2022-02-05 18:00

なんてったってキヨハラ第18回「苦悩の日の1993」

オープン戦で89年の最多本塁打6本に次ぐ4本をマークした清原は、開幕カードこそノーヒットに終わるも、春先のスランプに悩んだ昨年とは別人で4月は自己最多タイの6本塁打。5月3日のロッテ戦では、西武球場へ観戦に来ていた元F1ドライバーの中嶋悟親子の長男から一発をおねだりされると、なんと圧巻の2打席連続バックスクリーン弾を叩き込む。さらに8回にはリリーフの伊良部秀輝と力対力の勝負を繰り広げ、ファールにした3球目の時速158キロは当時の日本最速記録を更新。「ボールが唸りを上げていて、めちゃくちゃ怖かった」と言いつつ、最後は7球目の157キロを右中間真っ二つの二塁打を放ったキヨマーに軍配が上がる。野茂に伊良部、90年代を代表する剛腕たちがムキになって直球勝負を挑むのは、いつだってライオンズブルーに光輝く背番号3だった。

しかし、強すぎる西武にファンもシラケ気味とまで言われた時代、世の中の注目は5月2日のヤクルト戦で高津臣吾からプロ初アーチを放った巨人のゴジラ松井であり、フジテレビ『ドキッ!丸ごと水着 女だらけの水泳大会』で相撲対決する飯島愛と細川ふみえのTF砲であり、5月15日に開幕するサッカーJリーグだった。次第にキヨマーのバットも湿りがちになり、6月はわずか1本塁打。それでも7月9日のロッテ戦で55打席ぶりのアーチを放ち、いざ夢の球宴へ。パ・リーグ最多得票を獲得したお祭り男は、オールスター第1戦で本塁打を含む4打数4安打3打点の爆発でMVPに輝き、第2戦でも全パ新の球宴通算8号となる2試合連続アーチを右翼スタンドに運んだ。これでもうダイジョウV、後半戦の初タイトル奪取に向けて加速……と思いきや、8月にさらに深刻なスランプに陥ってしまう。しかも、あれだけ試合に出ることにこだわる背番号3が度々体調不良を訴えたのだ。

――記事の続きは発売中の「BUBKA3月号」で!

中溝康隆=なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)、『令和の巨人軍』『現役引退―プロ野球名選手「最後の1年」』(新潮新書)などがある。

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