みうらじゅん「アブノーマルもラブさえあればラブノーマルだと思うんですよね」<永いおあずけ>
――恐縮です(笑)。『永いおあずけ』は、5編の小説が収録されています。まず、売れないロッカーが雪山でのライブに愛人同伴で向かう『変態だ』について聞かせてください。この小説は、2016年に公開された映画『変態だ』(監督・安齋肇)の原作として書き下ろされたということでよろしいのでしょうか?
みうらじゅん そう思われているんですけど、違うんですよ。もともと、小説として『変態だ』を書いていたんです。『BUBKA』とか『ニャン2(投稿ニャン2倶楽部)』で書いていた功績が認められたのか、『小説新潮』から「官能特集をするので小説を書いてくれないか?」と頼まれまして(笑)。それで官能を念頭に置きながら『変態だ』を書いたんですよ。今でも僕は、松竹ブロードキャスティング運営のCS放送局・衛星劇場で番組をしていて、数年前に松竹サイドから「みうらさん、ポルノ映画のようなものを撮れませんか?」とオファーをいただいて。僕もあんまり知らなかったんですけど、松竹って70年代にポルノ映画を何作か作っていたらしくて、ちょうど何十周年かの節目の年だと。そのお話があったときに、その場ですぐに決めないと、仕事の経験上、すぐに流れることは知っていましたから、こっちでガッチガチに固めようと思ったんです。相手が途中で中断できないように進めるのが、僕の“一人電通”としての仕事ですから(笑)。それで、「実はもう原作もあって、監督も主演も用意しているんです」って大きく吹いたんですよ。安齋さんとは以前から映画を撮る話で盛り上がっていたし、主演も旧知の仲である前野健太というミュージシャンが演じれば適任だろうと。もう先方も断りきれなくなったんでしょうね、最終的に映画を撮ることになりまして。ですから、帯に書いてある「すでに映画化」っていう今まで聞いたことがないような惹句を書くことができたんです。それまでにも僕が書いてきたものを映画化する話って、何度かあったんですけど、やっぱり途中で頓挫するもんですから、そこは勢いに乗らないとダメだなと。