清原和博が野球人としてもっとも輝いていた時代を読む2~プロ野球死亡遊戯があえて“令和の夏”に書きたかった話(著/中溝康隆)
この流れは当時社会的事件として扱われたので、野球ファン以外にも知ってる人は多いと思う。雑誌『現代』85年12月号のグラビアを飾るのは、昔は白雪姫いまビニ本調の天地真理(34)にっかつポルノ「魔性の香り」で大胆ファックシーン!……じゃなくて、のちに昭和最後の総理大臣となる竹下登、幹事長の椅子を狙う安倍晋太郎外務大臣(安倍晋三の父親)、そして「絶頂期の王貞治の風格がある」と紹介される清原和博だ。代名詞は史上最高の契約金と予想される「一億円の少年」。ちなみにこの年の12月に「仮面舞踏会」でレコードデビューしたのが、少年隊である。
さて、それぞれのシャイな言い訳も聞こう。2013年発売の『西武と巨人のドラフト10年戦争』(宝島社)の中では、当時の西武球団代表を務めた坂井保之氏の証言が掲載されている。獅子の寝業師・根本陸夫管理部長がドラフト直前に「西武は1位桑田でいく」と記者にブラフを流して、1位は清原、2位もしくはドラフト外で桑田というKKコンビ両獲りを狙う巨人サイドを揺さぶる。あんたらドラフト外なんかで獲れると思うなよ的な西武の牽制は効いた。結果、巨人は間違いなく複数球団の抽選になる清原ではなく、早大進学説のため競合せず、甲子園通算20勝で限りなく即戦力に近い桑田を確実に獲りにいくわけだ。まあどちらにせよ、大人たちの駆け引きの中で裏切られ傷ついた純粋なキヨマーという印象は変わらない。
だが、あのドラフトから40年近くが経過した令和の夏の終わり、1985年当時の週刊誌やスポーツ新聞を片っ端から確認して驚いた。語り継がれているストーリーと事実があまりにも違っていたからである。もはや斉藤由貴とビッグバン・ベイダーの体重くらい違う。1億円のスーパーヒーロー清原和博が告白『ボク、巨人が大好きや』(『週刊現代』85年9月21日号)では、「ボク、実は巨人ファンなんです。なぜかは、ようわからんけど、とにかく大好きなんやね」と憧れを隠さない一方で、インタビュアーに巨人に入りたいか聞かれると「たしかにファンだけど、仕事とファンであることは別問題じゃないスか、やっぱり」なんてクレバーに返す。そして、ライバルであり盟友を「(厳しい練習にも)桑田だけは絶対にへこたれん。3年間で一度もないんです。だから、桑田をものすごく尊敬している。あいつは日本一のピッチャーやね」と絶賛、さらに幼少期にトンボでも蚊でも目の前を飛んでいる虫をパッと素手でつかめる驚異的な動体視力エピソードをご機嫌に披露している。
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