R-指定(Creepy Nuts)『真・スチャダラパー論(中編)』2作目にしてより深く、客観的な境地に
Creepy NutsのMCとして活躍するR-指定によるイベント『Rの異常な愛情』。単行本第二弾も刊行され、シーズン3の幕開けとなった「スチャダラパー」回の中編です。ブレイクと引き換えに、「オモロラップ」「可愛い3人組」といったレッテルを貼られざるを得なかった彼らが向かった先は──?
避けられない自己言及
――中編では2ndアルバム『タワーリングナンセンス』の話に入りましょう。前編で「自分たちと重なる部分が多かった」と話していたこのアルバムですが、それはどういった意味で?
R-指定 「自己言及的」な部分ですね。ZORNさんも“Lost”で〈今が一番幸せかと聞いたら 『My life』の頃だと言った なぁこれが幸せか?〉と奥さんに言われたことを書いてますけど、自分の言葉で、自分のリアルをドキュメントしていくアーティストにとって、自己言及は避けられへんトピックなんかなと。それはもちろん俺らもそうで。スチャに影響を与えたDe La Soulも、1stアルバム『3FEET HIGH AND RISING』に続く2ndのタイトルは『De La Soul Is Dead』、つまり「俺たち死んだぜ」と言ってて。
――1stでのアプローチをリリックの中で否定したり、スキットはデラを聴いてる子が虐められて、最終的にはデラのアルバムをゴミ箱に投げ捨てるという、ある意味では自己言及であり、自己破壊的な構成で。
R-指定 そういう我が身を振り返るような部分は『タワーリングナンセンス』とも通じると思うんですが、それは意図的なんですかね?
――どちらも91年リリースで、『~Dead』が5月、『タワーリングナンセンス』が10月リリースだから、その影響下にあるかも知れないし、ラップアーティストの2枚目は自己言及的になる部分があるから、それが自然とリンクしたのかもね。これはインタビューの経験上だけど、「1stアルバムはそれまでの人生の蓄積」「2ndアルバムは1st以降の経験と気付き」という傾向を感じることが多いし、そこに自己言及的な側面が加わると、2ndではより内省的な部分が落とし込まれがちになるよね。
R-指定 そしてアーティストとして活動する中で、「変わってしまう自分」と「変わってしまって良いのか?」という自問自答の繰り返しの中で、病んでいくし、整合性が取れなくなっていくと、あっちのロックスターよろしく、ドラッグや自己破壊の方向に進んでしまう。俺もリスナーとして聴いてたときは「そんなもんか」って思ってたんですけど、実際ここ3、4年で……。
――おいおい……(笑)。
R-指定 「わからなくないよ、その気持ち」っていう(笑)。やっぱり自分が自分でなくなっていく感覚、自分が自分の手から離れていく感覚を感じるときはあるんですよ。携帯のメモを見たら「今、どこで生きているんですか?」っていう文章だけ入ってたことがあって。
――心配過ぎる(笑)!
R-指定 何年か前ですけどね。そこまでスチャが行くタイプかはわからないんですけど、この『タワーリングナンセンス』は結構そっちのモードだったのかなと。
――RくんやZORNくん、エミネムもそうだけど、ソロMCは自己言及したときに、より「自分の内部」に入り込みすぎる傾向があるし、それがアーティストとしての魅力にも繋がる部分で。一方、スチャは3人でリリックを書くグループで、例えばANIさんのリリックはANIさんだけが書くんじゃなくて、BoseさんやSHINCOさんもそこに手を加える。だから結果的にリリックに「社会」が生まれるし、このアルバムも「スチャダラパーとしての人格」に対して、自己言及するという形になっているよね。
R-指定 “0718 アニ ソロ”もみんなで書いてるんですか?
――「ANIというキャラクターの歌詞」をみんなで考えたと話してたね。だから「R‐指定」と「野上恭平」は限りなくイコールだけど、スチャは「Bose=光嶋誠」「ANI=松本洋平」ではない。
R-指定 なるほどな~。じゃあ早速アルバムを聴いてみましょうか。“ENTRANCE”で「渡辺です」という声が入ってますけど、これは渡辺満里奈さん?
――“ゲームボーイズ”のMVに渡辺満里奈が出てくるからそう思われがちだけど、実は全然関係なくて、タケイグッドマンさんの奥さんなんだって。
R-指定 キョンキョンの前科があるから、そんぐらいのことやってくるんかなって思ってたけど、違う渡辺?
――偽渡辺。
R-指定 何やねんそれ!(笑)
――本物の渡辺が誰なんだっていう話だけど(笑)。ブックレットでも「1.渡辺は普通の女の子」とエクスキューズしてる。
R-指定 そして「2.曲飛ばしは聞かないもいっしょ」。つまり全部聞け、と。で、「3.早合点はしない」。ここ大事ですね。散々一枚目で早合点されたことが伺えます。Creepy Nutsもいろいろ括られるんですよ。
――「陰キャラのカリスマ」的な。
R-指定 そうそう。世に出されるということは「括られる」「ラベリングされる」なのもわかります。そして、それに対して「違う」と自分でレッテルを剥がしていけるのも、またヒップホップの良いところなんですけど、それを2枚目にしてやってるのが『タワーリングナンセンス』のキーワードだと思いますね。そして、タイトル曲の“タワーリングナンセンス”こそ、そういったラベリングに対して異議を申し立ててる曲で。「オモロラップ」と自分たちが言われることに対しても、自己言及している。
――そういったラベリングに飽き飽きしてることが如実に現れてるし、〈スチャダラっぽく頼みますわ 「ふざけすぎダド」 「真面目過ぎない?」それってスチャダラっぽくなくない?」〉という部分に、スチャが当時置かれてた状況がよく現れてるよね。
R-指定 本質にたどり着かれずに、上澄みだけで受け取られることへの忌避感をめちゃくちゃ感じますね。
――一方で「っぽく」というのは、「一番キャッチされる」部分でもあるんだよね。
R-指定 だからむずいんですよね。「っぽく」がないと売れないですから。「っぽく」「っぽい」って言われるようになって、おそらく初めて「売れた」とされる。
――世間的な最大公約数のイメージが出来たということでもあるし。
R-指定 だから避けようがないもんではあると思うんです。だけど、その「っぽく」の奥の方にあった、ホンマにスチャの言いたいところや、逆に「毒っ気」の部分だけが取り出されて、真に言いたかったメッセージっていうのは取り上げられへんという。それが〈そうか 歌詩なんて誰も聞いちゃいねぇ〉という歌詞にあるような「もどかしさ」に繋がるんだと思います。ただ、それをダイレクトではなく、皮肉っぽく伝えるもの、スチャならではだと思うし、以降の文系ラッパーはそこに影響を受けてる気がしますね。“スチャダランゲージ~質問 アレは何だ~”も、シニカルな部分があるんですけど、一方で会話劇というか、落とし噺として成立させることで、パッケージとしては「安心安全の楽しいスチャ」になってる。
――インタビューの続きは、発売中の「BUBKA3月号」、もしくは「BUBKA3月号コラムパック」にて!
聞き手・構成/ 高木“JET”晋一郎
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