SKE48井上瑠夏はなぜ水着になったのか? 初水着グラビアに懸けた思いと自分への挑戦
そんな折、井上は卒業生の北川綾巴と竹内彩姫(現ゼスト社員)にグラビアを勧められる。グラビア撮影って楽しいんだよ。かわいく撮ってもらえるよ。そんな言葉を聞いた井上の心は大きく傾いていった。
これまでの井上瑠夏としては成長限界を迎えている。このことを本能的に感じ取ってしまったら、次なる一手を打つしかない。だが、それには勇気が必要だった。初めての水着。男性読者の想像では及ばないものがあるだろう。悩める8期生の背中を押したのは、グラビア経験のあるOGの言葉だった。
時を同じくして、BUBKA編集部は井上のグラビアページを事務所に提案していた。もちろん編集部は、OG2人が井上にグラビアを勧めた事実を知る由もない。偶然が重なっただけだ。風向きは井上に味方していった。あとは本人が一歩を踏み出すかどうか。そこに懸かっていた。
これは想像だが、一歩を踏み出す際に必要な勇気は、あの日、江籠から分けてもらったものではなかったか。だとしたら、井上はつくづく人に恵まれている。
こうしてBUBKA4月号の水着グラビアは誕生した。
撮影後のインタビューでは、井上は晴れやかな表情を見せた。楽しかったと話してくれた。憑き物が落ちたような顔だった。
しかし、まだ立ち位置が改善されたわけではない。存在感の面でも先輩に及ばない部分があることは否定できない。
ソロのタレントや女優だったら、マネージャーが親身になって売れる策を講じてくれる。ところが、グループアイドルではそうはいかない。マネージャーに頼りながらも、自分で考え抜く力を要求される。自己プロデュースというやつである。
アイドルに必要なものとは何だろう。かわいさ? それはまったくの正論だ。だが、かわいければ全員が売れるのか。そういうわけではあるまい。運? 愛嬌? それともストーリーか? この先も井上は正解を出すために、もがきながら活動を続けるしかない。
だが、勇気を持って立ち上がった人間をいま推さなくて、いつ推すのか。それだけはどうしてもこのタイミングで記しておきたかった。
文●犬飼華