R-指定(Creepy Nuts)「Rの異常な愛情 番外編」再確認されたレジェンドたちの偉業
日本一のフリースタイル巧者かつ、数多の楽曲をリリースし続けているR-指定。今回は、アルバム『アンサンブル・プレイ』の反響や、大忙しだったフェスイベント出演の熱気冷めやらぬ中、「BATTLE SUMMIT」や「フリースタイルリーグ」など、にわかに新展開を迎えているフリースタイルバトルなどについて語ってもらいました!
脱「俺の話」
――いきなり別メディアの話になりますが、音楽ナタリーでCreepy Nuts『アンサンブル・プレイ』のインタビューで、アルバム収録曲“フロント9番”について書き手のRくんと、インタビュー高木の解釈が違うという話が出てきたじゃない?
R-指定 はいはい。
――アルバム全体がフィクション性の強い作品だから、そもそもそういう多元的解釈を許す作品だと思うんだけど、Twitterでの感想を読むと、本当に“フロント9番”の解釈が人それぞれで面白いね。
R-指定 そうですね。それまでの『Case』みたいな「俺の話」「俺らの話」の作品は、違う解釈をされれば「いや、これはこういうことです」と再解説できたんですけど、『アンサンブル・プレイ』は全編フィクションで俺の話ではないから、「あなたの解釈も、他の解釈もみんな正解です」という感じなんですよね。インタビューでの俺の解説や制作の意図を読んで「自分の解釈とは違う」「そういうことやったんや」みたいな意見もあると思うけど、リスナーさんが全然最初に感じてもらった感覚でいいし、逆に解釈がいろいろの方が面白いですね。
――それが今回のアルバムの強みだと思うし、Creepy Nutsの「ポップス」としての新しい挑戦だよね。
R-指定 歌謡曲も、結構みんな勝手に自分のストーリーをそこに投影するじゃないですか。“フロント9番”も「あれ、私の歌ですよね」みたいに言われたり(笑)。
――それだけ曲の「のりしろ」が大きいということだよね。
R-指定 それで良いと思うんです。ナタリーでも話しましたけど、“フロント9番”は、「もし俺がめちゃくちゃ遊び人の女性やったらどう思うやろうなぁ」というイメージをもとにフィクションで書いていったんですよね。だから、主人公の女性に対して、「かわいそう」とか「感情移入して辛くなった」という意見が結構多いんだけど、俺としては超ドライな女性として書いてて。男の方が「待ってくれよ!」となってるのに、それを「めんどくさ」と一蹴してるイメージなんですけど、何の因果か怨念か(笑)、逆のストーリーを思い浮かべる人もおって。
――俺は「最後は男の顔を立ててあげようとしてる」みたいな、情の深い女性をイメージしたし、Twitterでは「女性が惚れてるんだけど、本気にならないように自分に言い聞かせてる健気な女性」という意見もあって。
R-指定 なるほどな~。“フロント9番”のリリックは、自分の願望の部分が結構あると思うんですよね。もし自分が遊び人やったら、自分がそういう女性やった場合、それこそ“阿婆擦れ”で書いたような女性像、相手を無碍にしても遊び回れる風になりたかったっていう願望込みで、リリックにしてる部分があると思う。ということは「そうはなれない人間」の歌詞なんやなぁって(笑)。
――「できないからこそ」「願望だからこそ」書ける歌詞というか。
R-指定 そういう悲しみみたいなのが溢れ出てはいるんかなぁって思いますね(笑)。そして結果、そういうふうに強がってる歌詞にはなってるかもしれない。
――だから「フィクション」ではあるけど、そういった端々に「自意識」が垣間見られるのが『アンサンブル・プレイ』の特徴でもあるよね。同じく“友人A”もフィクション的な物語性の強い曲で。
R-指定 あの曲も各々で解釈してもらって大丈夫なんですけど、あれはめちゃくちゃ悲しい曲だと思う人もいますね。
――確かにコミカルな曲ではあるけど、我が身に置き換えたら……。
R-指定 主人公の完全敗北のストーリーですからね。世界を呪って唾吐きかけるけど、こっちの認識と自意識が歪んでいるだけという。俺がそういう思いを散々生々しく経験したから書ける曲でもあると思うんですけど。
