ダースレイダー、イルでいつづける「病気哲学」
ラッパーとして、メディアアクティビストとして、映画監督としてなど、さまざまな活躍を見せるダースレイダー。その彼が、自身が罹った脳梗塞や1型糖尿病、腎不全、片目の失明などのさまざまな病気との戦いや、そこで得た哲学や思考、そして半生記によって構成された単行本『イル・コミュニケーション』を上梓した。文中では語られなかったエピソードを含め、「病との向き合い方」を訊いた。
病気をREPしろ!
――僕が最初にダースさんのライブを観たのは、おそらく2001年か02年の「B-BOY PARK」だったと思うんですけど、その時ダースさんは杖をついてて。
ダースレイダー 痛風だったんですよ。20代前半なのに。
――だから僕はずっとダースレイダーの病気の姿を見てて(笑)。
ダースレイダー アルファとのレコーディングの最中に、突然足が痛くなったんだけど、「車に轢かれたかな?」と思うような激痛で。
――轢かれて気づいてない方が心配ですよ(笑)。
ダースレイダー それで病院に行ったら「いや~あなた、グレート義太夫さんの次に尿酸値が高いですよ!」って言われて、「なんでこの医者は個人情報バラしてんだ?」って(笑)。
――義太夫さんの尿酸値はパブリックドメイン(笑)。
ダースレイダー たけし軍団は一般社会の中でもプライバシーや人権がなかった(笑)。その時にライムスターの宇多丸さんがすごく心配してくれたんですけど、ライムスターファンの女の子が「あれはキャラ作りで、痛風とかじゃないですよ」って、知った顔して宇多丸さんに伝えて。
――その人はダースさんの知り合いではないんですよね?
ダースレイダー 全然。なんでそんなことを吹聴したのかわかんないんだけど、それを真に受けた宇多丸さんが激怒して、「あれは全部嘘なのか! こんだけ心配してんのに、それはねえだろお前!」って。結果誤解は解けましたけど、もはや血液検査の結果を出すしかない! みたいな(笑)。
――検査結果を「勝訴!」って感じで見せて(笑)。アルファといえば、メンバーであり、ダースさんとも「W和田POSSE」という謎のユニットを組んでいたWADAさんは、今や新しい学校のリーダーズやFRUITS ZIPPERを擁するアソビシステムの取締役副社長という。
ダースレイダー あいつ、野球部のキャプテンなのに補欠だったんですよ。
――あなたも個人情報バラしてるじゃん(笑)。
ダースレイダー 「ベンチで待機するキャプテン」という珍しい存在だったのに、今やエンタテインメント業界のトップを走る会社の幹部という、日本中の野球部補欠に勇気を与える存在ですよ(笑)。
――このままだとそういう余談だけで終わりそうなので、本題に入りましょう。新刊に『イル・コミュニケーション』というタイトルをつけた理由は?
ダースレイダー ビースティー・ボーイズのアルバムタイトルから取ってるんですが、「ILL」という言葉は元は「病んでる」という意味だけど、ヒップホップだと「イケてる」とか「ヤバい」みたいな使い方をするんですよね。薬を使うという意味の「DOPE」も、ヒップホップだと同じような意味合いがある。僕自身、そういう言葉の使い方は知ってたけど、脳梗塞をはじめとする病気に罹ったときに、その言葉がすごく自分を勇気づけたし、力を貰えた。「病気になった」「弱ってる」「薬をたくさん飲んでる」という、普通ではマイナスに捉えられることが、ヒップホップのフィルターを通せば、みんな「格好いい」ということに反転させることができる。だから「僕の考えるヒップホップ」と「病気になること」が、同じ話として展開できるんじゃないかなというのが、タイトルも含めて本書のコンセプトでしたね。
――「ラッパーが病気について書く」というのは、かなり珍しい構成です。
ダースレイダー 「ヒップホップはイケてるもの」という認知は世間では広がってるけど、病気はずっと「迷惑なもの」「近づいて欲しくないもの」として、隔離されてるわけで。コロナ禍ではそれが本当に顕著になった。
――コロナウィルスという「病原体」を遠ざけるのは道理として分かるんだけど、さらに「病人」までも排除したし、この本にもあったように、ライブハウスや飲み屋、フェスなども槍玉にあがって。
ダースレイダー 「エンガチョ」という子どもがやるようなことを、健康なマジョリティが、病人というマイノリティに対して堂々と行って、「排除」することが社会的にまかり通った。それはすごく怖いことだし、そういった事実に対してどう感じたか、それが何につながるのか、病人の視点から書くことが大事だなと思ったんですよね。そして、多数派から怖いと思われたもの、虐げられたもの、迷惑だとされた少数派が打ったカウンターが、ヒップホップだった。アメリカでマイノリティだったブラックの人たちから始まって、いろんな人種を巻き込んで、オフィシャルには認められない遊び方で、マジョリティをひっくり返していったのが、ヒップホップのエネルギーなんですよ。だからヒップホップのイズムを通すことで、「病人」も虐げられる立場から、その状況をひっくり返すことができるんじゃないかなと。
聞き手・構成/ 高木“JET”晋一郎
――まだまだ終わらない記事の続きは発売中の「BUBKA3月号」または「BUBKA3月号コラムパックKindle版」で!
