未来から来た投げる預言者・桑田真澄~バック・トゥ・ザ・マストラダムス
予言弐「ジャストミート!!」
1年目から新人最多タイの31本塁打を放った清原とは対照的に、ルーキーイヤーは2勝に終わった桑田だったが、86年オフに雑誌『Number』で将来の目標を聞かれ、意外な理想像をあげている。
「笑われるかもしれませんが、では言います。5年目までに2ケタの勝利をあげ、打率が3割、ホームランをシーズンに10本打てる投手です」
なんと早すぎる二刀流宣言である。大谷翔平がまだ生まれてもいない昭和に次代のベーブ・ルースを夢見た野球の申し子(実際に2000年には打率.316を記録)。「でも、時間を下さい。少しずつ必ずよくなりますからね」という控え目な言葉とは裏腹に、2年目にプロ初アーチを放った直後は、「手応え十分でした。打席で無意識のうちに“ジャストミート”って口走っていたんですよ」なんて1秒も笑えないマスミギャグを披露。のちの日テレアナウンサー福澤朗の決めゼリフ「ジャストミート!!」の元ネタはマスミギャグかもしれない。逆襲の背番号18は、この87年に15勝をあげ沢村賞を受賞。19歳の快進撃を支えたのは気分転換で行く遠征先の映画館である。
「地方の映画館って、いいんですよ。あまりお客さんが入ってこないでしょ。静かで、空いたところで見るのが一番」
いわば桑田は“おひとりさま”の先駆者だ。ねるとんが流行りネアカがもてはやされるバブル突入前夜にあえて静かにひとり映画。マスコミやファンから追いかけられない空間は貴重だった。スクリーンの中のスタローンやシュワルツェネッガーだけじゃなく、同僚のビル・ガリクソンとも交流。助っ人選手と積極的に会話する“ベンチ前留学”で英会話を磨き、メジャー流の調整を学んだ。
「ボクは外人的な(群れない)考え方が分かるんですよ。あ、これは外人的な考え方だけど、すごくいいなと思っても、日本人にはウケないというか、日本人には嫌われるんですよね。だけど、ボクはいいなと思ったら、それを続けていくからね。だから、付き合いが悪いとか、クライとか、人のことは放っておけと思ってる」
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中溝康隆=なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!
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