Uインターの生き字引 鈴木健が語る 髙田延彦vs北尾光司戦の真実
――日本武道館の新記録を作るくらいの売れ行きだったんですよね。
鈴木 プレイガイドではすぐ完売して、あとはわずかなキャンセル分を当日券として出すだけだったから。それなのに「引き分けじゃないと明日は出ない」なんて、ありえないじゃない?
――ありえないですね。
鈴木 あの時は、安ちゃん(安生洋二)と宮戸ちゃん(宮戸優光)が交渉していたと思うんだけど、埒が明かないから髙田さんと一緒に車を飛ばして北尾がいるホテルまで行ってね。そこで髙田さんと北尾で直接会談をしたんだけど、北尾は「3分5ラウンド制の引き分けにしてくれ。それじゃなきゃ出ない」の一点張り。でも、こっちとしたら、ちゃんと出場契約どおり北尾には出てもらわなきゃならない。「プロレスこそ最強であることを証明する」というのが、Uインターの信念だから。ここで北尾戦をなくすわけにはいかない。
――以前、この件については髙田さん本人や安生さんにも取材したことがあるんですけど、Uインター側はそこで「じゃあ、シュートでやろう」と提案したんですよね?
鈴木 そうそう。「3分5ラウンドでやるなら、シュートでやるしかないね」って。べつにこっちは「髙田さんを勝たせてくれ」、北尾に「負けてくれ」って言ってるわけじゃない。「3分5ラウンドをシュートで闘って、決着がつかなかったら引き分けにしよう」って言ったの。そしたら、それも嫌だって言うわけ。
――それはホントにラチが明かないですね。
鈴木 でも、髙田vs北尾っていうのは世紀の一戦で、超満員のお客さんが期待してるんだから、そんな手を抜いた試合にはできない。だからお互いシュートに近いくらいガンガンやるしかないって話をしたの。その時、北尾選手がハッキリと言ったのは、「自分はサブミッション(関節技)はできないから、極まる前に緩めてくれ」と。「その代わり打撃は自信があるので、打撃に関しては全部シュートで来て構わない」と、ハッキリ言ったんだよね。それを聞いて即行、髙田延彦は北尾選手と握手して、「じゃあ、その約束を守って明日はやりましょう」って言って、ホテルを後にしたわけだよ。