『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』著者・高橋ユキ氏「真意が伝わらないままなのは気の毒」
ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第45回は、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』の著者である高橋ユキ氏が登場。逃走犯の手記や現場取材をもとに世間を騒がせた彼ら――サイクリストに扮した全国一周逃走犯らのリアルを追い、浮かび上がらせる。なぜ彼らは逃げたのか!?
なぜ逃げるのか?
――目からウロコだったのが、「収容前の逃走は、刑法の逃走罪に適用されない」という点。逃走罪は、勾留されている者や禁錮・懲役刑の受刑者、あるいは身柄拘束のある令状の執行を受けている者などが逃げる――という具合に、条件があるとは知りませんでした。
高橋ユキ その人がどういう状態にあるかによって変わるんですよね。保釈保証金を払って、保釈中の人が逃走するケースは、逃走罪に問われません。なので、カルロス・ゴーンは保釈中に逃げているので、逃走罪には該当しない。つい最近も、勾留されていた被告人が病気だということで勾留執行停止になり、その間に逃げてしまった。結局、自分から出頭したんですけど、彼も逃走罪には問われない。
――まさに、「逃げるが勝ち」。そうならないために、逃げたら保釈金を没収する(逃げなければ保釈金は戻ってくる)といった抑止力が働くシステムがある、と。でも、問われないんだったらワンチャン狙いたくなる心理もわかるというか。
高橋ユキ ゴーンは、保釈保証金15億円を没収されるとわかっていても、ワンチャンを見出したんでしょうね(笑)。でも、基本的に被告人という立場は、まだ有罪か無罪か決まってない状況下にある。そのため、その時点で厳しく身柄を制限すること自体、いかがなものかという論調もあるんですよ。
――なるほど。高橋さんの前作、山口連続殺人放火事件を追った『つけびの村』も白眉でしたが、“逃走犯”を追った今作もとても面白かったです。なぜ、逃げる犯人にフォーカスを当てようと?
高橋ユキ もともと『週刊ポスト』で、本書にも登場する松山刑務所逃走犯の手記を掲載するなど取材した記事を掲載していたんですね。その後、調査報道とノンフィクションの読み放題サービス「SlowNews」がローンチするということで、何か連載ができませんかというオファーをいただいて。本当は、つけびのときのように新たに自分で取材を重ねていくということがしたかったのですが、当時はコロナ禍の真っただ中。東京から地方に行くことそのものが事件になっちゃう(笑)。そこで、すでに自分が取材しているものから膨らませて……、松山刑務所逃走犯と富田林署逃走犯の取材をしていたので、脱走犯に焦点を当てて企画化したらどうだろうかと。
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