みうらじゅん「アブノーマルもラブさえあればラブノーマルだと思うんですよね」<永いおあずけ>
――『アイデン&ティティ』、『色即ぜねれいしょん』以外にもオファーが?
みうらじゅん その前に、『Slave of Love』(後に『愛にこんがらがって』に改題)というSMの小説を書いたんですけど、それもポルノ映画監督の方から映画化のお話をいただいて、何回も打ち合わせをしたものの暗礁に乗り上げちゃって。なんせエロ系って、予算的な問題や客層の問題もあって、なかなかうまく進行しないんでしょうね。でも、『変態だ』に関しては、どうにか低予算でも完成した。松竹系の新宿ピカデリーで公開されることになったんですけど。でも、どう考えたってピカデリーが埋まるような原作じゃないんだから(笑)。 なんにしても映画化した――ということもあったからなのか、再び『小説新潮』の官能特集に呼ばれ、ちょいちょい書くようになって、その作品群をまとめたのが今回の一冊なんですよね。
――『変態だ』の2年後に書かれている『僕のスター』は、どこか『変態だ』のスピンオフのような雰囲気があるのですが、意識されたことだったんですか?
みうらじゅん ありましたね。というのも、松竹から最初に依頼を受けたとき、「三部作くらいで考えてくれないか」って言われたんですよ。ですから、最終的には変態が宇宙に行くっていうジェイソンシリーズみたいなことを考えていた。でも、当たり前だけどポシャって(笑)。そういう構想があったから、どこかで話が地続きになったら、というのはありました。『僕のスター』に関しては、『アイデン&ティティ』の裏版として考えていた話で、『変態だ』以前の小説って、僕は青春モノを書いていた。『色即ぜねれいしょん』は高校時代の話で、『セックス・ドリンク・ロックンロール!』は大学時代の話。そして、卒業後が『アイデン&ティティ』。『アイデン』のその後が『僕のスター』につながったら……というようなことは考えていたんです 。以前から、僕は青春モノの裏にある、もっとドロドロしたものを書きたいという願望があったもんですから。