――……さいたまスーパーアリーナにCreepy Nutsとして立てることになって良かったよ(笑)。そういえば“フロント9番”では数字を、“友人A”ではアルファベットを歌詞に織り込んでいて。その意味でもめちゃくちゃテクニカルなんだけど、“友人A”のアルファベット使いは、途中アホすぎて……(笑)。
R-指定 ハハハ。でもあの主人公はあれぐらい直球でアホなこと考えると思うんで、コンプラを気にせずいこうと(笑)。
――それでいうと、The Beatnutsに“Spelling Beatnuts”っていう、グループの頭文字をもとに単語を並べていく曲があるんだよね。でも、Bはbastard、Aはass、Tはturn around(尻を向けろ)みたいに、全部下ネタで。だから「Nuts」と名のつくグループがスペルで遊ぶと、そういう指向性が生まれるのかなと。
R-指定 たしかに(笑)。それに一番近いのが“メジャーデビュー指南”で、あの曲でもCreepy NutsのCから頭文字を歌詞に織り交ぜていってるんですけど、結局Sで「S級素人in the building」っていう感じで下ネタやから(笑)。
――ブレないな~。ちなみに“Spelling Beatnuts”はBlow flyの“Sesame Street”という曲が元ネタで、ビートは超最高、歌詞は超最低な曲。Blowflyはファンク版の「随喜と真田2.0」みたいなアーティストなのでオススメです。
R-指定 そんなアーティストが(笑)。
ライミング誠意大将軍
――音楽ページらしい話を(笑)。そしてCreepy Nutsは今月も大忙しでしたね。「Sonic Mania」のメインステージ大トリ、 立川アリーナでの「SPACE SHOWER TV x J:COM Creepy Nuts Precious Live」、そしてリリースライブ『Creepy Nuts「アンサンブル・プレイ」Release Special Live』などなど、挙げればキリがない……んだけど、「Precious Live」のMCでガンガンに下ネタを炸裂させるのは、ライブレポーターとしては「勘弁してくれ!」と頭抱えた。あのMCをそのまま書いたら俺がスペシャとJ:COM出禁になるよ(笑)。
R-指定 感覚がバグってましたね~(笑)。フェスやと時間も短いし、ライブできる喜びや、いろんなハードル乗り越えて会場に来てくれてるお客さんというストーリーがあるから、しゃべることもそこにフォーカスできるんですよね。だからそういう脳になってたんですけど、いざ自分たちのワンマンとなったら、「あれ……いままで自分らのワンマンって何しゃべってきたやろう?」と。それでいきなり雑談になったらあのザマというか(笑)。
――ふたりともオフィシャルレポートでは使えない英単語ばかり嬉々として使ってて、英語教育の敗北を感じました(笑)。
R-指定 ちょっとはいいこと言ってませんでした?
――めちゃくちゃ「Precious」って言葉を連呼してて、使い慣れてない言葉だということは伝わった(笑)。
R-指定 いやいや。言わんと「Precious」にはならへんので。むしろ連呼することで「これがPreciousなんや!」ということを伝えたかったんですよね。
――それを世の中では洗脳という(笑)。でも久々の「聖徳太子フリースタイル」とか、ラストの“土産話”など、たしかに特別感はありましたね。
R-指定 ファンクラブイベントでも「聖徳太子フリースタイル」をやったんですよね。それでビートも松永さんに新しいものにしてもらったんですけど、ああいう今っぽいビートでフリースタイルをしたときに「まだまだやな自分」と思うっすね。
――インタビューの続きは発売中の「BUBKA11月号」で!
取材·文/高木“JET”晋一郎
R-指定|大阪府出身のラッパー。高1から梅田サイファーに通いバトルやライブ活動を開始。2012年からMCバトル全国大会UMBで3連覇を成し遂げ、『フリースタイルダンジョン』の初代モンスター、そして2代目ラスボスを務める。現在はDJ松永とCreepy Nutsとして活動しながら、バラエティ番組やテレビドラマなど多方面でも活躍中。
【BUBKA(ブブカ) コラムパック 2022年11月号 [雑誌] Kindle版】
▼Amazonで購入
▼ 楽天Kobo
▼ honto
▼ DMM
▼ ブックパス
▼ コミックシーモア
▼ ブックライブ
▼ dブック
▼ ヨドバシ.com
その他、電子書籍サイトにて配信!