乃木坂46奥田いろはさん、知ってもらえる“きっかけ”になれば…ギターを手に単身ストリートライブに挑戦
帰宅時間帯の柏駅に突如現れた、ギターを背負った一人の少女。駅前の一画で譜面台をセッティングし、抱えたギターのチューニングを終えると、彼女は握り締めたFのコードにチューニングのいらない正確な歌声を重ね合わせた。
先日、乃木坂46の公式YouTubeチャンネル「乃木坂配信中」にて、5期生・奥田いろはさんの弾き語り路上ライブの映像が公開された。多くの人が行き交う、日が暮れた柏駅。相棒である私物のアコースティックギターを背負って登場した彼女は、駅前の片隅で緊張の面持ちのまま路上ライブの準備に取りかかっていた。自己紹介は「奥田いろは」と直筆で書いた一枚の画用紙だけ。乃木坂46の看板に頼らず、弾き語りだけで勝負をするという覚悟がそこには表れていた。
全5曲のセットリストは、自己紹介代わりの5期生曲『絶望の一秒前』でスタート。この歌で誰かを励ましたい、そんな想いで選んだという『泣いたっていいじゃないか?』を二曲目に置いた。オーディションの課題曲で最初に覚えたという『遠回りの愛情』と、大好きな先輩・北野日奈子さんのソロ曲『忘れないといいな』の、自身の思い出ソングも差し込んだ。そして最後は、誰にとっても大切な曲で、乃木坂のことを、5期生のことを、自分のことを好きになってくれる“きっかけ”になってほしいと願いを込めて選んだという、乃木坂46の代表曲『きっかけ』を披露。観客ゼロで始まったライブも気づけば拍手が鳴り響いていた。
途中、ギターのチューニングをしながら「(私のこと)知ってましたか?」と観客に問いかけた場面があった。偶然出くわした乃木坂ファンもいたが、彼女のことを知らずに足を止めた人もいて、その人に対して「ありがとう!うれしい!」と笑顔で返していた姿が印象に残っている。奥田さんのことを知らなかった人が歌を聴いて足を止めてくれた。何も飾らずに歌とギターだけで勝負をした彼女が本当にかっこいいと感じた瞬間だった。
「奥田いろはさんってどんな子?」と聞かれたら、皆さんならどう答えるだろうか? 恐らく歌唱力の高さを一番に出す人がほとんどだと思うが、私はそれに付け加える形で声質についても一番に押し出したい。彼女の歌声はこれまでのメンバーにはないタイプの声質で、冬の澄んだ空気のように透き通っている。息継ぎの音でさえも聴き惚れてしまうくらいだ。
乃木坂46は知っていても、メンバーまでは詳しくないという人たちが世間にたくさんいる中で、今回の路上ライブのように知ってもらうきっかけを作れたのは大きい。顔と名前の両方が広まることに越したことはないが、「乃木坂の子だ!」「歌がうまい子だ!」と気づいてもらえるだけでも十分うれしいもの。奥田いろはさんの歌声は、間違いなく誰かの“きっかけ”になっていると私は感じた。