“水ダウ”藤井健太郎דWACK”渡辺淳之介「悪企のすゝめ 大人を煙に巻く仕事術」刊行記念対談
――それで思い出したのが、藤井さんの『悪意とこだわりの演出術』(16年/双葉社)も作った箕輪さんとボクがこの前やったロフトプラスワンのイベントのことなんですよ。
渡辺淳之介 あれ、どうだったんですか? 気になって気になってしょうがなかったんですけど、アーカイブを観るまでもないかなって。
――無茶苦茶おもしろかったんですよ。箕輪さんはサブカルが大好きでサブカルの仕事をしたかったんだけど、そっちでは報われず、やむなく意識高い系といわれるような、お金第一主義的な人たちの本を作ったら当たってどんどんそっちに流れていった人で。でも気持ちはまだサブカルに残っていて、それなのにサブカルから愛されないことへの屈折がすごいあるんですよ。それをちょっと思い出したんです。おふたりはサブカルの根っこを持って、そこの支持も失わないまま、どこまで行けるか試しているように見えるというか。
渡辺淳之介 そうかもしれないですね。
藤井健太郎 イベントで箕輪さんはどうでした?
――すごかったですよ。緊張しながらも、ボクと絡みたいってずっと言ってた人だから途中からは帰りたくないスイッチが入って、「楽しい!」と連呼しつつ、でもあまりにもコメント欄が自分に冷たいしで泥酔して失言を繰り返し、どんどん信用を失っていって。
藤井健太郎 ハハハハハハ! なんとなく自分がアウェーなことはわかりつつも、呼ばれたのはうれしいぞ、みたいな。そのへんは変なサービス精神があるから盛り上がると思ったらなんでも言っちゃうんでしょうね。
渡辺淳之介 僕も何回かしかお会いしたことないしじっくり話したことはないんですけど、たぶん箕輪さんが一番少年っていう印象で、たぶん素で言ってんだろうなっていう。
――ホントそうなんですよ。
藤井健太郎 僕の本を作ったのは彼が双葉社の社員のときだから、まだ今みたいなポジションになる前のいち編集者で。実際、接してたら別に嫌な人ではないじゃないですか。ただ、ああいう世の中的な動きを見たら嫌に思う人がいっぱいいるのもわかるんだけど。
渡辺淳之介 そうですよね、人当たりもぜんぜん悪くないし。あと酔っ払っちゃうとダメなんだろうなっていうところもわかるんですよ。
――あの騒動も全部それだなっていうのはよくわかりました。その界隈との違いって、やっぱり何が先に立つのか立たないのかなんですかね?
藤井健太郎 ちょっとそうなのかなとは思いましたね。僕は会社員だからそこまでビジネスに向かってるわけじゃないですけど、お金は好きでもやっぱりそこは違うんだなと思って。
渡辺淳之介 そう、だから主語が金だったんだよな。俺は主語が金じゃねんだよなっていう。
藤井健太郎 目的と手段の順番がね。
渡辺淳之介 そうなんですよ、あとからついてくる。盛り上がったり人に認めてもらうからこそ、お金がついてくると思うんですけど。
藤井健太郎 やりたいことが先にあるから。
渡辺淳之介 だからそこがかみ合わねえなって。
藤井健太郎 「これをやったら儲かるな」っていう発想で考えてましたよね、それがいい悪いではなく、「これはいいぞ、儲かるぞ」って。
渡辺淳之介 会社を作って売って、その株でとか、そのアプリをどれだけ釣り上げて売っ払うかっていうことを考えてるんですよね。