2021-12-04 06:00
【BUBKA1月号】「好きなやつだけ来りゃあいい」落合記念館という地平線
正午前、太地駅に着いた。太地町はこれでもかとクジラをアピールしていた。そこかしこに看板があり、駅には「古式捕鯨発祥の地」と書いてある。お分かりだろうが、電車の本数は少ない。1本逃がすと今日中に帰れなくなる。駅でダイヤを確認すると、記念館には2時間もいられない。慌てて駅前に停まっていたバスに乗る。
自分しか乗っていないバスからぼんやりと景色を眺めてみる。やはりそこかしこにクジラに関する像やら看板やらが点在している。やはり海とクジラと落合で成り立っている町のようだ。
10分もかからないうちに最寄りのバス停に到着した。といっても、記念館の目の前に都合よくバス停があるわけではなく、そこからまた数分歩く。
「好きなやつだけ来りゃあいい」
また落合の声が聞こえてきた。12時18分。着いた。家を出てから7時間以上が過ぎている。長年憧れていた男が築いた本丸にようやくたどり着いた。
案内を見ると、「休館日 火曜日」とある。危ない。そこまで考えていなかったが、幸いこの日は火曜日ではなかった。