佐々木敦が語る、日本アイドルポップスの栄光と未来…世界基準の日本アイドルはなぜ生まれないのか
――ジェンダー観も急速に変わっている昨今ですしね。それから、K-POPと比較されるのは坂道や48で、でも日本にはもっといろいろいるじゃないか、という話もよく出てきますよね。ただ、そういうアイドルも基本的にはいわゆる接触、チェキとかで成り立たっているわけで、あまりそこは触れられないとは感じていて。
佐々木敦 そこはカッコに括るという。
――音楽で勝負しているとされている人たちも、それがないとやっていけないわけで。
佐々木敦 あたかも「楽曲だけ」で成立してる世界がどこかにあるかのようにしてるけど、実はそんなものはどこにもなくて、少なくともビジネスモデルとしては「楽曲派」も「接触」ありきだということですね。
――そのあたりはシンプルではないし、少なくともTwitterであれこれ言うのは向かないから、そのゲームには乗らないぞと思ってるんです。
佐々木敦 その議論が繰り返しやってきて、繰り返すスピードもどんどん早まってる感じじゃないですか。だから、K-POPと日本のアイドルを単純に比較すること自体をやめないと。比べたら違いは明確だし、勝ち負けも今や明確だから。そこで「まあお互いに頑張っていきましょう。日本には日本のいいところがあるし」という何度目かの結論に落ち着くか、「もうそういうわけにもいかないので日本もグローバル化しないと」ってことになるか、どっちかしかない感じになってしまう。
――特にTwitterだとそうなりがちですよね。
佐々木敦 それってどっちも未来が見えないですよね。日本のアイドルものが日本語を介さない人たちにも受けるためには、昨今の大貫妙子ブレイクのように、YouTubeとかサブスク経由で世界中の人が、日本語の曲、特に昔の曲にハマるという現象に引っ掛けた方がポジティブな未来があるんじゃないかって思います。松田聖子とかが発見されてさ、80年代の日本にはすごいアイドルがいたんだっていう事実がグローバルな話題になって、聖子ちゃん復活!みたいな。でも、Perfumeも海外に出たし、きゃりーぱみゅぱみゅだってコーチェラに出てるわけじゃん。だから需要はあるっちゃあるのかもしれないけど、わからないですよね。
――ラ・ムーとかが今になって海外でめちゃくちゃ評価されたりしてますよね。でも、あの時代ってしっかりお金をかけて音楽を作ってたから、リッチなプロダクションが説得力を持っているというのもあると思うんですよ。これから先、2010年代に量産されてきた日本のアイドルの音楽が再評価されるのかなと思うと、なかなか想像しにくくて。
佐々木敦 うーん、K-POPと勝負できるかできないか問題の話はこれで終わろう(笑)。
――そうしましょう。負け一択です!
佐々木敦 負けても別に好きな日本のアイドルは聴くしね。僕は最近KPOPにハマってですね、今は第4世代って言われるんだけど、そこで結局勝ったのはIVEなんだよね。数字的にも圧倒的だし、どれだけBTSの事務所が頑張ってもルセラフィム(LE SSERAFIM)はIVEに今一歩及ばなかった。でも、ルセラフィムには二人、IVEにも二人、元IZ*ONEがいる。IZ*ONEはPRODUCE48から生まれたグループだから、つまり48Gで、だから宮脇咲良と本田仁美と矢吹奈子が入ってた。ということは現在のK-POPシーンのルーツは秋元康さんなんだよ。だけどIZ*ONEの昔の曲を聴くと思うのは、なんでこれほど違う結果になったのかっていう。IZ*ONEは楽曲的にも日本の音楽とはまったく違う作りになってて、でも日本向けの日本語の曲だけ“日本のアイドルソング”になってるわけ。