2024-01-02 20:00

LITTLE×R-指定、あらかじめ決められた韻たちへ(後編)

『新・Rの異常な愛情』
『新・Rの異常な愛情』
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R-指定とゆかりのあるアーティストをお招きしてお送りする『新・Rの異常な愛情』。前回に引き続き熱いライミングトークを繰り広げるお相手はLITTLE。「韻の赤い糸」を手繰り寄せる2人が、AIには踏めないAIUEOの極地を語ります。

癖の強さを武器に

LITTLE ヒップホップ以外の作詞って「自分の話じゃない」という前提で作られることが基本だよね。

R-指定 今年の「生業」ツアーで対バンしたSaucy Dog ともその話をしたんですよ。(Saucy Dog の)歌詞には自分の実体験が交じるし、それがあるからこそ書けるとは言ってたんですが、歌詞の主軸は「その曲の中の主人公」。だから、基本的にはフィクションなんだけど、歌詞の登場人物の行動やセリフに、自分の実体験が重なってくると話してましたね。

――小説やマンガなど、作詞以外の表現にもそういう部分がありますね。

R-指定 でもラップの縦軸はまんま「俺!」が基本ですよね。

LITTLE それがラップの魅力でもあるけど、常に自分と直結して受け取られがちだよね。もし不倫の曲書いたら「あ、浮気してんだ」みたいな(笑)。

R-指定 確かに(笑)。俺も“フロント9番”を書いた時に、歌詞を女性目線にして、「これは歌い出した瞬間からいつもと違うから、作りもんやな」とわかるように工夫しましたね。

LITTLE でも、歌謡曲だったら男性が女性の1人称で歌う曲なんて沢山あるし、そこで歌手と内容を同一化はしない。そういう風に「自分が主人公ではない詞」もラップで書きたいと思ってたんだよね。

R-指定 フィクションも含めて、もっと「物語」として作詞するということですよね。

LITTLE lyrical schoolに提供した“brandnew day ”も、「自分ではない」という前提があるから自由だったし、普段だったら出さないワードや韻もあって。「2つついてるツインテール」「シッポに似てるポニーテール」とか、俺がツインテールやポニーテールにすることは恐らく絶対ないけど(笑)、リリスクに提供する歌詞なら書けるわけで。それから“不純異性交遊”も「俺の話」じゃないから書けた部分があるんだよね。

――「思春期のトラウマ」をあんなに抉るように描いた曲も珍しいと思うんですが、自伝的な内容ではなかったんですね。

R-指定 曲のストーリーはぜひ聴いて欲しいんですが、あの曲の〈まわりには花が咲いていて/君は泣いていておれは最低さ〉という逃げ場のないラストは本当にリアルなんですね。「自分の中の『男』を自覚して、その自分に自分で引いてる」という心象風景も含めて、その状況をあれだけ生々しく描写する人もいないと思うんです。

LITTLE あれを「俺の話」にしたら「いや、もうちょっと良い奴ぶりたい」みたいな気持ちになると思うし、みんなそうなると思うんだ。でも「これはあくまでも作品」という気持ちで作ってるから、ああいう情景描写ができたんだよね。

――ある意味では、すごく残酷な描写ですよね。

R-指定 「ビンタされて振られた」というオチにすれば落とし話になるし、「あれが最初に女を泣かせたときだ」みたいなマッチョな話にすれば、いかにもラッパーっぽくもなるし、なんぼでも「逃げ道」はあると思うんですよ、でも、それをしない誠実さがありますよね。物語上、何かや誰かを傷つける表現は存在するけど、今はその表現自体NGになりかねないこともあって。

――“不純異性交遊”の表現も、傷つく人はいるでしょうね。

R-指定 でも「芯」を伝えるために、最悪な状況や、聴くと傷つく人がいることが分かってても、それを描くしかない時もあると思うんです。この曲はこの言葉とこのラストじゃないと、「芯」や「機微」を感じ取れない。男が一番、この表現によって自分を振り返ることになると思う、それに向き合う誠実さに驚くんですよね。

――無自覚な加害性だったり、ジェンダーや性の非対称性をよく表している曲だし、それが「この表現」だからこそ、浮き彫りになっていて。

LITTLE 「癖が強すぎる!」と思う歌詞なのに、「でもアルバムに一曲ぐらいこういう曲があれば、毎回聴くかも」と思わされたり、その部分こそがアーティストの信頼性を生むときもあるよね。「すごい癖だけど、こんな歌詞は他に誰にも書けないわ」みたいな。

