なんてったってキヨハラ最終回「青春と夢の終わり」
ルーズソックスの女子高生たちは、狂ったように小室ファミリーを歌い続けた。
1996(平成8)年秋、高校の文化祭の打ち上げは異様な盛り上がりだった。冬になれば受験や就職の準備でそれぞれバラバラになるだろう。祭りの終わりは、グループの垣根を越え珍しくクラスほぼ全員が揃い、カラオケボックスの大部屋へ。女子が歌う曲は安室奈美恵、華原朋美、globe、TRFとひたすら小室メドレーが続く。年間のCD売上枚数が4組合わせて2000万枚以上、安室のニューアルバムの初回出荷数は日本記録を更新する350万枚のTKバブル絶頂期。オヤジ系週刊誌では「アムラーって何だ?」「宝塚のアムラーたち」「アムラー仰天!そっくりさんの安室奈美AVデビュー」なんつって無茶苦茶な角度でぶっこみ、村上龍は女子高生の援助交際をテーマに『ラブ&ポップ トパーズⅡ』を書いた。蒸し暑い室内で空気と化した俺らも意固地になって『新世紀エヴァンゲリオン』の「残酷な天使のテーゼ」をシャウトして、モテたくて、でもモテなくて、惰性で「青いイナズマ」を口ずさみながら、青い季節が終わろうとしていた。
さよなら、キヨマー。この男もついに西武との決別を決心する。96年10月27日、背番号3は小野球団代表にFA申請書を提出。「FA宣言しました。僕も来年、30歳になる。せっかく選手会が頑張って勝ち取った制度。自分なりにどう生かすか考えた。僕がプロ入りした時、こんな状況になるとは夢にも思ってなかった」と会見で胸の内を語った。この翌日、氏家斉一郎日本テレビ社長が「親の都合で子どもの結婚を認めないというのはまずい。嫁に来たがっている者を親が反対はできないだろう」なんて読売サイドからいきなりのジャブ。同じ一塁を守るキヨマーの打撃の師・落合博満については、「放出もあるかもしれない」と日本シリーズでイチロー擁するオリックスに完敗したことでチーム再編を示唆した。
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