プロ野球・俺たちが忘れられない助っ人外国人たち…伊賀大介×中溝康隆が語る
――時代とのリンクと言えば今は情報化が進んで、80年代ほど助っ人にまだ見ぬ怪物性と言うかロマンを抱けなくなったような気がします。
伊賀大介 それでいくと一時のキューバ選手はロマンの宝庫だった! リナレス(中日/2002-04)がホイス・グレイシーならセペダ(巨人/2014-15)はヒクソンなんじゃないかとか。スイングが速すぎて見えないなんつって、マジで50本くらい打つんじゃないかと勝手に思ってた(笑)。
中溝康隆 情報がない分、一体どんな選手なんだって勝手に想像して……金属バット時代のキューバ勢はラスボス感ありましたよ。もちろんストーリーが入り込む余地もあった。今は情報だけなら、それこそスポーツ新聞より詳しい人が何人もいるので、ストーリーをふくらませずらくなったと感じている僕のようなオールドファンも多いと思います。
伊賀大介 ちょっとだけまじめな話をすると世界中のスポーツがそんな感じになってますよね。例えばボクシングもメキシコのルチャドーラーもちょっとYouTube見れば、過去の試合とかも全部観れちゃって。幻想たりねえなー、と。
中溝康隆 以前、武藤敬司が橋本(真也)対小川(直也)の1・4の話をした時に『当時はまだそこまでネットが強くなかったので、時間をかけて話をふくらませることができたけど、今だったら無理だよね』って言ってたけど、それはプロ野球の世界にもあてはまって……野球の書き手としては悩みどころではあるんですけど、令和の名勝負ってどんなカタチになるんだろうって。
伊賀大介 去年だと幻想感じたのはジョーンズ(オリックス/2020-21)くらいですかね。
中溝康隆 ジョーンズはストーリーがありましたね。最後は代打でベンチにいてもティーチャーって呼ばれて。
伊賀大介 日本人はメジャーで実績のある選手をティーチャーって呼びたがりますよね(笑)。レジー・スミス(巨人/1983-84)も。中溝さんは今回の本を書くにあたって相当調べたんじゃないですか。
中溝康隆 でも、どんだけ調べても知らない情報が出てくるんですよね。ロッテのリー(ロッテ/1977-87)と王(貞治)さんの物語があって、来日1年目に王さんにバッティングを教わって日本で打てるようになったんだって秘話があって。それが資料を調べてるうちに山本浩二(広島)や王さんのビデオを見てバッティングを学んだという別の資料も出てきて……微妙に変わっていくんですよ。