――LITTLEさんと同じ八王子出身の松任谷由実さんの“ルージュの伝言”の歌詞は、「浮気したパートナーの母親に、その事実を告げに行く」というめちゃくちゃ怖い歌詞なのに、ポップソングとして広く受容されているし、そういうユーミンならではの「癖」は、彼女がポピュラリティを得た理由でもあって。

R-指定 強烈なアクや劇薬成分によって爆ハネする可能性もありますからね。

――個人的には“不純異性交遊 part2”があるからこそ、リアリティを感じる部分があるんですよね。「結局、男はろくでもないな……」と身につまされるというか(笑)。

R-指定 その両面が人間ですよね。「あんなに俺は自分の胸に手を当てたはずやのに、何年か経ったらもうフガフガしてる……なんや俺は!」みたいな(笑)。

LITTLE あの曲は人の親になってからマジで消して欲しいと思ってるけどね(笑)。でも、韻や物語の為に表現にブレーキが効かなくなるときがあるんだよね。

R-指定 ブレーキ問題はあるっすよね。人によってそのポイントも違うし。

LITTLE 例えばCHANNELは声もキャラクターも可愛い感じなのに、下ネタだけブレーキ効かないんだよな。“TORIIIIIICO!feat .CASSETTE VISION”も〈どんな5人のボインよりも〉だし。

――DJ TATSUYA“さーどっち?feat .大蔵,CHANNEL”でも〈きっと○○○も黒過ぎ〉と言ってるし。

R-指定 “ウィークエンド・シャッフル”でも〈美女の陰毛のように滅多にゃ見れない〉。

LITTLE からの〈エロ教師のペロペロ奉仕〉。これをRHYMESTERと初めて曲を作るって時にやれるんだもんな……まあ俺たちも“10Balls+2”か、最初は(笑)。

――あんま変わんない(笑)。

LITTLE あのテーマを出したのは俺らじゃないから(笑)。

聞き手・構成/ 高木“JET”晋一郎

――記事の続きは発売中の「BUBKA2月号(雑誌)」「BUBKA2月号(Kindle版)」で!

R-指定プロフィール

R-指定|1991年、大阪府出身。Creepy Nuts、梅田サイファーのMCとして活躍中。バトルMCとしても、2012年からの「UMB」3連覇をはじめ、テレビ朝日『フリースタイルダンジョン』での2代目ラスボスなど、名実ともに「日本一」の実績を誇っている。

LITTLEプロフィール

LITTLE|1976年、東京・八王子出身。KICK THE CAN CREWのリーダー、ライマー、愛韻家。98年にミニ・アルバム『いいの』でソロデビュー。01年にフル・アルバム『Mr.COMPACT』でメジャーデビュー。UL、アスタラビスタの一員、別名義の八王子少年としても活動。

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「BUBKA2月号」内容紹介

「BUBKA2月号」表紙を飾る乃木坂46五百城茉央
「BUBKA2月号」表紙を飾る乃木坂46五百城茉央

表紙
乃木坂46 五百城茉央

付録
五百城茉央(乃木坂46)
菅原茉椰(SKE48)
特大両面B2ポスター

巻頭特集
・五百城茉央(乃木坂46)グラビア&ロングインタビュー
「Accelerating future」
・阪口珠美(乃木坂46)グラビア&インタビュー
「Thank you 2023」

グラビア・インタビュー特集
・菅原茉椰(SKE48)
「Pageant of Sunshine」

・江籠裕奈×井上瑠夏(SKE48)
「えご天『一生アイドル』宣言

・鈴木くるみ(AKB48)
「Feels Like Heaven」

・インタビュー連載 23人の空模様
vol.05萩原心花(僕が見たかった青空)
「クールの仮面を脱ぎ捨てて」

グラビア&スペシャル企画
・西野夢菜 グラビア
「Winter Break」

・奥村梨穂 グラビア
「いちごと黄色と。」

・大瀧沙羅グラビア
「Choppy Snow」

・マジカル・パンチライン インタビュー
「遙かなる思いを夢の舞台で」

・「GIRLS IDOL Fashion Snap」Produced byチェキチャ!

スペシャル記事
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・玉袋筋太郎×藤波辰爾
『玉袋筋太郎の闘魂伝承座談会』発売記念対談
「NO INOKI NO LIFE」

・『Rの異常な愛情』特別インタビュー
LITTLE×R-指定
後編「あらかじめ決められた韻たちへ」

BUBKAレポート
・Book Return
第62回 谷良一
「M-1はじめました。」

・すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯
#15「1958年の加藤近鉄」

・アイドルクリエイターズファイル
#36 sty

・宇多丸のマブ論

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