“ばってん少女隊”の最新AL『九祭』を紐解く――ケンモチヒデフミの“ただのご当地ソング”では終わらない音作り
トルコのクラブミュージック
杉本 『YOIMIYA』は、ケンモチさんクリエイティヴにばってん少女隊がどれくらい寄せられるか、キラッと彼女たちの要素を出せるか、みたいなテーマだったと思うんですけど、2曲目の『さがしもの』に関しては、さらなるネクストステージを目指していて。
――まさかのケルト音楽で、『YOIMIYA』とは全然違うアプローチだったのでびっくりしました。
ケンモチ あの曲に関しては、杉本さんが「これこれこういう感じでやったら面白いと思うんですよね」というのがありました。
杉本 変にありすぎたんですよね。
ケンモチ 『YOIMIYA』の時は、祭りのなかでもハレとケで言うとケの方だったので、ちょっとアッパーな、ハレの祭りの方をお願いしますということで。『九祭』という、九州の一つひとつの県にフォーカスを当てたアルバムにしたいということで、僕は佐賀の曲をお願いします、と。いろんな名物とかを2人で話していて、バルーンフェスティバル(佐賀インターナショナルバルーンフェスタ)というのが佐賀でめちゃくちゃ有名なので、いいですね、となって。そこから話が急に飛んで、「バルーンと言ったらトルコの……」って。
――(笑)。
ケンモチ 急に佐賀からトルコに行って、トルコのクラブミュージックで作りましょうって。僕も全然想像つかなくて。音楽ジャンルの名前があるんですよね(※トルコ北部のポントス地方を起源とする民俗舞踊「ホロン」)。
――それはフィドルを使う音楽でもなく?
杉本 もっと、どうするんだこれはという楽器で。
ケンモチ もっと野生味溢れる高速ダンスミュージックがあるんですけど、それで一曲お願いしますと言っていただいて。その音源を色々探し回って、傾向を掴んだんですけど、小さいバイオリンみたいなもの(※バイオリンのルーツのひとつとされる擦弦楽器「ケメンチェ」)の音色があまりに特徴的すぎて、生でこれを弾ける人がいない限り、この曲を作るのは無理だな、となったんです。このお題は難しいので、民俗音楽だとケルトの音楽が近そうなので、そっちで、歌詞の内容は佐賀のバルーンフェスティバルでやってみてもいいですか、ということで……。
杉本 結果的にグローバルミュージックに(笑)。
――連想ゲームみたいな感じだったんですね。
杉本 大学時代に佐賀出身の友達がいて。バルーンフェスの前に学校でもそわそわしていて、「どうしたの?」って聞いたら、「バルーンがあるのよ」「佐賀の人はみんなバルーンを楽しみにしてるのよ」ってことだったんです。バルーンについて語っていたのが脳裏に焼き付いていて、九州のアイドルグループの担当をすることになったから、いつかはこのネタを使いたいなってずっと思ってたんです。ケンモチさんは民俗音楽とか、色んなビートを研究されているんですよね。それ(ホロン)を料理できるのはケンモチさんしかいないだろうなと思って、お願いしました。
ケンモチ 傾向を掴んだんですけど、現地の音階とか節回しがあるじゃないですか。それを再現するのがかなり難しくて。
杉本 私もケンモチさんをすごい悩ませてしまってなと反省して、その後、別のワールドミュージックの方向性もありだと思いますので、と言って、その2~3日後くらいにケルティックな音楽が出てきたんです。それがめちゃくちゃよくて、爆上がりしました。