諭吉佳作/menが語る“ 自分らしい音作り”
楽曲派という言葉が死語になる前に伝えることがある!ということで始まった当連載。今回、まだ弱冠20歳にもかかわらず、多数のアーティストへの楽曲提供、自身の制作でも精力的に活動している諭吉佳作/menが登場。10代ラストEPを発売し、新たなフェーズに突入した彼女の提供曲を振り返りながら、青天井に成長していく“ 自分らしい音作り”について語ってもらった。
ガレバンで楽曲提供
――楽曲提供を軸にお話を伺いたいと思っているのですが、諭吉さんの初めての提供は963『lumen』の作詞になるのでしょうか。
諭吉佳作/men 昔すぎて記憶が曖昧になってるんですけど、そうだったと思います。あれははじめ、トラックを作ったKabanaguの方に話がいっていて、作詞を他の人に任せてもいいということだったらしく、それでKabanaguから自分に連絡が来て、という感じだったと思います。
――そういう流れだったんですね。
諭吉佳作/men 963さん側にも、もともと自分のことを知ってもらってはいたんですけど、あちらからしたら「ああ、詞は諭吉さんなんですね!」みたいな感じだったと思います。あの時は、963さん側から直接依頼が来たわけではなかったので、じつはそこまで提供するという想像はできてなかったかもしれないです。どちらかと言ったら、Kabanaguの表現を手伝う感覚だったと思います。
――ご自身の曲を作る場合と楽曲提供の場合ではどんな差があるのかなというのが気になるところで。言わば本格的に取り組むことになるのがでんぱ組.inc『形而上学的、魔法』になるわけですよね。
諭吉佳作/men とはいえ、その段階でもあまり実感なくやってました。当時まだ中3で、お仕事という感覚が全然なかったんです。依頼が来て、とんでもないことになってしまったと思ってました(笑)。当時も自分の曲と人に提供する曲で違いはあったんだろうけど、まだ意識はできてなかったです。
――改めて中学生にオファーが来るというのはすごい話だなと。『形而上学的、魔法』はどんなオファーがあったのでしょうか。
諭吉佳作/men 歌詞の内容としては、例えば学校だったり会社だったり、社会にちょっと馴染めなかったりする人に寄り添うということをテーマにいただいて。それは自分でも共感できることだったので、そこから拡げていきました。
――曲調についてはいかがでしょう。
諭吉佳作/men 特に指定があった覚えはないです。それに、まだスマホのGarageBandで作ってた時代だったので、最終的に編曲は別の方が担当されているんですが(編曲はKanadeYUK)、今とは環境も違って、より感覚的にやっていた時期でした。
――ちなみに諭吉さんがあげたものと編曲後では結構変化はありましたか?
諭吉佳作/men 正直、すごく変わりました。
――そうなんですね!どの曲を聴いてもメロディやアレンジに諭吉佳作/menとしか言いようのない個性があって、別の方が編曲で入った場合、元の形からどのくらい変わったのかが気になっていたんです。
諭吉佳作/men 『形而上学的、魔法』のときは編曲はお願いする前提でしたし、自分の技術もまったく信用してなかったので、ちょっとした伴奏があって、そこにメロディと歌詞がわかるようにボーカルが乗ってるだけのデモを作りました。だからむしろ自分のデモが編曲に影響を与えないように作っていたというか(笑)。でも、メロディから汲み取っていただくものは何かしらあったのかもしれないです。その後の『もしもし、インターネット』(編曲は諭吉と釣俊輔の共同)に関しては、MacBookを使い始めてからの曲なので、元の編曲の感じが結構残っているかもしれないです。
――メロディにすごく作家性があると思うのですが、聴いたことのないものにしようと考えたりして書かれているのでしょうか。それとも自然に書いたらああいう形になるのでしょうか。
諭吉佳作/men どちらかと言ったら自然にしていたらこう、という方だと思うんですけど、シンプルなメロディで良い曲って世の中にたくさんあると思うんです。それでひとつ思うのは、シンプルにすると何かに似そうで怖いと思ってるんだなと最近気づいたんです。
――ああ、なるほど。
諭吉佳作/men すごく気にして作っているわけではないけど、それはちょっとあるなと。あとは、メロディを先に作ることが多いんですけど、歌詞を載せた時に、言葉を面白く発音できるようにしたいと思っていて。
――発音ですか。
諭吉佳作/men あまりに平坦で単調なメロディだったり、リズムがそこまで細かくなかったりすると、例えば「あいうえお」と歌詞を歌いたい時に、「あーいーうーえーおー」とはっきり歌うことになるんですよね。でも、ちょっと複雑で起伏のあるリズムにすると「あぃうー」と繋げたりすることができるようになってきて。そういう発語の自然さみたいなのは結構意識しています。それがメロディ作りにも影響しているのかもしれないです。
――すごく納得のいくお話です。逆に、シンプルで力強い歌詞やメロディの作品を聴いてみたいなとも思いました。
諭吉佳作/men それこそ提供でやれたらいいかもしれないですよね。自分が自分の曲でズバッと言い切るような曲を作ると恥ずかしくなっちゃうんですけど、それを意志のあるアイドルの方に歌ってもらえたらかっこいいかもしれないです。
取材・文/南波一海
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諭吉佳作/men(ゆきちかさく/めん)|2003年生まれ。2018年、中学生の時に出場した「未確認フェスティバル」で審査員特別賞を受賞。でんぱ組.inc『形而上学的、魔法』『もしもし、インターネット』、坂元裕二朗読劇2020『忘れえぬ、忘れえぬ』の主題歌およびサウンドトラックなどを提供。音楽活動以外にも、執筆活動やイラストレーションなどクリエイティブの幅は多岐にわたる。20歳を目前に制作された、10代ラストなるEP『・archive:EIEN19』が現在発売中。
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