Netflixドラマ『サンクチュアリ 聖域』撮影舞台裏を人気スタイリストが語る

スタイリスト伊賀大介氏がNetflixドラマ「サンクチュアリ 聖域」を語る

5月4日からNetflixで配信が始まるやいなや中毒者続出。「相撲」という若い世代には馴染みの薄いジャンルが題材のドラマ『サンクチュアリ 聖域』が、目下世間を賑わせている。今回、スタイリストとして作品に関わった本誌おなじみの伊賀大介氏に、稽古から撮影まで約2年半費やされたという作品、そして登場人物のスタイリングについて聞いた。

相撲映画の難しさ

──伊賀さんはどういう経緯で『サンクチュアリ 聖域』にスタイリストとして参加されることになったんですか?

伊賀大介 監督の江口カンさんとは、CMの仕事で知り合ったんですよ。カンさんの作るCMってめちゃくちゃ男っぽい感じで、僕、すごい好きで。カンさんがやった『ガチ☆星』って競輪の作品にコメントを出させてもらったり、その後には『ザ・ファブル』をやって。そういう感じでカンさんと繋がりがあって、「『サンクチュアリ』みたいなヤンキー感、『ロッキー』的なドラマなら伊賀だろう」という感じで(笑)、話が来たのかなと思います。監督とは、世界基準を目指すとなると『クリード』シリーズや『ザ・ファイター』みたいな良質な格闘人間ドラマがあるので、そのレベルに行きたいよねっていう話をしたりもしましたね。

──相撲をテーマにして、ヤンキーを主人公に、ロッキーのような熱いドラマを描くという作品の構想を聞いたときはどう思われましたか?

伊賀大介 面白そうだけど、撮影が超大変だろうな、と。案の定、大変だったんですけど(笑)。ボクシング映画がなぜいっぱいあるかって言うと、試合シーンでパンチが当たってなくても当ててるように見せられるからって理由があって、撮影しやすいからだと思うんですよ。

──カメラのアングルやカット割りなどでパンチが当たってるように見せられますよね。

伊賀大介 でも相撲は肉体と肉体の本気のぶつかり合いがないと成立しない。フワッとした立ち合いをすると、逆に怪我をしちゃうんで。しかも、撮影だと「このテイクもいいけど、もうワンカット行こう!」ということも起きるので、1カットのために何十回もやらないといけないこともある。大変そうでしたね。

──YouTubeにアップされた公式映像で、主演の一ノ瀬ワタルさんが裸でアクションすることの大変さも語っていました。服を着ていたら中に体を守るパッドを仕込めますが、裸だとそれができませんもんね。

伊賀大介 それから相撲って、マジで体がデカくないと意味がなくて。だから役者は本当に飯をめちゃくちゃ食って、稽古して。

──体作りにも時間をかけて、稽古と撮影を含めて2年半かかったそうですね。

伊賀大介 日本の映像作品としては超絶異例のことだと思います。もちろん、コロナでの延期とかもあったんですけど、それでも相当長いですね。

──長期間の準備と撮影が可能になったのは、やっぱりNetflix製作だからでしょうか?

伊賀大介 それもあると思いますし、脚本がすごい力強いんで、「ここまで撮っておいて止めるんですか?」みたいなことにはなるだろうなと感じてました。

服とともに成長

──作品にそれだけの力があったってことですね。江口監督から伊賀さんにはどういうリクエストがあったんですか?

伊賀大介 格好つける感じじゃなくて、熱い男たちの話だから、もう大いにやってくれみたいな感じでしたね。だから、余貴美子さん(主人公の母親を演じた)とかはもうやりたい放題(笑)。今回に関してはスタイリッシュにやるというより、話のリアリズムに寄り添ったっていうか。「こういうヤツいるよな」っていう感じで小さいところから本当にしていかないと、フィクションという大きな嘘は描けない。染谷将太君(主人公の同期の力士役)のTシャツのダサい感じとか絶妙で、自分でも気に入っているところです。そういうふうに余計なことはあんまり入れない感じにすると、余さんとかは思いっきりぶっ飛ばさせていただけるんで(笑)。

──奔放すぎる母親のえげつない感じが服装に出ていました。伊賀さんとしても遠慮せずにスタイリングができたんですね。

伊賀大介 余さんも「もっと来い」って感じだったんで、肌の露出を気にして「ここを隠したらいいんじゃないか」とかやるのは逆に失礼だと思って振り切れましたね。

──伊賀さんのお仕事としては、クランクイン前に衣装を考えたり選んだり、役者さんとの衣装合わせをしたりすることがメインになるんですか?

