【BUBKA12月号】天龍源一郎がレジェンドレスラーについて語る!ミスタープロレス交龍録 第36回「武藤敬司」
俺が最初にシングルでやったのは武藤敬司じゃなくて、グレート・ムタだったね。ウチの興行(1996年10月11日)だったんだけど、大阪府立の新記録で、入りきれないお客さん何百人かに帰ってもらったはずだよ。
試合は、ムタの出したいものを全部出さなきゃお客が満足しないから、結果的にやりたい放題やられたよね。ビールビン、マイクスタンド、本部席の机……何でも使ってきたよ(苦笑)。でも、最後は毒霧を噴くところを、口を押えて逆噴射させて、そこからラリアット、パワーボムに持っていって。ああいう面白い顛末だから、お客が満足してくれたんだと思うよ。ムタをやっつけたんだから、あの頃の天龍源一郎は強かったよ(笑)。
あの試合、ムタに何度も毒霧を噴かれたけど、そこは試合中に1回しか毒霧を噴かないザ・グレート・カブキとのプロレスに対するポリシーの違いなんだよ。カブキさんは「必殺技は勝つ時に一発だけ出せばいい」っていう昔ながらの考えだけど、今の若い人たちは「チャンスがあれば、何回でも出して、勝ちに結びつければいいじゃない」っていうね。ムタの場合も「勝ちにいくための手法なんだから、何回やってもいいじゃない」っていう考え方だと思うよ。ムタがそれをやるからこそ、客がハラハラして盛り上がるんだと思うよ。