掟ポルシェの「美食」に至る病、『食尽族』刊行記念抱腹舌倒インタビュー
吉田豪 掟さんと仕事で北海道行ったとき、打ち上げでちょっといい店行って美味しかったんだよね。そこでコーンの天ぷらが出てきた途端、掟さんが大声で罵り続けたんだよ。
掟ポルシェ ハハハハハハ!
吉田豪 すごい狭い店で、店員にも絶対聞こえてるのに、「こんなもん人間の食うもんじゃねえよ!」って。ボクらが美味い美味いって食ってるのに、1人でずっと悪口言い続けて。
掟ポルシェ 子供の頃にそういうのを変なアレンジで死ぬほど食わされたの。兄貴が作った脂ぎってて砂糖ベッタリの芋餅とかさ。塩も同時に入れないと砂糖の甘みって出ないじゃん。ああいう芋餅とか食わされた結果、芋も餅も甘いものも嫌いになったってとこはあるね。餅がドロドロに溶けてるとか最悪だから、正月の雑煮も俺だけ食わなかったり。
吉田豪 一緒に行ったイタリア料理屋でニョッキ頼んだときもすごい不機嫌になってたよね。
掟ポルシェ あ、そう? ジャガイモでできてるものわざわざ金払って頼むのか、と思っちゃってね。ごめんね!
コンバットREC 安居酒屋だとさ、さくら水産はけっこう認めてた記憶がある。どっか入ろうとすると「10分歩けばさくら水産あるからそっちにしよう」って。さくら水産がない街だとたいがい何かで怒り出してホール係に説教、みたいな。
吉田豪 そして、この本にも書かれているもつ鍋屋に遭遇することになるわけですかね。掟ポルシェ 2000年頃、みんなで格闘技を観て、新横浜近辺に何もないから渋谷まで出ようって言って。センター街のUCCの上。場所もハッキリ覚えてる。
コンバットREC しかもあれ、もつ鍋屋なのにもつ鍋の作り方を店員が知らなかったんだよね。
掟ポルシェ そうそうそう。当時まだ生のもつで出すところがそこまで流行ってなかった時代だったのかな? なんの下処理もしてない、ただのぶった切った腸をまんま入れてるから、どんどん脂が浮いてきてすごいくさい上に、食べたら味がしないんだよ。そのとき海老スープも頼んだんだけど、これも海老が入ったただのお湯で。冷凍の海老を煮ただけの、ダシすら出てない凶悪なやつ。ひでえ店入っちゃったなと思ったけど、最初のオーダーでつみれ鍋も頼んじゃったから、それ食ったら出ようぜって言ってて。そしたらつみれ鍋がまた冷凍の状態で出てきて唖然として。しかも火を入れるとつみれがドロドロに溶けてなくなるんだよ! つなぎの小麦粉が8割のつみれだから溶けて茶色いゲル状の鍋になって。あれはひどかったよね。
コンバットREC あのときだけだよね、厨房まで行ったのは。キレて厨房の中に入って行ったんだよ(笑)。
掟ポルシェ あれはさすがに我慢できなかった。
コンバットREC 「これ作ったヤツ誰だおい!」って厨房に入ってって、引きずりだして来てさ(笑)。
掟ポルシェ 「これ作ったのおまえか! これ自分で食ったか? 自分で食ってたらこんな味になんねえだろ、おまえ食ってねえだろ! 金は払うわ、金払わないと文句も言えないから」って、あのときだけはホントに頭にきて。
コンバットREC あのときはすごい剣幕だったね、厨房に入って行くのすごい勢いだったもんなあ。
掟ポルシェ 蜷川幸雄も言ってたけど、信念があればどんなケンカでもできるんだよ。不味いもの食わされたくないって信念が何よりも強いから。
コンバットREC あのときは掟さんを応援してたよ。
掟ポルシェ ひどかったもん。