伊賀大介 そこが9割みたいなところはありますね。「自分はこういう服を着て、こういうことをやるんだ」っていうのを服を通じて俳優部に理解してもらうっていうのが、僕の仕事です。

──服でキャラクターを描くんですね。

伊賀大介 主人公の猿桜は、肉体の変化と最後に髷を結うことで成長を表現してるから、洋服では成長を表現しにくいんですよ。服での成長の表現がわかりやすいのは、忽那汐里さんの役ですね(主人公を取材する新聞記者を演じている)。最初はローヒールを履いていて、仕事ができるようになるとPRADAのピンヒールを履くようになる。最後のほうは私服で、猿桜がいる相撲部屋に来るようになる。これは、仕事の時間以外のプライベートでも彼らと積極的に関わるようになったということの表現です。服の変化で、彼女がどんどん鎧を解いていって相撲が好きになっていることを表しました。

──化粧廻しのデザインも担当されたそうですね。

伊賀大介 調べると化粧廻しって価格が何百万円とか当たり前で、制作期間も半年とかなんですよ。昔は龍とか麒麟とか日本画の範疇だったのが、Macが導入されて、いきなり図案の幅が広がるんです。ロボットアニメみたいなのだったり、琴欧洲の「ブルガリアヨーグルト」とかもあったじゃないですか。助監督さんがいっぱい資料を見せてくれたんで、そういうのを取り入れて、後輩の柿畑(辰伍)くんに手伝ってもらって作業しました。

──撮影現場には、どの程度行かれたんですか?

伊賀大介 ちょこちょこって感じですね。両国国技館のセットにも行きましたよ。

──国技館の映像はCGも含めて、すごいクオリティでしたね。「本物は使えないだろうし、どうやって撮ったんだろう?」と思ってました。

伊賀大介 僕もそこは懸案だったんですよ。プロレス・ボクシングヲタとして何十回も国技館に行ってるから、偉そうなことは言えないけど、大丈夫かな?って。でも、ちゃんとできあがっていて。枡席の4段目ぐらいまでセットが作ってあって、その後ろはグリーン(合成用のグリーンバック)なんです。

――まだまだ続くインタビューは発売中の「BUBKA7月号」で

取材・文=武富元太郎

伊賀大介=いが・だいすけ|1977年、西新宿生まれ。96年より熊谷隆志氏に師事後、22才でスタイリストとしての活動開始。雑誌、広告、音楽家、映画、演劇、その他諸々、幅広いフィールドで活躍中。近年関わった作品は、映画『ちひろさん』、『百花』、『シン・ウルトラマン』、『余命10年』など。

BUBKA(ブブカ) コラムパック 2023年7月号 [雑誌] Kindle版
Amazonで購入

Amazon Kindle
楽天Kobo
Apple Books
紀伊國屋Kinoppy
BOOK☆WALKER
honto
セブンネットショッピング
DMM
ebookjapan
ブックパス
Reader Store
COCORO BOOKS
コミックシーモア
ブックライブ
dブック
ヨドバシ.com

その他、電子書籍サイトにて配信!

桃月なしこ表紙:BUBKA (ブブカ) 2023年 7月号
Amazonで購入
セブンネットショッピングで購入(ポストカード3種からランダム1枚)

関連記事

BUBKA RANKING17:30更新

  • 連載・コラム
  • 総合
  1. すべての球団は消耗品である「#3 1999年の野村阪神編」byプロ野球死亡遊戯
  2. プロ野球・俺たちが忘れられない助っ人外国人たち…伊賀大介×中溝康隆が語る
  3. 宮戸優光「前田さんとの関係が、第三者の焚きつけのようなかたちで壊されてしまったのは、悲しいことですよ」【UWF】
  4. DABO「Platinum Tongue」かく語りき…Rの異常な愛情 番外編
  5. 乃木坂46、10年の歴史…3択クイズで振り返る
  6. 「『ラストアイドル』とは何だったのか?」ほか BUBKAコラムパック2022年5月号配信
  7. 【BUBKA WEB限定カットあり】私立恵比寿中学・星名美怜、昨年開催された「大学芸会」を振り返る
  8. 渡辺正行「テレビに出る前の原石を、たくさん見ることができたのは幸せですよね」
  9. SKE48須田亜香里×山本昌「笑顔にスランプはない!」<BUBKAアーカイブ特別編>
  10. 吉田豪「What’s 豪ing on」Vol.10 岸田繁、すべての音は泥団子イズムに通ず
  1. “仮面ライダーガヴ”新ヒロイン宮部のぞみ、早くも初グラビアを披露
  2. 新人グラドル浅倉れいか、女子高校生を思わせる初々しさと豊満美ボディーのギャップ
  3. NEO妹系グラドル榑林里奈、えちえちナースに扮してハードグラビアの本領発揮
  4. “仮面ライダーガッチャード”で話題…宮原華音、約1年ぶり『週プレ』グラビアに登場
  5. 「ミスENTAME2024」江里口さよ、家庭教師から看護師、グラビアアイドル本人役まで8キャラクターで魅せる
  6. “グラマラスビューティー”藤川めい、手ブラなど過去最大の露出にチャレンジ
  7. “仮面ライダーガッチャード”でも話題…松本麗世『週プレ』表紙&巻頭グラビアを飾る
  8. “仮面ライダービルド”で話題となった滝裕可里、6年ぶりにグラビアに帰還
  9. “仮面ライダーギーツ”で注目…小貫莉奈『週プレ』グラビア4度目の登場
  10. 元ミニスカポリス鳥住奈央、はち切れんばかりのイケない管理人さんを熱演…大人の魅力で誘惑