2022-10-03 06:10

ずん飯尾和樹 “感心するもの=師匠” 最新著書刊行記念インタビュー

「BUBKA11月号」に飯尾和樹(ずん)氏が登場
「BUBKA11月号」に飯尾和樹(ずん)氏が登場

ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第47回は、『師匠! いらしたんですか』の著者である芸人・飯尾和樹(ずん)氏が登場。感心してしまうものを「師匠」と呼び、独自の視点で慈しんでしまう、そのルーツは何なのか!? 自由をこよなく愛する飯尾ワールド。その深淵をちょっとだけ覗かせていただいた。

八百万の「師匠」

――『師匠!いらしたんですか』は書き下ろし……というわけではないんですよね?

飯尾和樹 もともと『日刊ゲンダイ』さんで、コラムを書かせていただいていたんです。それを、PARCOさんから一冊の本としてまとめませんか? と声を掛けていただいたんですよね。コラム自体は、4年ほど前に書いていたものですから、古いネタも結構ありまして。それこそ、4年前のワールドカップのことを書いていたり。今回一冊にまとめるにあたって、眠っていたものを引っ張り出したり、書き直したりしましたねぇ。

――当時のコラムでも、飯尾さんが感心するもの=師匠というコンセプトで書かれていたんですか?

飯尾和樹 そうですそうです。僕は、感心するものを「師匠」と呼んでいて。この世界に入ってから謙虚になったのかなって思いますね(笑)。感心してしまう人って、年齢関係ないんですよ。ロケで地方に行っても、「この人すごいな」っていう人がたくさんいたりする。とある地方に行ったとき、小学1年生くらいの子どもが滑り台でジュース片手に滑っていたんですよ。そのとき、ジュースを滑り台にこぼしてしまった。放っておいてもいいと思うんですけど、その子どもはわざわざ水を汲んできて、滑り台に流し始めた……これは師匠だなって思いましたね。

――年齢や性差、生き物は問わず(笑)。

飯尾和樹 問いませんね~。僕は高いところが苦手なんで、バンジージャンプとかスカイダイビングがNG。屋外の喫煙所でタバコを吸っていると、アリがコンクリートの縁のところを一生懸命垂直に登ってきた。それを見たとき、「あれ?」と。もしかしてアリってまったく恐怖心がない!? 人間に置き換えると、30階建てぐらいの高層ビルをよじ登っているわけじゃないですか。それを恐れることなく登っていくんですから、もう師匠ですよ。

――アリも師匠たりえると。

飯尾和樹 そういうことって世の中にたくさんある。僕の知り合いがゴルフが好きということで石川遼選手の試合を見に行ったんですね。偶然、彼はトイレで石川選手とばったり会ったというんです。すると、石川選手は手を洗った後、洗面台にはねた水を丁寧に拭いて出て行った。知り合いはいたく感動したそうで……以来、僕も真似してます。

――(笑)。大谷翔平選手が、ゴミを拾う行為にも通じる“師匠なアクション”ですね。

飯尾和樹 ゴミを拾う――。これね、ウド(鈴木)もやってました。ウドもゴミを拾うのが好きなんですよ。最初に出会ったとき、彼は高倉健さんみたいな髪型をしていた。何カッコつけてんだろうって思いました。しばらくして、彼の部屋に遊びに行ったら高倉健さんのポスターが貼ってあったんですよ。人っていうのは、自分にないものにあこがれるんだなぁ、 かわいそうだな~って思いましたよね。でも、キレイ好きで、心が純粋な男なんです。昔、ウドと待ち合わせをしていたとき、彼は倒れている自転車を直そうと思ったんでしょうね。待ち合わせ場所の反対側から眺めていると、3台ぐらいしか倒れていなかった自転車が、ウドの好意で全部ひっくり返ってました(笑)。でも、そういうことができることが師匠なんですよ。

――本書には、たくさんの師匠が紹介されていますが、一つの傾向として、主役ではないけれどなくてはならない……いわゆる縁の下の力持ち的なものを慈しむ傾向があるのかなという気がしました。

飯尾和樹 それはありますねぇ。例えば、このBUBKAの表紙。アイドルの方が登場されていますけど、背景に菜の花だったり、綺麗な風景が広がっていたりすると、一層アイドルの方が映えるじゃないですか。アイドルの方は、自分一人でも勝負ができるステーキのような存在です。でも、その隣にウィンナーやポテト、にんじんなんかがあったらよりステーキが美味しそうに見える。アイドル雑誌の表紙一つとっても、実はポテトのような存在がいるんだよって伝えたいですね。

――金言ですね(笑)。

飯尾和樹 テイクアウトだったらステーキだけで十分。自宅に戻ってきて好きなように盛り付けることができますから。でも、お店でお皿に運ばれてくるとなると、ステーキだけではやっぱりちょっとさびしい。

――飯尾さんは、昔からそういった視点をお持ちだったんですか?

