【BUBKA1月号】なんてったってキヨハラ第16回「変わりつつあるなにか」
高知・春野キャンプには、世界の王が電撃訪問して「今の選手で50発打てるのは清原しかいない」と太鼓判。ドラフトを巡る因縁から6年の月日が流れ、サクセスストーリーを歩むうちに受けた傷もかさぶたで塞がれつつあった。少年時代からの憧れの人からのアドバイスに「王さんに聞いた話は、自分の胸にしまっておきたい。ものすごくいい話やからあまり人にいいたくないんです」と無邪気に喜んだ。
キャンプでは右ヒザ裏を痛め、左足首のネンザも心配されたが、オープン戦12試合で打率.436を記録。昨年に続き、オカン手作りの赤飯を食べた4月6日の開幕日はフェラーリ・テスタロッサで西武球場入りすると、ロッテの小宮山悟から初打席アーチをかっ飛ばし、さらに死球を巡る因縁の相手・平沼定晴から史上初の2年連続の開幕戦2本塁打。オープニングセレモニーで300発もの花火が打ち上げられた記念すべき日に、負けじとド派手な花火をファンにプレゼントした。
4月16日の日本ハム戦でも軽々とスタンドに二発放り込み、開幕7試合で6本塁打の固め打ち。夢の50発も間違いなし。誰もがそう思った91年シーズンの華々しいスタートだったが、突然キヨマーのバットから快音が消えた。評論家の豊田泰光が「スランプを通り越し、もはや病気だ」なんて呆れる大スランプ。始動が遅れて体が開き、持ち味の懐の深さも失われた。長打がまったく出なくなり、三振の山を築き、焦ってファールフライを打ち上げた際に左手首をネンザする悪循環。
球場を訪ねた大物OBからは「“さげまん”としたんやないか?」と嫌がらせのようなアドバイスをされる屈辱だ。なんとか空気を変えようと、主力休養日も志願の特打参加。普段乗る車をベンツ560SELから500SLに買い替え、本拠地での登場曲をF1でおなじみの「トゥルース」から、昨年までの「ランバダ」に戻した。