鈴木おさむ『仕事の辞め方』亡霊のまま仕事をして、生きているふりをするのを辞めたかった
ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第63回は、『仕事の辞め方』の著者である鈴木おさむ氏が登場。2024年3月31日をもって、放送作家業と文筆業を辞める──。なぜ看板を下ろそうと思ったのか。そして、新たに何を始めるのか。稀代の放送作家が見据える「これから」のこと。
「本気じゃん」と思われるために
――本書は、「あなたにも代わりはいる」「ワクワクしなくなったら仕事を辞める」など、仕事を辞めるという考えにいたった、背景や動機が綴られています。
鈴木おさむ 一番の理由は、今の自分の仕事に120%のスイッチが入りづらくなったことです。『仕事の辞め方』というタイトルなので、引退すると思われる方もいるかもしれませんが、そうじゃないんです。放送作家と脚本業からは退きますが、新しい仕事を始めます。その仕事が何なのかは、4月になったら発表しますが、新しい仕事は今まで自分がやってきたことを移植できる――そういう思いがあるんです。51歳の今のタイミングなら、今の仕事を辞めてでも間に合うって本気で思っているんですよね。
――山下達郎さんのライブを見た2019年に、「50歳になったら辞める」という思いがひらめいたと書かれています。50歳になったら生き方を変えようという思いは、前から抱いていたのでしょうか?
鈴木おさむ 本当はもう少し早く発表しようと考えていたんですよ。ところが、コロナ禍になってしまったので、いったん落ち着くまで心の中にしまっておくことにしました。昨年、みんながマスクを外し始めた段階で、発表するなら今だなと思って、24年3月31日で32年間続けてきた放送作家を辞めると発表したわけですけど、16年のSMAP解散を機に、120%スイッチが入る瞬間が少なくなってきたなという実感があったんですよね。そうした思いがある中で、山下さんのライブで『LAST STEP』という曲を聴いたんです。その瞬間、「辞めるって選択肢もあるんだな」ってひらめいた。人って、なかなか辞めるという選択肢があることに気が付かないんですよ。
――本書の中でも、「ビジネスセックスレス」という言葉を用いて、仕事にワクワクしなくなった自身の体験を明かしています。おさむさんの中でも、なかなか答えが見つからない状況だったのでしょうか?
鈴木おさむ 自分が感じている空虚感を埋めるために、いろいろな仕事をやってみました。それこそ、Netflixに『極悪女王』の企画を提案したのもそう。たしかに、埋まった部分もあったんだけど、なんだろうな……踏んでいるアクセルが違うんじゃないかっていう違和感があったんですよね。
――20代、30代、40代では働き方も考え方も違うと思います。今までは良かったけど、これからは違うと?
鈴木おさむ 僕は、40代ってきついだろうなと考えていた。僕が30代だったときに、秋元康さんに、「40代ってしんどくなかったですか?」と聞いたことがあったのですが、「しんどかった」と。実際、自分が40代になったとき、案の定、しんどかった(笑)。40代になると、組織や周囲を考える時間が増える。世の中を動かしているのは50代だと思っていたけど、実際には70代や80代が動かしているってことにも気が付いた。ですから、40代ってめっちゃ中途半端だなって感じたんですね。その一方で、20代からすれば、それなりにキャリアのある40代は邪魔な存在になってくる。30代の頃は、まるで神のように自分を全知全能な存在だと思える瞬間があったけど、それが幻だったということも40代になると気が付いてしまう。結局、自分の代わりはいるし、自分は何もできないんじゃないかなって思えてきて、僕の中で40代は、「50代に何をするのかの準備期間」だと考えるようになったんですよね。
――40代で飲食事業を始めたのも、そうした思いがあったからですか?
鈴木おさむ だと思います。11年に東日本大震災が起きたとき、会社に所属する人たちの中には、「自分たちは何ができるのか」みたいな組織としての雰囲気があったんです。でも、フリーランスとして働く僕には、そういう存在がなかったから、すごく寂しさを感じてしまって。家族以外にチームがないことに対する寂しさを痛感した。いつか飲食店をやってみたいという気持ちもあったから、「仲間を求めて」という意味でも、思い切ってスタートしたところがありました。それを機に、僕とは違う大きな人生を背負ってる人たちと出会えたこともあって、いろんなショックを受けました。そうした出会いも、今回の「仕事を辞める」という決断に影響をもたらしていると思います。
――放送作家やディレクターは、同じ番組を手掛けるチームだと思うのですが、それとは違う感覚だったんですか?
鈴木おさむ やっぱり仕事仲間になっちゃう。僕は、仕事の人とあんまりご飯を食べに行ったりしない。仕事の人とは仕事のときに話をすればいいし、飲みに行くと愚痴が飛び交ったりする。それがすごい嫌なんですよ。そうではなくて、40代になる中で、一つ熱いチームが欲しいなと思ったんですね。
――『仕事の辞め方』を読むと、“セミリタイアのすすめ方”といった類の話ではなく、“生き方を変えることのすすめ”であることが分かります。ですが、ここ日本では仕事を辞めると聞くと、セミリタイア、悠々自適なドロップアウトといった印象を抱く人も多いと思います。
鈴木おさむ ワクワクできれば、別にセミリタイアでもいいと思うんですよ。例えば、仕事を辞めて、全身全霊で英会話に打ち込んでいるなら、僕の中ではそれってリタイアじゃないと思う。ワクワクできるかできないかが大切だと思うんですね。最近は、日本人も転職することが当たり前になってきましたけど、10年くらい前までは、その仕事をし続けるみたいな風潮が色濃かったと思う。転職する人は裏切り者じゃないけれど。
取材・文=我妻弘崇
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鈴木おさむプロフィール
1972年、千葉県千倉町(現南房総市)生まれ。放送作家。高校時代に放送作家を志し、19歳でデビュー。『SMAP×SMAP』『めちゃ²イケてるッ』などバラエティーを中心に数々の人気番組を構成。また、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。Netflix『 極悪女王』では、企画・脚本・プロデュースを手掛ける。
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・Book Return
第63回 鈴木おさむ
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