飯尾和樹 今でこそ僕は身長が172センチくらいありますけど、中1のときは139.4センチでした。はっきりと覚えていて、140いかないんだって思ったものです。我々の時代は、やっぱり野球小僧が多くて、僕も例に漏れず野球が好きだった。でも、プロ野球を見ているとみんな体が大きいんです。だから、小さい選手に目がいきがちで、大好きなヤクルトスワローズでいうと若松(勉)さんに夢中でしたね。若松さんは、公表では168センチらしんですけど、実際は165センチくらいだったんじゃないかなぁ。 小兵にもかかわらず、ホームランもたくさん打つ名選手でした。小さいのにすごいって感覚は、やっぱり当時からあったのかもしれないですね。小さくてもすごい……そういう意味では、本の中でも触れている「円丸師匠」ですよ。このすごさを知っていただきたい!

――椅子のキャスターなどのことですよね?

飯尾和樹 そうです! 世の中って円や丸があるおかげで、文字通り回っている。その最たる例が、キャスターですよ。ものすごく小さいけど、あの丸のおかげでいろんなものがスムーズに動く。地球上に丸いものや円がなかったら、どうなっちゃうんだろうって。空港でね、 小っちゃいおばちゃんが、自分の体くらい大きなトランクを2つ持って、ニコニコしながら移動してたんですよ。こんなことができるのは、キャスターのおかげですからね。キャスターがあるから、おばちゃんは旅行にフル装備で行ける。

――たしかにそう指摘されると、もっとキャスターに感謝しないといけません。でも、考えすぎだと思うような気も(笑)。

飯尾和樹 暇なんだろうなぁ。喫茶店に行っても、テーブルの角に傷なんかがあると、お客さんがここに傘を置いていたのかなとか考えちゃう。水滴の跡でできただろうコップ跡みたいなものを発見すると、「へぇ~このお店はここにグラスを置く人が多いんだ」とか。鑑識の素質があるのかもしれない(笑)。あとですね、みんなが向いている方向じゃない、違う方向を向いていたところがある。僕らの学生時代って松田聖子さんがすごく流行ってたんですけど、僕は家族の影響で『男はつらいよ』が大好きだったから、早くして女優さんに目が向くようになっちゃった。みんなが松田聖子だって言っているとき、僕は桃井かおりさんに夢中。「若いなぁ。桃井かおりさんを知らないんだろうなぁ」とか言いながら遠巻きに同級生たちを見てました。

――早熟すぎます(笑)。

飯尾和樹 小さい頃からすんなりいく人生ではなかったのもあるかもしれないですね。 お笑いの世界を目指したってことは、自分もMCみたいなことができるんじゃないかなって思っていたわけですよ。ところが、センターは無理だなっていうことに気が付いていく。同期に、キャイ~ンの天野くんがいたんですけど、早いうちから彼は仕切りもうまかった。彼みたいな人間がMCのポジションにいくんだろうな、自分は違うんだなーって。それで「ぺっこり45度」とか「ぱっくりピスタ~チオ」ですから。お恥ずかしながら、僕も若い頃は「何歳になったらこの番組に出る」みたいな予定を勝手に立てていたんですよ。でも、初舞台のとき緊張してお客さんを見れないことが発覚しました。舞台後、ちょっと緊張とかが苦手なのかなって反省して、「2年遅れるな。30歳で冠番組」と書き直した。でも、たったの2年(笑)。謙虚じゃないですよねぇ。

――ふざけながらも真剣に向き合う。飯尾さんの視点や姿勢を見習いたいです。

飯尾和樹 滅相もない! なんだか真剣に考えちゃうだけなんですよ。面白い芸人さんを見つけると、どんな景色を見ていたらこういうボケを思いつくんだろうとか。そいつの部屋に行きたくなります(笑)。

――それって妄想が持つ面白さといった側面もあると思いますが、妄想とは違うんですか?

飯尾和樹 いたって真剣といいますか。もし、これがなかったらどうなっているんだろう……例えば、たまねぎ。料理の世界にたまねぎがなかったら、どうなるんだろうって本当に考えちゃうんですよ。

――飯尾さんは、たまねぎを「旨み甘み師匠」と敬愛を込めて呼んでいます。

飯尾和樹 ですねぇ。たまねぎがなくなったら大変なことになる。 もし、たまねぎが北海道でまったく獲れなくなってトリュフみたいに一個10万円するようになったら、カレーライスは一杯5~6万円になるんだから。「いや~我妻さん(筆者)! 俺、お金出すからさ、カレー食べてよ!」。その恩恵にあずかって、ようやく一口もらえるような世界。たまねぎがなくなったら、洋食界は全滅。

――ははははは!

飯尾和樹 パプリカがなかったらピーマンみたいな代替できる野菜もありますけど、「旨み甘み師匠」に関しては代用が効きません。大きいたまねぎ、小さいたまねぎ、いろいろありますけど、味は全部たまねぎですからね。そんなことばっかり考えて、ホント申し訳ないです(笑)。

――インタビューの続きは発売中の「BUBKA11月号」で!

取材・文=我妻弘崇

飯尾和樹=いいお・かずき|1968年生まれ、東京都出身。90年、浅井企画所属。00年、やすと「ずん」を結成し、ボケを担当。現在、『さんまのお笑い向上委員会』『飯尾和樹のずん喫茶』など多数のバラエティ番組に出演するほか、情報番組『ZIP!』の水曜パーソナリティー、ドラマ出演など多岐にわたって活躍中。著書に『どのみちぺっこり』(PARCO出版)などがある。

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