クリープハイプ尾崎世界観、「生きづらさ」ゆえに感じる「生きやすさ」…吉田豪による新連載スタート

――バンドはその戦いから降りられないからたいへんですよね。ボクは職業として別ジャンルというか、売れてる本とは違う枠で活動しているから、嫉妬は全然なくて。

尾崎世界観 まったくですか?本屋に行っても?

――はい、本屋は楽しく見れてます。

尾崎世界観 うらやましいです。でも、そこから降りたいとも思わないのが難しいところで。そこにはいたいんですよ。タワレコにフラットに行けないのはもう早々にあきらめていたんですけど、あんなに好きだった本屋が楽しくなくなったのはやっぱり悲しいです。

――タワレコはあきらめちゃったんですね。

尾崎世界観 そうですね。あのタワレコの手書きのポップ、わかるんですよ。

――熱量の違いが(笑)。

尾崎世界観 手書きってめちゃくちゃ出るじゃないですか。まだHMVみたいに打ち込んでいたら文字はフラットなんですけど。気持ちが乗ってない手書きのポップって、ホントにキツいですからね。もうメジャーデビューして10年も経つと、タワーレコードで働いている方は若めの方が多いので、人も変わっていくんですよ。タワレコから音楽業界の上を目指して就職したりするので。デビュー当時はまだファンがいっぱいいてくれたんですけど、いまはもっと若い世代のバンドのファンに変わっているから、そうなると……。

――仕事で推してる感じが見えちゃう。

尾崎世界観 すごいんですよ。やけにデカくてスカスカの、バンド名だけが手書きのポップとか。渋谷のタワレコが特にすごいんですけど、あれだったらもう無いほうがいいです。

――ダハハハハ!そこまでなんだ(笑)。

尾崎世界観 逆に何もないほうが目立つじゃないですか。あれが恥ずかしくて。行きたくないからいつも逃げてるんですけど、事務所のスタッフさんから送られてくるんですよ、「タワーレコードを周ってきましたよ」って。

――通常、発売日はみなさん周りますよね。

尾崎世界観 そうそう、それで送ってくれて。やっぱり渋谷店だけスッカスカで。バンド名だってこっちが用意したポップに書いてあるのに、わざわざ手書きでそんなの入れなくても。横の棚とかはきれいにいろんな色で書いてあって。そういうのをいまだに感じますね。もっと実力があればこんなことにはならないんでしょうけど。

――まだまだ終わらないインタビューの続きは発売中の「BUBKA1月号」で!

取材・文/吉田豪

尾崎世界観|1984年生まれ。東京都出身。2001年にクリープハイプを結成し、ボーカル・ギターを務め、2012年にアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。2016年に初の小説作品『祐介』を発表。2020年の『母影』は第164回芥川龍之介賞の候補作となった。

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