高橋源一郎『失われたTOKIOを求めて』魔改造されゆく渋谷
ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第44回は、『失われたTOKIOを求めて』の著者である作家・高橋源一郎氏が登場。「まもなく東京は2周目を迎える。今こそこういう街だったんだ――と味わうタイミング」と語る作家は、どんな視点で、どんな思いでTOKIを刻んだTOKIOを歩いたのか? 中心がズレていく街・東京。この街は、生きている。
魔改造されゆく渋谷
――本書は、高橋さん自身の体験と、その土地の歴史的背景を紐解きながら、東京の各エリアを探訪します。なぜ東京を舞台にしようと?
高橋源一郎 これまで50回くらい引っ越しをしているんですが、今住んでいる鎌倉が、定住歴でいうと一番長くなりました。現在は、3回目の鎌倉になります。あるとき散歩をしていて、なんとなく逆回りに歩いてみると、道に迷ってしまったんですよ。どこを歩いているのかわからなくなってた。ずっと暮らしている場所なのに、「ちゃんと見てないな」と感じてしまって。ですから、鎌倉を舞台にすることも考えたんですが、かつて自分が住んでいたところを、あの散歩のときのように「逆回り」に歩いてみたいと思ったんです。逆回りに加え、東京は記憶や文化があるところも多い、だから垂直の視点――歴史ですよね、そうした他者の目線も交えながら歩いてみたら面白いのではと思ったんです。
――たしかに、旅先ならまだしも、根を下ろしている場所を“きちんと歩く”ことって、ほとんどないかもしれません。
高橋源一郎 ただ歩くと、やっぱり何も考えない。でも、「ここはどういう場所なんだろう」って思いながら歩くと、逆回りに歩くのと同じで、違うものが見えてきます。場所というのは、自分の記憶を引っ張り出す際に引っかける爪みたいなものです。それに、僕たち人間以外にも、犬にしか見えない風景だってあるんじゃないかな。犬を連れて散歩をすると、ときどきどこか中空に向かって吠えていたりする。人間には見えない犬の世界があって、犬の世界では何か事件が起こっているのかもしれない(笑)。場所には、そういった何かが埋め込まれていると思うんですよ。
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