【BUBKA8月号】なんてったってキヨハラ 第11回「時代を背負った若獅子」
トレンディドラマブームは、“ダブル浅野”から始まった。
1988年7月7日にフジテレビで放送開始された『抱きしめたい!』で、浅野温子演じる主人公の池内麻子はなんと家賃25万円のマンションに住んでいる。浅野ゆう子演じる麻子の幼なじみの早川夏子にいたっては、その親友の恋人に手を出して略奪婚を華麗にかます。もし現代の映像作品でそんな設定にしたら、視聴者の怒りを買い何の共感も得られずSNS炎上必至である。
にもかかわらずバブル期の若い女性たちは、ダブル浅野が特集されたファッション誌を熟読した。ドラマでは当時まだ聞き慣れない横文字職業のスタイリスト、インテリアデザイナー、スポーツ冒険家らが登場…って最後のは北尾光司じゃねえか!というのは置いといて、昭和の終わり頃、テレビはリアルさより、まだファンタジーを売り物にしていたのだ。
同年夏にはソウル五輪が開催。アクションスターばりに筋骨隆々のフローレンス・ジョイナーやベン・ジョンソンにリアリティはなかった。桑田真澄が男子100メートル走に「素晴らしい競争に体が震えました。敗れたルイスも、あれだけの勝負をして負けたのなら悔いはないんじゃないかなぁ。(9秒79の世界新を出した)ジョンソンのひたむきさが素晴らしいですね。でも、あの筋肉、信じられませんね」と感動した翌日に、ジョンソンのドーピング陽性反応が判明して、金メダルを剥奪された際には日本でも大きなニュースに。
「野球選手もジョンソンが使用したスタノゾロールを使えば、パワーがついてホームランを連発できるんですかネ」なんて真顔で記者に聞いたのは、当時プロ3年目の清原和博である。
甲子園でホームランを連発したPL学園時代からキヨマーは夏場に強かった。『週刊ベースボール』掲載の西武OB大田卓司との対談では、その理由を「夏になると(疲れで)力があまり入らなくなるでしょう。だから、かえって余計な力が抜けて、むしろバッティングにはいいみたいですね。春だと、力が余って逆に、力んじゃうんですよ」と自己分析。
オールスターファン投票では同僚の秋山幸二に次ぐ、両リーグ2位の12万票以上を集めパ一塁手部門でぶっちぎりのトップ選出だ。なお、セ投手部門で独走したのは「投手としての一番の快感が分かりますか? 打者が狙ったところへ投げて、少しだけ芯を外し、フライを打たせることなんです」なんて20歳とは思えない投球哲学を語る桑田である。
――インタビューの続きは絶賛発売中のBUBKA8月号にて!
なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)、『令和の巨人軍』『現役引退―プロ野球名選手「最後の1年」』(新潮新書)などがある。