2022-07-03 20:10

高橋源一郎『失われたTOKIOを求めて』魔改造されゆく渋谷

「BUBKA8月号」表紙を飾る櫻坂46二期生14人
「BUBKA8月号」表紙を飾る櫻坂46二期生14人

――三島由紀夫が、あと20年遅く生まれていたら、割腹自殺は渋谷でやっていたかもしれないですね。

高橋源一郎 あるいは、銀座とかね。そういう意味では、新宿から渋谷に文化的覇権が移った。だけど、その前の文化的中心は文京区の本郷、あるいは丸の内や上野でした。明治の文豪たちは、そういったエリアに居を構えていたケースも多かったんです。山手線沿いに、だんだんと反時計回りに重心が移って、文化的中心も変わっていった。だから、次は品川とかに覇権が……高輪ゲートウェイ駅が誕生したのも必然なのかもしれません(笑)。

――成田と羽田が結ばれ、リニアモーターカーなどができれば、品川を中心とした城南エリアが大ブレイクする可能性は大ですよ(笑)。

高橋源一郎 「汽笛一声新橋を はや我汽車は離れたり~」というくらいだから、日本の近代化は新橋や丸の内・東京周辺から始まった――そう考えると、いつ一周回りきって、丸の内へ戻ってくるか楽しみですよね(笑)。そうなったとき、日本の近代が完結するのかもしれません。昨年、東京オリンピックが行われたけど、結局、僕にはまったく盛り上がっているようには見えなかった。渋谷・原宿・代々木文化の終焉にも感じられたし、東京の雰囲気が、それらのエリアを象徴するような景気の良いものを受け入れていないんだなって。だから、渋谷は大改造というか魔改造しているんでしょうねぇ。

――まさに魔改造ですね。黒魔術的なまやかしというか。

高橋源一郎 渋谷駅の工事って、ずっと終わらないものだと思っていたんですけど、ある日突然終わってびっくりした。僕はNHKに行くために湘南新宿ラインで鎌倉から渋谷に向かうんですけど、工事が終わる前、湘南新宿ラインのホームから、駅の改札口までものすごく遠かった。ところが! 工事が終わってふたを開けたら、改札口が近くなっちゃった! ホームを改造しただけなのに、手品のごとく。なんか狐につままれた感じですよ。

――(笑)。もっとも新陳代謝の激しい東京だからこそ、見ておかないと、知っておかないといけないものがたくさんありそうです。

高橋源一郎 社会の変化が顕著なんですよね。地方都市であれば、たとえば衰亡という観点から街の変化が見えてくるところがありますが、東京は社会の意図みたいなものが見えるんですね。山手線反時計回りという意図で、もしかしたら近代150年は育まれてきたのかもしれない。東京の緑が、天皇家やお偉いさんたちで占められているのもあやしいし(笑)。一周を回りきったときが楽しみと言ったけど、それって同じ地点に戻ってくるということなんですね。今、歴史小説を書いているんですが、2022年は、明治元年1868年から数えて154年になります。その半分が77年なわけですけれど、2022年の77年前は終戦の年である1945年。そして、そこから77年さかのぼると明治元年になるんですね。終戦の年を折り返し地点と考えると、2022年って明治維新からちょうど一周したことになる。

――なるほど!

高橋源一郎 そういうタイミングで、オリンピックがあって、コロナ禍になった。いろんなことを繰り返しやってきて、それこそ高輪ゲートウェイ駅もそうですが、近代が終点にたどり着いた感じがあります。そういう最中に、僕たちはいる。自分の中で、「東京ってこういう街だったんだ」って味わうタイミングなんじゃないかなと思うんです。そんなことを考えながら、僕は東京を歩いていました。

――インタビューの続きは発売中の「BUBKA8月号」で!

取材・文=我妻弘崇

高橋源一郎=たかはし・げんいちろう|1951年、広島県生まれ。81年、『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作を受賞しデビュー。88年、『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞、02年、『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞を受賞。著書に『いつかソウル・トレインに乗る日まで』『一億三千万人のための小説教室』『ニッポンの小説―百年の孤独』他多数ある。10年5月には、『「悪」と戦う』が刊行された。

「BUBKA8月号」コラムパック
「BUBKA8月号」コラムパック

Amazon Kindle

楽天Kobo

Apple Books(Mac または iOS デバイスのみ)

Google Play

紀伊國屋Kinoppy

BOOK☆WALKER

honto

セブンネットショッピング

DMM

ebookjapan

ブックパス

Reader Store

COCORO BOOKS

コミックシーモア

ブックライブ

dブック

ヨドバシ.com

その他、電子書籍サイトにて配信!

Twitterでシェア

関連記事

BUBKA RANKING11:30更新

  1. 宮戸優光「前田さんとの関係が、第三者の焚きつけのようなかたちで壊されてしまったのは、悲しいことですよ」【UWF】
  2. 【追悼】酸欠少女さユりが私たちに残したもの
  3. 【BUBKA2月号】R-指定「Rの異常な愛情」―或る男の日本語ラップについての妄想―DABOの革命前夜(前編) 時代に選ばれた男“ Mr.FUDATZKEE”
  4. プロ野球界において、「落合博満」こそ、最高のエンタメだ。〈ノーカット版〉
  5. AKB48本田仁美がもたらす影響…圧倒的練習量から得たもの
  6. R-指定(Creepy Nuts)が語るスチャダラパーの時代
  7. 【昇天】ドラゴンズ万歳! 金丸獲得だけじゃない「満点超え」ドラフトの理由とは? 青味噌のみそみそダイアリー #4
  8. 乃木坂46柴田柚菜「どんな痛みか想像つかないのでやってみようって(笑)。自分で言うのもなんですけど、度胸はあると思います」
  9. 乃木坂46秋元真夏「不安よりも『いまはまだ卒業できない』という状況になったことのほうが私にはうれしくて アイドルでなくなることが一番困ることなんです」
  10. SKE48須田亜香里×山本昌「笑顔にスランプはない!」<BUBKAアーカイブ特別編>
  1. 響き渡る“乃木坂46”&“葉月”コール!向井葉月から奥田いろはへ、涙の抱擁と共に受け継がれる「乃木坂らしさ」
  2. 「なんてかわいいの!」櫻坂46中嶋優月と谷口愛季、キュートなダウン姿を披露!山﨑天はなかやまきんに君と夢の共演
  3. 卒業控える日向坂46東村芽依、“門出”にふさわしい晴れやかな表情の表紙カット解禁
  4. 乃木坂46「36thSGアンダーライブ」完遂!全国5都市を巡るZeppツアーに、座長の奥田いろは「何も後悔はありません」
  5. 「なにわ男子」大西流星、シャンプーのCM初出演!かわいらしい寝顔も披露
  6. 乃木坂46 岩本蓮加写真集『いたずらな風』に熱狂する菅原咲月だが、誘われたご飯は華麗にスルー!?
  7. 日向坂46 の逆襲が始まる東京ドーム公演に注目せよ!明暗分かれた『紅白』出場者から考える坂道3グループの現在地
  8. 川口春奈『JJ』表紙風広告に登場…サントリー×光文社の異色のコラボが実現
  9. 櫻坂46全国ツアー最終東京ドーム公演、2日間で11万人動員!海外からもBuddiesが駆けつける
  10. 「死ぬ気で守る」2作連続で“センターに最も近い”乃木坂46 池田瑛紗の叫び続けた「魂の言葉」