掟ポルシェの「美食」に至る病、『食尽族』刊行記念抱腹舌倒インタビュー
掟ポルシェ こないだコントグループGAGの福井俊太郎さんがテレビで食へのこだわりについて語ってたんですけど、「人と一緒に食べに行くと味がわからなくなるし、食べてるあいだに話すのが目的だったら俺は行きたくない」って言ってて、よくわかるなと思って。たとえば俺は自分で全部、家の飯は作ってて、家の飯を作り終えてさあ食べるぞってときに嫁が今日あったこととか話しかけてくるでしょ。
吉田豪 まあ、それが普通の家庭だよね。
掟ポルシェ ここで返事しないと異常だってわかってるんだけど、こっちは食べたいから作ってるわけ! 自分がその日に食べたいものを全力で作って、よし温かいうちに食べるぞ! だから、「おい待て、話しかけるな!」なの。
吉田豪 そういうのはあとにしろ、と。
掟ポルシェ だから俺、話しかけられてもだいたい無言なの。嫁には申し訳ないんだけど、そのへんの異常さは家庭内にはほぼ伝わってるから、あきらめてもらってるんだけど。語り合うのは俺が作ったものをひと通り食べて、少し落ち着いてからにしてくれ、と。いまこの料理に全力で向き合いたいんだよ!
コンバットREC めんどくせえ(笑)。
吉田豪 セルフ味集中システムなんだね。
サミュL もともと、お父さんが船に乗るから1年のうちひと月しか家にいなかったんですよね。
掟ポルシェ そう、ウチの親父は船の機械をいじる人で、1年のうち11カ月は家にいないのがふつうなんですよ。で、1カ月だけ丸ごと休みを取って、帰ってきたときに異常にエンゲル係数が高い食生活してたの。海産物とかたらことか筋子みたいなものは常備されてて、ウナギの蒲焼きを週2ペースで買ってきてしょっちゅうウナ丼食わされた記憶がある。
吉田豪 とりあえず、いいものは食べてたの?
掟ポルシェ そう。親父は重度のアル中とコミュニケーション障害で7回会社クビになってるの。でも失業保険とかもすごい高いの掛けてるから、失業してるのに月25万ぐらいは入ってくる状態で。それで、酒は家でしか飲まない。酒癖が暗いっていうか、テーブルを見つめてウ~ッってうなってて家庭内はすごい嫌な感じにはなるんだけど、外に飲みにも行かないし、女を作るとかギャンブルするとかそういうことは一切ないわけ。で、家の飯で贅沢しようとするから、子供の頃から地味に食うものに困った記憶はない。