【BUBKA(ブブカ) コラムパック 2024年3月号 [雑誌] Kindle版】
⇒ Amazonで購入
ダースレイダー プロフィール
1977年、フランス・パリ生まれ。ロンドン育ち、東京大学中退。ミュージシャン、ラッパー。2010年に脳梗塞で倒れ、合併症で左目を失明。バンド、ベーソンズのボーカル。オリジナル眼帯ブランドO.G.Kを手がけ、自身のYouTubeチャンネルから宮台真司、神保哲生、プチ鹿島、町山智浩らを迎えたトーク番組を配信。著書に『ダースレイダー自伝 NO拘束』(ライスプレス)、『武器としてのヒップホップ』(幻冬舎)など。2023年には映画『劇場版センキョナンデス』『シン・ちむどんどん』(プチ鹿島と共同監督)公開。
【イル・コミュニケーション―余命5年のラッパーが病気を哲学する―】
⇒ Amazonで購入
⇒ Amazonで購入(Kindle版)
【AKB48向井地美音表紙:BUBKA (ブブカ) 2024年 3月号】
⇒ Amazonで購入
⇒ セブンネットショッピングで購入(セブンネット限定特典:AKB48向井地美音ポストカード1枚付き…3種からランダム1枚)
「BUBKA3月号」内容紹介
【表紙】
AKB48 向井地美音
【巻頭特集】
◯向井地美音(AKB48)「2024年グラビア侵攻作戦」
グラビア&ロングインタビュー「PRETTY IN PINK」
◯鈴木くるみ(AKB48)グラビア
「REPLAY」
◯上西怜(NMB48)グラビア&インタビュー
「WANTED!」
【特別企画・スタプラの逆襲SP】
・私立恵比寿中学
真山りか×安本彩花インタビュー
「“エビ中の音楽”で勝つ」
・AMEFURASSHIインタビュー
「音楽が開いた活路」
・座談会連載 アイドルのへそ
「エビ中・アメフラの音楽力」
【グラビア・インタビュー特集】
・インタビュー連載 23人の空模様
vol.06塩釜菜那(僕が見たかった青空)
「リーダーの素質」
・安納蒼衣×西森杏弥(僕が見たかった青空)インタビュー
「弱い気持ち・強い偏愛」
・WHITE SCORPION インタビュー
HANNA×NICO「世界を狙う肉食系スナイパー」
【グラビア&スペシャル企画】
・三野宮鈴 グラビア
「残像」
・大園みゆう グラビア
「やみつき?」
・紫藤るい グラビア
「Iのソナタ」
・ルルネージュ インタビュー
「今輝く、王道の到達点」
・「GIRLS IDOL Fashion Snap」Produced byチェキチャ!
【スペシャル記事】
・吉田豪インタビュー「What’s 豪ing On」
第十三回 小山田圭吾
「コーネリアスの夜明け、そして現在」
・『Rの異常な愛情』特別インタビュー
宇多丸×R-指定
「“キング オブ MC”のつくり方」前編
・ダースレイダー インタビュー
「レペゼン“病気”で覚醒! ダース式『イル・コミュニケーション』」
・赤味噌インタビュー
「赤味噌が語る『立浪中日冬の陣』」
・『玉袋筋太郎の闘魂伝承座談会』
発売記念対談 第2回
宮戸優光×鈴川真一「リアル“闘魂”スタイルの掟」
【BUBKAレポート】
・Book Return
第63回 鈴木おさむ
「仕事の辞め方」
・すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯
#16「1991年の金田ロッテ」
・アイドルクリエイターズファイル
#37 原田茂幸
・宇多丸のマブ論
【AKB48向井地美音表紙:BUBKA (ブブカ) 2024年 3月号】
⇒ Amazonで購入
⇒ セブンネットショッピングで購入(セブンネット限定特典:AKB48向井地美音ポストカード1枚付き…3種からランダム1枚)
【NMB48上西怜表紙:BUBKA (ブブカ) 2024年 3月号増刊】
⇒ Amazonで購入
【BUBKA(ブブカ) コラムパック 2024年3月号 [雑誌] Kindle版】
⇒ Amazonで購入