露した。『17分間』のセンターである川﨑桜は、昨年、ライブ直前に怪我をしてしまい、神宮のステージに立てなかった。また、一昨年は5期生・冨里奈央がコロナで休演。今年、3回目にして初めて5期生全員で神宮のステージに立つことができたのだ。11人が揃ったステージに、イントロから会場の興奮は最高潮に。5期生の成長と実力を見せつけた。5期生の熱意で満ちた空気を、イントロの1音だけで変える4期生曲の『I see…』はグループイチのコール曲。ライブの中心は私たち4期生だと言わんばかりの熱狂を生み出した。また、3期生はライブ最終日が結成8周年の記念日で、3期生初の期別曲『三番目の風』の間奏では、ファンへの感謝や活動への思いを語っていた。加入当初、神宮のステージに最初に上がっていた3期生が、今では最後に立つ順番に。堂々たるパフォーマンスは8年の成長と、「まだまだグループの主役は3期生だ」と示しているように思えた。
期別楽曲コーナーを終え、「プリンセスバトル」で3期生が勝利を収めた後のユニットコーナーでは、ツアー最終日で初めて披露される曲が続き、ファンを驚かせた。メンバー全員参加曲である『設定温度』を、歌唱力に定評がある久保史緒里、林瑠奈、奥田いろはの3人が歌いあげた。イントロのピアノ音が流れると、会場は驚きの声が上がったが、すぐさま3人の美声に聞き入っていた。次に披露されたのは、アンダーライブで歌い継がれてきた、『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』。前作のアンダーライブで座長を務めた筒井あやめと伊藤理々杏、中村麗乃、吉田綾乃クリスティー、柴田柚菜が参加し、アンダーの伝統曲に宿る力強さを見せつけた。1期生・西野七瀬のソロ曲である『ごめんね ずっと・・・』は、3期生・与田祐希が先陣を切って歌うと、4期生・賀喜遥香、5期生・五百城茉央、小川彩が続けて歌唱。これまで、ライブで披露される機会が少なかった同曲を、西野を慕う与田が歌い継いだ。ユニットコーナーの最後は、5期生楽曲の『絶望の一秒前』を、井上と中西アルノがデュエットで披露。披露後には涙ぐむ中西を慰める井上の姿が印象的だった。
MCコーナーや、5期生・一ノ瀬美空が夏妄想VTRを挟んで、乃木坂46の夏曲ラッシュがスタートし、メンバーは浴衣で登場した。ファンも一緒に星座の名称を歌う『あらかじめ語られるロマンス』でメンバーは短冊に願いを込め、『ロマンティックいか焼き』では、屋台から飛び出したメンバーがペアになって踊った。この2曲はアリーナ席を囲むように披露され、乃木坂46のライブの特徴である、ファンサービス満載の時間となった。最後は、うちわを扇ぎながら風鈴の音で夏を振り返る『君が扇いでくれた』で、7月の大阪公演から駆け抜けた2024年の夏を締めくくった。
その後の『自惚れビーチ』、『ガールズルール』、『ひと夏の長さより…』では、浴衣を脱ぎ捨て、5期生が先頭に立ってパフォーマンス。中でも『ガールズルール』では、1期生・白石麻衣から3期生・山下美月に受け継がれた「神宮~、騒げ~!」の煽りを、一ノ瀬美空が普段のあざといキャラを感じさせない、力強い叫びで継承。『ひと夏の長さより』は、『チートデイ』で初フロントに立ち、井上を両隣で支えた池田瑛紗と小川彩のWセンターで披露された。
乃木坂46の夏曲で盛り上がった会場は、MCコーナーを挟んで空気が一変。新しい乃木坂46を象徴する曲が続いた。最新アンダー曲の『落とし物』は、新たなキラーチューンとなること間違いなしの1曲。ダンスメンバーが選抜された『Wilderness world』では、『裸足でSummer』に引き続き、遠藤が齋藤のセンターポジションを継承。圧倒的な表現力とオーラで、ステージの中心に君臨した。最後の『Actually…』は、中西のシャウトが東京の夜空に響きわたった。
その後は本編最後に向けて怒涛のラストスパート。3~5期生が中心となって以降の『おひとりさま天国』と『好きというのはロックだぜ!』から、1、2期生が中心だった頃の『夏のFree&Easy』や『シンクロニシティ』、そして、乃木坂46の新たなクラップ曲である『僕が手を叩く方へ』と続いた。センターを務める久保の「今日はありがとうございます。この景色は忘れません。最後は皆さんで一緒になりましょう」の一言で、メンバーと、会場に詰めかけた約3万5千人が手拍子で1つになった。本編最後は座長の井上が涙を堪えながらスピーチを行い、『誰かの肩へ』を披露。神宮の夜空に花火が上がり、本編は幕を下ろした。
今回のツアーで定番となった池田と小川の声出しに促されて、アンコールに突入。『僕だけの光』、『スカイダイビング』、『ロマンスのスタート』では、選抜メンバーがトロッコに乗ってスタンド席に登場。また、巨大フロートにはアンダーメンバーが乗り、コール&レスポンスを行った。
アンコールで最も盛り上がったのは、遠藤と賀喜のWセンター楽曲である『Monopoly』だろう。ステージの左右に分かれた巨大スクリーンの前に立った2人から始まる同曲は、曲中で向かい合って見つめ合う場面や、最後には「かきさく」コンビの微笑ましいやり取りが見られる。初日は遠藤が繋いだ手を食べようとして賀喜が慌てる様子や、2日目は2人でハートを作っており、最終日は頬がくっつくほどのハグをすると会場は大盛り上がり。「かきさく尊い!」などのコメントがSNSで見られた。
ツアー初のWアンコールでは、最新曲の『チートデイ』を改めて披露。ステージに登場したメンバーの中で、井上は誰よりも涙を流していた。「泣いてばっかりでごめんなさい」という彼女だったが、ドームツアーの規模や2年連続の座長のプレッシャーは計り知れないものだったに違いない。そんな彼女のもとには常にメンバーが寄り添っており、その光景こそが「乃木坂46らしさ」だと感じた。最後にはキャプテン・梅澤美波が6期生加入について、「もう迎え入れる準備はできているので、期待して待っていてください。そしてまた来年、今年よりも最高な景色を見ていきましょう!」と、力強く宣言。2024年の乃木坂46の夏を締めくくった。
新体制の2年目、ドームツアーを完遂した彼女たちは、どんな逆境も乗りこえていけるに違いない。メンバーが支え合い、最大限のパフォーマンスを発揮できる環境は、先輩から受け継いできた「乃木坂46らしさ」の賜物だ。未来への希望を確信させた7公演が、乃木坂46の歴史に刻まれた。
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